クールで一途な白雪さん

SAKADO

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九十四話 友達として

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 告美つぐみに大嫌いだと、そう言われた翌朝の学校。繭奈まゆなと共に登校してきた俺は、教室へと足を踏み入れる。
 隣の席である告美つぐみと顔を合わせることになるわけだが、彼女は大丈夫なのだろうか?余計に傷付きやしないだろうかと心配になる。

 彼女は既に自分の席に座っており、いつぞやの席替えで前に並んだ麗凪れなと談笑していた。しかしその表情には、僅ながら翳りがあるようにも感じる。
 俺も自分の席に向かい、話をしている二人に挨拶をした。

「おはよう麗凪れな告美つぐみ

「あっ、おはよ」

「おっおはよう……」

 俺の挨拶にいつも通りに返した麗凪れなだったが、告美つぐみの様子はどうも緊張気味。やはり俺とは、関わりたくないのだろう。
 隣の席だから仕方なく、といった感じか。

 まぁ、昨日のことがあったわけだし仕方ないだろう。ハッキリしなかった俺が悪いのだ。


 しかしその割には、告美つぐみからチラチラと視線を感じる。というか、なんなら見られている。
 なにか言いたいことがあるのか、それとも警戒しているのかは分からない。こちらから声をかけた方が──

「たっ龍彦たつひこくん?」

 そう考えたところで、告美つぐみから話しかけられた。彼女はこちらの表情を窺うように、おそるおそる言葉を続けた。

「あの、あのね?昨日のはその……本気じゃ、ないから……」

「え?」

「あっ、えと……」

 段々と小さくなっていく告美つぐみの声が聞き取れず、思わず聞き返してしまう。 "昨日のは" までは聞き取れたのだが、その先が分からなかったのだ。
 しかし、彼女はどうにもおどおどとしていて話にならなそうである。こりゃ困ったぞ。

「その先の話は、また後でも良いかな?ここだほら……」

「あっ、そうだね……じゃああとで」

 さすがに、他のクラスメイトたちがいる前でする話ではないだろう。麗凪れなは事情を知っているだろうし告美つぐみも話していそうだが、そうでなければ聞かれたくないはずだ。

 なので、話すのは静かな場所がいい。学校が終わってから改めて。

 その旨を繭奈まゆなたちにも話し、再びあの公園へとやってきた。いつもよりぎこちない俺たちに周囲の連中はなにやら気にしていたが、かといって声をかけたり尋ねる勇気もなかったみたいだ。
 だから、俺と告美つぐみとの間になにがあったのかを知るのは、繭奈まゆな冬夏とうか麗凪れなだけである。

 彼女たちには近くで待機してもらい、俺は公園の入り口辺りで待機していた告美つぐみに声をかけた。

「おまたせ、告美つぐみ

「ううん、私も今来たとこ」

 優しく微笑んで返した告美つぐみと共に、公園の敷地に足を踏み入れる。それなりの大きさだから、散歩がてら話すのにちょうど良い。

「昨日はごめんね。ひどいこと言っちゃって」

「いや、考えなしにしてた俺の方が良くなかった」

 心なしか距離の空いた俺たちは、ぎこちなく話を始める。俺が繭奈まゆなと付き合っていることを知ってから、告美つぐみはずっとこんな様子だ。
 まぁ、彼女の心情を考えたら当然のことだが。

「いやいや、あれだけ仲良くしてた龍彦たつひこくんたちに気付かなかった私も大概っていうか、バカだったよ。それなのに大嫌いなんて嘘言って……そう、私やっぱり龍彦たつひこくんが好き」

 言いたいことはたくさんあっただろう。しかし告美つぐみは、その先を話せるだけの余裕がなさそうで、諦めきれない自分の気持ちを吐露した。
 大嫌いなのが嘘だったことに安堵するも、それでも好きと言われるとなんとも言えない気持ちになる。

「でも分かってるんだ。龍彦たつひこくんには白雪しらゆきさんと笹山ささやまさんがいるから、私が付き合うなんて夢のまた夢だって」

 滔々と語られる告美つぐみの胸中に、俺は静かに頷く。彼女はそれを見て、言葉を紡いでいく。

「だから、ちゃんと受け入れるように頑張るよ。龍彦たつひこくんとは友達でいられるようにね。しばらくはまだ、引きずるかもしれないけど」

 それは寂しさか自嘲か諦観か、眉尻を下げた微笑みを浮かべる告美つぐみが、そう締めくくった。

告美つぐみ……ごめん、ありがとう」

「ううん!こっちこそごめんね、それじゃ!」

 恥ずかしいのだろうか、告美つぐみは顔を赤くして、そのまま小走りで立ち去っていく。こちらとしても少し気まずいので、その方がありがたく思える。
 すると彼女は足を止めて、こちらを振り向いて言った。

「また明日ね、龍彦たつひこくん!」

「またな、告美つぐみ

 大きく手を振りながら挨拶をした告美つぐみにそう返すと、彼女はニコッと笑って今度こそ走り去っていった。
 彼女とはこれからも良い友達でいられるかもしれないと、ホッと胸を撫で下ろす。

「あっ、おかえり」

「お疲れさまね、龍彦たつひこくん」

 近くで待機していた繭奈まゆなたちの元へ行くと、冬夏とうかがこちらに掌を向け、繭奈まゆながすかさず隣に来た。
 そんな二人と共に、なにも言わずに家に向かう。

 告美つぐみ麗凪れなも、友達として丁度良い距離感を保っていこう。いつかきっと二人にも良い相手ができて、諦めた想いが思い出になるはずだから。



 しかし、これからも告美つぐみ麗凪れなとは、末永く友人として関わっていくことになることを、今の俺はそこまで考えていなかった。
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