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しおりを挟む「…ティーシル様。」
本当は挨拶をしなければならないのはわかっています。
ですが、私の頭には何も浮かんでこなかったのです。
「様付けはもういい。…兄からも昔のように、と言われただろ。エミリ。」
あんなに私を愛称で呼ぼうとしなかった婚約者時代。
今はすんなりと出てくるのですね。
あなたも昔に戻りたいの?もう引き返せるわけないのに?
ただ、挨拶をしにきた訳ではないことは、ご様子を見て理解できました。
立ち話でも済まないだろうと思い、止めるシーマとスタニックに大丈夫だと言い聞かせ、応接室にティーシル様、改め、ティーシルを案内しました。
幼い頃に戻りたい訳ではなけど、今の私たちの関係を言うなら良く言って”幼馴染”が妥当。
だったら、男性にだって呼び捨てでもいいのでは、と思う。
だって、私の中では婚約破棄をしてくれてよかった、と思っているもの。
今は人の目もあるから無理だけど、いつか、時間がたてば普通にお話できると…。
お茶を入れるために渋々ながらシーマは退出しましたが、スタニックは私のすぐ後ろに控えております。
疲れたようにティーシルはドカリとソファに腰を下ろしました。
いつも綺麗に分けられていた前髪がバラバラと前の方に出てきてますよ。
会話も無いまま、どうしようかと思いをめぐらせていると、再び入室してきたシーマがお茶を入れてくれました。
「…2人きりで話したいのだが…。」
その言葉にスタニックを見ると
「なりません!本宅の旦那様より”来ないと思うが、万が一ここへ来た時は屋敷にいれるな”とキツク言われておりますので。ここまでが譲歩です。」
スタニックのすぐ横でシーマが大きく何度も頷いているのが見えます。
スタニック、嫌味がストレート過ぎましてよ。
「…だろうな…。」
力なくソファへ深く沈むティーシルは何かを考えているようです。
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