42 / 90
42
しおりを挟む僅かだが、ツーンとした刺激臭で意識を呼び戻される。
何、このにおい?
不快な臭いだ。
目を開ければ、目の前は真っ白で、布団を被って寝てしまっていたのかと思う。
頭がうまく働かない。
でも、口の辺りや手足の違和感で、更に意識が戻る。
手と足が縛られている?
口も塞がれている?
「うーうー・・・」
試しに声を出してみれば、呻く微かな音しか耳に届かなかった。
首が動く範囲で当たりを確かめてみれば、小さな場所に閉じ込められている感じがした。
布団かと思ったものは、肥料などを入れておく、麻の袋のようだ。
乾いた草のような臭いがする。
袋に入れられている?
ゴソゴソと体を動かしても、伸びる事もできず、小さく折りたたまれている感じがした。
手足の縛りが解けやしないかと、動かしてみるがビクともしない。
足や手が痺れているからだろう、感覚が無い。
長くこうしているのかもしれない。
当たりは明るいから、朝?
昼かもしれない。
・・・前にもこんな事が。
考えれば、頭の奥に痛みを感じた。
考えるのは、今は止めよう。
ふーと鼻で深く息を吐き出した。
この状況は、自分ではどうする事もできない。
怖い・・・。
これからどうなるのだろう?
あの時の、店主と男の会話からすると、私を捕まえる事は計画的だったと思う。
いったい、誰が、いつから計画していたのか・・・。
道が間違っている、と聞いた時、目を逸らしたのはそういう事だったのね。
店主もグルだったなんて・・・。
ただ、あの会話から、店主は私に危害を加えるつもりはなかったみたいに聞こえた。
カサッ、カサッ・・・。
一定のリズムで聞こえてくる草を踏む音。
人が近づいてくる!
その足音は、近くで止まり、人の気配をすぐ近くで感じた。
白い麻の生地が引っ張られ、頭の上のほうでゴソゴソと小さい動きを感じた。
急に新鮮な空気と眩しい光が袋の中に入ってきた。
袋の口が開かれたのだとわかる。
眩しくて目をパチパチと瞬いていると男の人の声が聞こえた。
「もう、大丈夫だよ。・・・エル。」
え?
聞き覚えのある、その声の主を確かめたくて、眩しさを我慢して目に力を入れ開く。
太陽の明かりを背にして、逆行で見えずらいが、ゆっくりと見上げた。
微笑む口元、スッキリとした鼻、優しい目元・・・。
それは、最後にあった日と何1つ変わらない・・・ジェラールだった。
6
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました
当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。
リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。
結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。
指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。
そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。
けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。
仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。
「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」
ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。
初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。
甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」
「はぁぁぁぁ!!??」
親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。
そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね……
って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!!
お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!!
え?結納金貰っちゃった?
それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。
※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる