公爵様のわかり辛い溺愛は、婚約を捨る前からのようです

奈井

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僅かだが、ツーンとした刺激臭で意識を呼び戻される。
何、このにおい?
不快な臭いだ。
目を開ければ、目の前は真っ白で、布団を被って寝てしまっていたのかと思う。
頭がうまく働かない。
でも、口の辺りや手足の違和感で、更に意識が戻る。
手と足が縛られている?
口も塞がれている?

「うーうー・・・」

試しに声を出してみれば、呻く微かな音しか耳に届かなかった。
首が動く範囲で当たりを確かめてみれば、小さな場所に閉じ込められている感じがした。
布団かと思ったものは、肥料などを入れておく、麻の袋のようだ。
乾いた草のような臭いがする。
袋に入れられている?
ゴソゴソと体を動かしても、伸びる事もできず、小さく折りたたまれている感じがした。
手足の縛りが解けやしないかと、動かしてみるがビクともしない。
足や手が痺れているからだろう、感覚が無い。
長くこうしているのかもしれない。
当たりは明るいから、朝?
昼かもしれない。

・・・前にもこんな事が。
考えれば、頭の奥に痛みを感じた。
考えるのは、今は止めよう。

ふーと鼻で深く息を吐き出した。
この状況は、自分ではどうする事もできない。
怖い・・・。
これからどうなるのだろう?

あの時の、店主と男の会話からすると、私を捕まえる事は計画的だったと思う。
いったい、誰が、いつから計画していたのか・・・。
道が間違っている、と聞いた時、目を逸らしたのはそういう事だったのね。
店主もグルだったなんて・・・。
ただ、あの会話から、店主は私に危害を加えるつもりはなかったみたいに聞こえた。

カサッ、カサッ・・・。

一定のリズムで聞こえてくる草を踏む音。
人が近づいてくる!

その足音は、近くで止まり、人の気配をすぐ近くで感じた。
白い麻の生地が引っ張られ、頭の上のほうでゴソゴソと小さい動きを感じた。
急に新鮮な空気と眩しい光が袋の中に入ってきた。
袋の口が開かれたのだとわかる。
眩しくて目をパチパチと瞬いていると男の人の声が聞こえた。

「もう、大丈夫だよ。・・・エル。」

え?
聞き覚えのある、その声の主を確かめたくて、眩しさを我慢して目に力を入れ開く。
太陽の明かりを背にして、逆行で見えずらいが、ゆっくりと見上げた。
微笑む口元、スッキリとした鼻、優しい目元・・・。


それは、最後にあった日と何1つ変わらない・・・ジェラールだった。




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