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「ノエリア?こんなところにいたのか。フェリクス夫人が君と話をしたいと・・・こちらのご夫人は?」
私の父より少し上の紳士が彼女に近づき、私に目を向ける。
「・・・ユーゴ公爵の奥方よ。フェリクス夫人はサロンの方かしら?」
少し面倒だという表情を浮かべながら、彼女は紳士に私を紹介する。
どなたかわからないが、ユーゴ公爵家の名を出された以上、失礼が無いように、少々省略的な礼ではあるが紳士に腰を折る。
それに返すように私に微笑えんだ紳士は、彼女の質問に答えるように彼女に向かって頷いた。
「・・・少しおしゃべりがすぎましたね。どうぞ、お許しくださいませ。・・・失礼します。」
ドレスをつまんでゆっくり礼をした彼女は、裾を捌いて足早にバルコニーを去って行く。
その後姿は、スーと伸びた背が綺麗で美しい。
それを目で追っていれば、紳士の声が私に掛けられた。
「何か失礼な事を言ったのかな?・・・妻がすまなかったね。」
妻・・・。
という事は、こちらの紳士は、デュヴァラ伯爵。
伯爵は優しい眼差しをして、苦笑していた。
「・・・いえ。少し話をしていただけです。申し送れました。エルヴィナ・ユーゴと申します。デュヴァラ伯爵様。」
「ああ、あなたが・・・。」
今気が付いたと言わんばかりに私を見て、紳士が予想していた彼女の失礼な中身を理解したようだった。
私を見ながら、その奥にいるアンドレア様を見ているような少し鋭い眼差しに変化する。
彼女とアンドレア様の関係を知っているのだろう・・・。
「デュヴァラ伯爵様。・・・気にならないとは言いません。私だって聞いてしまったら、いろいろ考えて気分が良くはないとは思うのですが・・・。それでも、知っているのなら、私に教えていただけないでしょうか?」
急にこんな申し出、失礼かなとは思ったが、人の集まる所に久しぶりに出向いた疲れもあって気持ちの調節が上手くいかない。
分別がある大人の伯爵が、軽々しく話してくれるとは思っていないが、それでも他の方からいろいろ脚色された噂を聞くより、事実を聞きたいと考えた。
だって・・・直接アンドレア様からは聞く勇気が無い。
いろいろ経験を重ねても、意気地が無い私を、自分でも呆れる。
結局、自分の根本なんて簡単に変われないんだ。
ただ、知らなかった事実を知って、他の人に言われて動くのではなく、自分なりに未来を選んでいけるようにこれからも進んで行きたいと思う。
私の言葉に少しだけ目を大きくした伯爵。
私が聞きたい内容の察しがついたのだろう。
「そうでしょうね。・・・あなたの心を揺らしてしまった妻を許してやっていただけませんか?公爵夫人。・・・こんなおじいちゃんでも一緒にいれば、社交界が意地悪く喜ぶ噂を提供しかねないので、この辺で失礼しますね。」
予想通りの答えに、いつの間にか入っていた肩の力が抜け落胆する。
紳士は柔らかい笑みを浮かべ小さく礼をして会場の方へと足を向けた。
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「・・・ユーゴ公爵の奥方よ。フェリクス夫人はサロンの方かしら?」
少し面倒だという表情を浮かべながら、彼女は紳士に私を紹介する。
どなたかわからないが、ユーゴ公爵家の名を出された以上、失礼が無いように、少々省略的な礼ではあるが紳士に腰を折る。
それに返すように私に微笑えんだ紳士は、彼女の質問に答えるように彼女に向かって頷いた。
「・・・少しおしゃべりがすぎましたね。どうぞ、お許しくださいませ。・・・失礼します。」
ドレスをつまんでゆっくり礼をした彼女は、裾を捌いて足早にバルコニーを去って行く。
その後姿は、スーと伸びた背が綺麗で美しい。
それを目で追っていれば、紳士の声が私に掛けられた。
「何か失礼な事を言ったのかな?・・・妻がすまなかったね。」
妻・・・。
という事は、こちらの紳士は、デュヴァラ伯爵。
伯爵は優しい眼差しをして、苦笑していた。
「・・・いえ。少し話をしていただけです。申し送れました。エルヴィナ・ユーゴと申します。デュヴァラ伯爵様。」
「ああ、あなたが・・・。」
今気が付いたと言わんばかりに私を見て、紳士が予想していた彼女の失礼な中身を理解したようだった。
私を見ながら、その奥にいるアンドレア様を見ているような少し鋭い眼差しに変化する。
彼女とアンドレア様の関係を知っているのだろう・・・。
「デュヴァラ伯爵様。・・・気にならないとは言いません。私だって聞いてしまったら、いろいろ考えて気分が良くはないとは思うのですが・・・。それでも、知っているのなら、私に教えていただけないでしょうか?」
急にこんな申し出、失礼かなとは思ったが、人の集まる所に久しぶりに出向いた疲れもあって気持ちの調節が上手くいかない。
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だって・・・直接アンドレア様からは聞く勇気が無い。
いろいろ経験を重ねても、意気地が無い私を、自分でも呆れる。
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ただ、知らなかった事実を知って、他の人に言われて動くのではなく、自分なりに未来を選んでいけるようにこれからも進んで行きたいと思う。
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「そうでしょうね。・・・あなたの心を揺らしてしまった妻を許してやっていただけませんか?公爵夫人。・・・こんなおじいちゃんでも一緒にいれば、社交界が意地悪く喜ぶ噂を提供しかねないので、この辺で失礼しますね。」
予想通りの答えに、いつの間にか入っていた肩の力が抜け落胆する。
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