誤召喚!~お仕事、ください。~

奈井

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「”そろばん”とか使うともっと早くできるんですけどね~。」

「…そろ、ばん?」

こんな風にときどき穂乃香の口からはわからない単語がポンとでてくる。

「あ!”そろばん”、無いですよね。この世界には?えーと、木でできているのですけど・・・一本の棒に5つ玉が射してあって、それが何本もあって・・・どうせなら作って見ませんか?それがあると誰でも計算しやすくなると思うんです。」

そんな穂乃香の一言で、その日の午後は、庭師のボンと一緒に、穂乃香の指導の下そろばんを作ることになった。

どんぐりのような実、オコという硬い木の実を5つ、真ん中に穴を開けて、細くて硬いできるだけまっすぐな枝に通す。

それを10本作り木の枠で囲った。

5つ目のオコと4つ目の間に仕切りようの板をはめ込んだ物はそれなりに形になった。

ボンが軽く鑢をかけたくれて、穂乃香の知っている”そろばん”より桁数は少ないのに大きめの物ができあがった。



「できた!ありがとう、ボンさん。」

大きな身体に白いひげを蓄えた、穂乃香の祖父くらいに見えるボンは、人の良さそうな笑みを浮かべて頷いた。

口数が少ないボンとは、穂乃香は時々一緒に庭の草むしりを手伝う仲になっていた。

「…こどものおもちゃのようだな。」

不意に後ろからかかる聞きなれた声にしゃがんだまま顔を向けた。

「デフくん!仕事、もういいのですか?」

「ああ…それより、例の”そろばん”はできたのか?」

「はい!見てみて。」

デフロットが穂乃香の隣りに片膝を付いて覗き込む。

「下のオコの実は1つが1個、上のオコの実は1つで5個分を表すんですよ。右側から1の位、隣りが10の位その隣りが…。」

穂乃香は指差しながら説明する。

ボンも興味深そうにひげをなでならが頷く。

「例えば、1足す2で、ほら3になったでしょ?更に3を足すときは、上の5を利用するんです。3が5になるためには2が足りないでしょ?だから、下から2個もらって…5を寄せて、下の残った1個と合わせて6に…ね。こんな感じで使うんです。これがあれば、指を折って数えなくてもいいし、使い慣れればもっと早く計算ができますよ。」

オコの実を口に合わせて穂乃香は下げたり押し上げたりする。

「これは便利そうだね、お譲ちゃん。」

ボンは穂乃香を”お譲ちゃん”と呼ぶ。

最初は心の中で22歳なんだけど、と反論していたが今はもう慣れた。

「確かに…でも、ホノカはコレを使わなくても計算は速いだろ?」

「う~ん、そうだけど…桁数が多くなるとこれを使いたくはなりますよ。」

そう言って作りたての”そろばん”を笑顔でカシャカシャと振る穂乃香。

やっぱり幼くて可愛いらしいと思い、その姿にデフロットは目を細めた。

そんなデフロットをボンは珍しいものを見たかのよう目を開きひげをなでることも止めた。



穂乃香とボンが作った”そろばん”はその後、改良を重ね数個作り、屋敷の者はそれを使い商人とやり取りを始めた。

屋敷の者は無駄が無くなった事、商人は金額の間違が無くなった事にお互い喜んだのだった。





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