誤召喚!~お仕事、ください。~

奈井

文字の大きさ
17 / 19

17

しおりを挟む
「ホノカ。こちらはジャメル・エヴラール侯爵。私の母方の親戚だ。」

第一印象はカッコイイおじさま。

黒髪より白髪が少し多い。

目は切れ長で…優しく微笑んでいるけど、デフくんに似てるかも。

デフくんってお母さん似なのね。

「…初めまして。」

この世界に来て最初に会ったデフくんを含めた3人と、この屋敷の人たち以外に会うのは初めて。

デフくんの側に行き、膝を折って恐る恐る挨拶をする。

「おお、これはこれは可愛らしいお嬢さんだ!」

リアクションの大きい人…。

大きく腕を広げて満面の笑顔はなんか嘘くさいよ。

それに目の奥が鋭い気がする。

「エヴラール侯爵には、形だけだがホノカを養女にしていただけるよう頼んである。本人に会って決めたいと申されたので、本日ここへ足を運んでいただいたのだ。少しばかり3人で話をしよう。」

デフくんが私に説明しながら隣りに座るように促してくれた。

前の人の目を気にしながらぎこちなく腰を下ろす。



ナラフがお茶を用意してくれた。

デフくんがお茶に口付けるので私も一口飲む。

エヴラール侯爵はそれをジーと観察する目で露骨に見てくる。

どんな女の子が養女になるのかと見てるのかな。

納得はしたが、居心地は悪い。

視線を迷わせながらデフくんに問いかける。

「養女になる必要ってありますか?」

何か困る事があるかな。

以前にデフくんが言ってた、記憶喪失の女の子を保護している、だけでは設定では不足なのかな。

だいたい、私のような異世界からきた得体のしれない子を家族にするなんて、形だけでも迷惑なんじゃない?

「夜会に出る話しはしただろ。今回の夜会は、貴族の…それも身分の高い貴族が呼ばれている。当然、そなたにも身分が必要だ。夜会だけでなく、今後、仕事で人に会う時にも身分は武器になる。理解できるな?」

じゃあ、夜会になんてでなけれがいいと思ったけど、仕事が見つからないのは困る…。

「…わかりますけど、元の世界では身分とか関係なかったから。…あっ!」

自分がこの世界の者でないことを言ってしまった!

デフくんにも言わないように言われていたのに…。

自分とデフくんの前に座る見目麗しい歳を重ねた侯爵は召喚の関係者かな?

わからない、どうしよう…。

不用意な発言を思わずしてしまって自分の口を押さえる。

「大丈夫だ。既にこちらの事情は話してある。案ずるな。」

それを聞いて強張っていた肩から力が抜けた。

ふーーー。

「よかった…。それを早く言ってよ。」

「すまぬ。」

「えーーーー!デフロットが謝った…!」

案ずるなと言われてホッとしたのもつかの間、エヴラール侯爵の大きな声にビクッとソファの上で飛び跳ねデフくんの腕にしがみつく。

「…ジャメル殿、そのように大きな声を出されてはホノカが驚くであろう。」

しがみつく私の手を宥める様にデフくんは手を重ねてくれた。

「だって、だって!あんなに人の事なんて気にしないで怒ってた人が!有無を言わせずビシバシと冷静に冷酷に指示を飛ばしていた人が…!『無慈悲悪魔』と言われてた人が!すぐにあやまるだなんて!」

え?なに?

「『無慈悲悪魔』…?」




穂乃香は聞いたことが無い言葉をただ復唱していた。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...