誤召喚!~お仕事、ください。~

奈井

文字の大きさ
18 / 19

18

しおりを挟む
その言葉を聞いて、デフくんを見れば眉間にすごいシワが寄っていた。

「あ~あ、そうだよね。聞いたこと無いよね。・・・デフロットがこの国の宰相だった事は知ってる?」

ジャメル・エヴラール侯爵は、さっきまでの鋭い眼差しが嘘みたいに親しげに私に尋ねてきた。

「宰相?…いいえ。」

聞きなれない単語だけど、宰相って皇帝とかの近くにいて補佐したりいろいろ決めたり、とにかく皇帝の次くらいに偉い人のことじゃない?

デフくん…ひえ~。

「え~!そこから?…デフロット、彼女にいろいろ話してあげないと可哀想だよ。なんて不憫なんだ、我が娘よ~。」

そう言ってまたしても大振りの天を仰ぎ嘆きのポーズをかましてくるジャメル殿。

だんだん怖くなくなってきたよ。

ちょっと可愛く思えてきた。

えーと、義父になるんだからデフくんと同じ呼び方じゃいけないよね?

「エヴラール侯爵、…『無慈悲悪魔』の事もお聞きしたいのですが、今後はどのようにお呼びすればいいのでしょうか?」

デフくんから離れて体勢を立て直して、少しでも良い印象を持って帰ってほしくて背筋を伸ばす。

「お!そうだ、そうだね~。息子は1人いるけど娘は初めてだから、お父様というのも新鮮だけど…パパで、どうかな?」

最後の方はモジモジと膝をすり合わせて上目遣いにこちらを見られちゃった。

ちょっと呆気にとられて口をポカーンと開けてしまったけど、怖く接してくれるより数倍いいんじゃない!

「…ジャメル殿。形だけでいいんです。形だけで。」

目を瞑りさっきシワが寄った眉間辺りを押さえてデフくんは冷たい声で言い放つ。

「でも!私にとってのこちらでの家族になってくださるんだから、折角だから”パパ”て呼んじゃおうかな~。パパ…。」

デフ君を宥めて、エヴラール侯爵に呼びかけてみれば…この人、涙ぐんでるよ!

「感動だ…。感動だ!今だかつて無い!すばらしい!あ~あ、愛するニコマイの事も早く”ママ”と呼んでやってほしい~。そうだ、もう家族なのだから、一緒に我が家へ帰ろう!」

"ママ"という言葉から連想するとニコマイという方は侯爵夫人の事ね。

でも、今日、知り合った人の家にもう行くなんて…!

「だから、先ほどから言ってるではないですか。形だけと…。今後もホノカはこちらで暮らしますので。…会いたいときはこちらにいらしてください。」

ぷーと膨れた顔の後すぐに満面の笑みをしてエヴラール侯爵はニヤニヤとしゃべり出す。

「一緒に帰れないのは辛いけど…また、お邪魔しても良いとは、デフロットも変わったのお~。いつもは、うざいから来るな、としか言わなかったではないか~。」

「だったら、来なくていいのですよ。こちらの用事は済んだのですから。」

「ああ~すぐそういう事をいうんだから。ふー、はい、はい、ちゃんと礼儀を持ってこちらにお邪魔しますから、娘と会わせてください!次回は妻も!」

「わかっております。ニコマイ・エヴラール侯爵夫人もお待ちしておりますので、よろしくお伝えください。」

それを聞くと安心したようにそそくさと帰り準備を始めるエヴラール侯爵。

玄関の所までお送りすると、手招きをして私を呼んだ。

内緒話をするように手を口に添えて小さな声で話しだす。

「…さっきはゴメンネ。急に養女にしてほしいだなんて、デフロットが女に騙されているかもしれないと思ってここへやってきたんだよね。あのデフロットを騙すのだから、相当すごい女かもって。しかも、異世界から来ているとなると、こちらの想像を超える悪女かも!なんてね。…でも、考えてみたら、あの無慈悲悪魔が女に騙されるわけ無いよね。会ってみたら、どっちかと言うとデフロットが世話を焼きたがってるみただし。ホノカもそれを受け入れているみたいだし、関係は良好そうだね。…近く、家に遊びに来てくれると嬉しい。妻も娘ができるって楽しみにしていたからね。ぜひ!」



そして、馬車から身体を乗り出し大きく手を振って帰っていきました。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...