誤召喚!~お仕事、ください。~

奈井

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デフロットの執務室には、仕事用の大きな机が有り、壁一面には本棚が作り付けられている。

面談用のソファセットとティーテーブルに二脚の椅子もあり、ただの執務室としては無駄に広い。

その無駄な広さは、デフロットの旧職種と言うか旧役職に関わりがある。

机に座るデフロットの左側にそっと立ち、穂乃香は声をかけた。

「できました。」

書類から目を離し穂乃香を見上げてデフロットは表情も変えずに口を開く。

「…やはり早いな。」

「でも、まだ文字が慣れなくて…。」

今はデフロットの他にソファにコーマスがたくさんの手紙や書類の仕分けをしている。

ティーテーブルは穂乃香に与えられて、領地運営の書類整理、主に計算の仕事を与えられていた。

デフロットの治める領地は広く、その関係書類を整理するだけでも骨の折れる仕事だった。

今までは、そのすべてをデフロットとコーマスで対応していたが、最近は穂乃香も加わるようになった。

そうなったのも…。

この国の文字は穂乃香の住んでいた世界とは違い、一から覚えることとなった穂乃香。

ただ、数字はとても簡単なデザインですぐに覚える事ができた。

そこで簡単な計算なら手伝いたいと穂乃香がデフロットに申し出たのだ。

この国の女性は文字は書くが計算などは覚えない。

計算や帳簿等をつけるのは男性の仕事、とそんな風に大まかな認識がある。

記憶を辿り、デフロットは歴代のソフィアたちもそれなりに計算ができたことを思い出す。

試しにいくつか計算してみろと渡された物は、まるで小学校のドリルをするくらい簡単なものだった。

試しに…試しに…を何回か繰り返して見れば、たった1年でも事務職経験のある穂乃香は、デフロットの仕事に効率を良くできる提案をしていたのだった。

というわけでは、今は計算関係は穂乃香、文章関係はコーマスと仕事の体勢が整いつつあった。



文字をもう少し滑らかに読み書きできれば、コレだけの計算の速さがあれば城の文官補佐の職にもつけそうだ。

少ないが文官補佐には女性もいる。

そうデフロットは思う反面、自分の仕事が楽になってきている現状に穂乃香の存在を好ましく思い始めていた。

前職で人と関わる事にうんざりしていたので、家の仕事に他の者を入れてわずらわしくなるより、大変でもコーマスと2人でやっていくことに異存はなかったデフロット。

もともと幼いと思っていた穂乃香に庇護欲的な責任を感じていたし、家に連れてくれば使用人たちとの友好な関係は見ててほのぼのとする毎日。

こんな穏やかの時を感じたのはいつぶりだろうと、最近は心がほぐれてゆくのを感じていた。







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