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しおりを挟む薄茶の発言に大きく溜め息を吐いた男が自分の着ていたマントを脱いで、穂乃香の肩にかけてくれた。
温かい。
「そなた、名はなんと申す?」
マントをくれた黒髪が穂乃香の目線まで腰を低くする。
「…穂乃香、坂本 穂乃香(さかもと ほのか)…です。あなたは?」
「…デフロット・ナートラーニだ。そなた…私と来るか?」
穂乃香は自分を見つめるデフロットの瞳を見つめ返す。
濃いブルーの瞳は静かで澄んでいた。
きっと怒ったら、睨まれたら怖いだろうな。
でも、まっすぐな眼差しが決していい加減な人では無い気がした。
頼る相手は目の前のこの人だけ。
あとの2人は面倒見る気もないようだ。
ここにいてもしょうがないらしいのはわかる。
「…一緒に行ってもいいの?…ですか?」
この子がこの状況を把握できていない事は明白、とデフロットは思っていた。
今でも、何の根拠も無い迷信に頼るやつらに腹が立って、このいい加減な儀式に立ち会ったのだが…見事に失敗だ。
失敗でも、召喚できなければ問題なかった。
指令を全うし失敗した証人になろうと考えていた。
召喚に成功したら、その相手の後継人となって見守ろうと思っていた。
20年前に今回同様に間違って召喚されたキョウ殿。
10年前は魔力が足りず失敗に終わった。
そして、今回…。
3回も失敗したのだから今後の儀式を止めさせる理由は充分だろう。
しかし、最悪だ。
召喚のターゲットを間違えて呼んでしまったのだから。
どうしてこんな事が。
魔力を持つ者の証であるグレーの髪をうな垂らせて途方にくれているピエリック・ベフトンは、現在一番完璧な魔力者ではなかったのか。
見れば、ホノカと申したこの子は年端もいかない子供のようだ。
この子を間違えて召喚をできなかった事、として処理するいうのならなら、この子の保護は2人より私が適任だ。
どっちみち面倒みるつもりだったのだから。
成功した者の方を想定していたのだが…。
失敗とはなんたる事だ。
「ああ、かまわない。…幼いように見えるが、歳はいくつだ?」
「…22、です。」
「…!!」
本当に?
そうは見えないが。
15~6歳だろ?
22歳は加算しすぎだ。
しかし、こんな状況で嘘をつく余裕はないだろうなあ。
適当なところに嫁がせるとしても、あまり年が過ぎると不利なのだが…。
この国の婚姻適齢年齢は18歳前後。
22歳で後妻も可哀想な…。
「では、行くとするか。」
そう言って穂乃香の肩にかけたマントで更に身体も顔もすっぽり包んで抱っこをするデフロット。
「見つかると面倒だ。しばし、我慢されよ。」
デフロットの身体に伝わるように声を出さずに頷く穂乃香だった。
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