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しおりを挟む大きなお屋敷…。
馬車で連れて来られたところは敷地の入り口と思われる門をくぐってもなかなか時間がかかる場所にあった。
マントは馬車に乗ると顔から外され、身体に巻き尽きられたが今度は自力で歩ける程度だ。
「男物のマントで悪いが、下着姿よりはましだろう。」
下着姿?
足を出したモコモコのルームウエアーを下着と勘違いしたのね。
ルームウエアーはあくまで部屋着なので外では着ないが下着ではないはず。
でも、さっきの方も含めてみなさんキッチリ着込んでますもんね。
そして、今、穂乃香の目の前にあるのは全部が見渡す事ができないほどの大きな屋敷だった。
「ホノカ、おいで。」
馬車を降り、黒髪の男性に呼ばれ、その屋敷の扉をくぐった先には、絵に書いたような黒服の執事やメイドが並んでいた。
「旦那様、おかえりなさいませ。」
深くお辞儀するその黒服の男性が穂乃香に視線を合わせた。
「これはまた、可愛いらしい方をお連れなさいましたね。」
「…こんにちは。」
なんて挨拶してよいのかわからず、日本の無難な挨拶をした。
「しばらく、預かる事になった。不自由が無いようによろしくたのむ。」
「仰せの通りに。」
スタスタと屋敷の奥に歩き出すデフロットについていこうと一緒に歩き出す穂乃香に。
「お嬢様はこちらに。」
黒服の男性に呼び止められる。
振り返ればニッコリと優しく微笑まれ掌をデフロットとは反対の方向を指された。
戸惑ってデフロットを見れば少し先で歩みを止めていた。
「…着替えるだけだ。行っておいで。」
「…終わったら、また、会えますか?」
無表情のデフロットの目が少しだけ開いた気がした。
「…ああ、お茶を用意させておく。」
そういって、やっぱりスタスタと行ってしまった。
黒服の男性はこの屋敷の執事でコーマス、着替えを手伝ってくれたのはナラフと言うデフロットの乳母をしていて今はこの屋敷の侍女だというちょっとふっくらした小母さまだった。
デフロットはこの屋敷で1人で住んでいるナートラーニ公爵だとナラフは説明してくれた。
以前はとっても偉い役職に就いていたと聞いた。
とっても偉いってどのくらい?
前職の地位もさることながら、公爵という地位は独身女性には大変魅力で縁談が絶えないが、本人は結婚するつもりはないので困っていた、とも教えてくれた。
という事は独身なんだ。
顔は綺麗で確かにイケメンだったけど、パッと見怖そうだもんね。
「旦那様がこんな可愛らしい女の子を連れてくるなんて、初めてで、コーマスも私も、もう嬉しくて嬉しくて。更に可愛くしてあげますわ。旦那様が惚れ直すようにね。」
惚れてませんから、直しようがないですけど。
ナラフと話をしながら、用意してもらった着替えは22歳は恐らく着ないフリフリの足首が少しだけ出るドレスだった。
デフロットが”幼いように見えるが”と言っていた事を思い出す。
こっちの人には自分はいったいいくつに見えるのか?
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