恋、できる?!~ピアノ王子の恋はいたって普通(女子)~

奈井

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5、いざ夜カフェへ

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まるで森の一軒屋。

それが、裕の第一印象。


昊人に連れられるまま1度だけ電車を乗り換え、降りた駅から徒歩10分。

2人は今3階建てのビルの前にいた。

当たりには背の高い街路樹が立ち並ぶエリア。

駅近の夜特有の喧騒を背に小さな川にかかる橋を1つ超えたこの当たりは、もうすぐ22時になるというこの時間でも人の通りはあるが、静かで少々暗い。

でも嫌な雰囲気の暗さではなかった。

1階の扉には『CLOSE』と書かれたプレートがノブに掛けてあった。

2階は煌々とした明かりが見えるが・・・その扉以外、入り口が見えない。

不安になり裕は昊人を見上げる。

一緒に歩いている時も思ったが、昊人は背が高い。

この身長差だと180cmはあるかも、と裕は思った。

昊人は不安に揺れる裕の目を見て人懐っこい笑みを返した。

「1階は花屋なんだ。カフェは二階だよ。・・・こっち。」

再度1階を覗けば暗闇の中に切花がたくさん入ったガラスケースが見えた。

他にもたくさんの鉢植えやドライフラワーなども見える。

こっちのお花屋さんも入ってみたいかも・・・。

裕が1階を覗きこんでいるうちに昊人は建物に近づいていて手招きをしていた。

あわてて追いかけると、細い石畳が2階への通じる扉まで案内してくれていたことに気付く。

花屋の入り口は道の正面に位置していたが、二階への扉は建物のサイドにあり、上部のガラスから明かりが見えた。

扉の前にはイーゼルがあり乗っているウェルカムボードは黒板でできていて、チョークで『OPEN ようこそ』と素っ気無く書かれていた。

少し角ばった文字は男性的で、マスターは男性なのかなと予想させた。

レディーファーストと言わんばかりに、昊人が扉を開け裕を中に入れてくれた。

小さくお辞儀をしなが中に入れば、ホールと言うには少々狭い空間に、大きな観葉植物が置かれていた。

「わあ~!」

トピアリーで作られたウサギにテンションが上がる裕。

まるで不思議の国のアリスの気分。

ウサギに導かれ、穴に落ちて、お茶会のテーブルにつくアリス。

じゃあ、裕をここに導いたのは昊人だから、昊人はウサギさん役?なーんてね。

自分の乙女の考えにちょっと照れる。

「ステキですね!」

「だろ?女の子には評判がいいけど、ここの店主はイメージに合わないって言って不満なんだ。」

「不満?外の雰囲気からも緑のウサギさんは合っていると思うけど・・・。」

「1階の花屋が店主のお姉さんが経営していて、そのウサギも勝手に置いていったんだよ、たぶん。この前来た時はゾウだったし。」

ゾウ・・・。

それはそれで可愛いけど、カフェのイメージではないなあ、と緑色のゾウを思い浮かべた。

階段を登れば、すぐにカウンターがあった。

「あれ?いらっしゃい!ひさしぶり!」

低めの男性の声がすぐに聞こえた。

グラスを拭いていた手を止め右手を出してくるカウンターの中の男性は満面の笑み。

黒髪は短いながら立っていて、細身の眼鏡は一瞬鋭さを感じるが、昊人に向ける笑顔が柔らかい。

短い髭・シンプルなピアス・白シャツと黒のジレで細身、それがとっても似合う。

この人がさっき言っていた店主かな?

「ああ、久しぶりだね。半年くらいは経つかな?」

「半年?もっとだろ、日本には帰って来てるって聞いていたから、いつ来るか待ってたんだ。」

「ありがとう。なにかと忙しくて・・・。」

「だろうな・・・。で、そちらの方は?」

2人の会話を一歩後ろで聞いていた裕に二人の視線が向く。






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