5 / 48
5、いざ夜カフェへ
しおりを挟むまるで森の一軒屋。
それが、裕の第一印象。
昊人に連れられるまま1度だけ電車を乗り換え、降りた駅から徒歩10分。
2人は今3階建てのビルの前にいた。
当たりには背の高い街路樹が立ち並ぶエリア。
駅近の夜特有の喧騒を背に小さな川にかかる橋を1つ超えたこの当たりは、もうすぐ22時になるというこの時間でも人の通りはあるが、静かで少々暗い。
でも嫌な雰囲気の暗さではなかった。
1階の扉には『CLOSE』と書かれたプレートがノブに掛けてあった。
2階は煌々とした明かりが見えるが・・・その扉以外、入り口が見えない。
不安になり裕は昊人を見上げる。
一緒に歩いている時も思ったが、昊人は背が高い。
この身長差だと180cmはあるかも、と裕は思った。
昊人は不安に揺れる裕の目を見て人懐っこい笑みを返した。
「1階は花屋なんだ。カフェは二階だよ。・・・こっち。」
再度1階を覗けば暗闇の中に切花がたくさん入ったガラスケースが見えた。
他にもたくさんの鉢植えやドライフラワーなども見える。
こっちのお花屋さんも入ってみたいかも・・・。
裕が1階を覗きこんでいるうちに昊人は建物に近づいていて手招きをしていた。
あわてて追いかけると、細い石畳が2階への通じる扉まで案内してくれていたことに気付く。
花屋の入り口は道の正面に位置していたが、二階への扉は建物のサイドにあり、上部のガラスから明かりが見えた。
扉の前にはイーゼルがあり乗っているウェルカムボードは黒板でできていて、チョークで『OPEN ようこそ』と素っ気無く書かれていた。
少し角ばった文字は男性的で、マスターは男性なのかなと予想させた。
レディーファーストと言わんばかりに、昊人が扉を開け裕を中に入れてくれた。
小さくお辞儀をしなが中に入れば、ホールと言うには少々狭い空間に、大きな観葉植物が置かれていた。
「わあ~!」
トピアリーで作られたウサギにテンションが上がる裕。
まるで不思議の国のアリスの気分。
ウサギに導かれ、穴に落ちて、お茶会のテーブルにつくアリス。
じゃあ、裕をここに導いたのは昊人だから、昊人はウサギさん役?なーんてね。
自分の乙女の考えにちょっと照れる。
「ステキですね!」
「だろ?女の子には評判がいいけど、ここの店主はイメージに合わないって言って不満なんだ。」
「不満?外の雰囲気からも緑のウサギさんは合っていると思うけど・・・。」
「1階の花屋が店主のお姉さんが経営していて、そのウサギも勝手に置いていったんだよ、たぶん。この前来た時はゾウだったし。」
ゾウ・・・。
それはそれで可愛いけど、カフェのイメージではないなあ、と緑色のゾウを思い浮かべた。
階段を登れば、すぐにカウンターがあった。
「あれ?いらっしゃい!ひさしぶり!」
低めの男性の声がすぐに聞こえた。
グラスを拭いていた手を止め右手を出してくるカウンターの中の男性は満面の笑み。
黒髪は短いながら立っていて、細身の眼鏡は一瞬鋭さを感じるが、昊人に向ける笑顔が柔らかい。
短い髭・シンプルなピアス・白シャツと黒のジレで細身、それがとっても似合う。
この人がさっき言っていた店主かな?
「ああ、久しぶりだね。半年くらいは経つかな?」
「半年?もっとだろ、日本には帰って来てるって聞いていたから、いつ来るか待ってたんだ。」
「ありがとう。なにかと忙しくて・・・。」
「だろうな・・・。で、そちらの方は?」
2人の会話を一歩後ろで聞いていた裕に二人の視線が向く。
0
あなたにおすすめの小説
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
Emerald
藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。
叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。
自分にとっては完全に新しい場所。
しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。
仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。
〜main cast〜
結城美咲(Yuki Misaki)
黒瀬 悠(Kurose Haruka)
※作中の地名、団体名は架空のものです。
※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。
※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。
ポリン先生の作品はこちら↓
https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911
https://www.comico.jp/challenge/comic/33031
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる