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13、コーヒーの香り
しおりを挟む劇場の中は、できたばかりとあってとても綺麗だ。
真新しい建材の香りもするが、昊人たちのの公演を祝う花の香りもする。
そして、どこからか場違いの香りが漂っていた。
これ・・・コーヒーみたいな香りだ。
公演まで時間にまだ余裕がある。
ドキドキしている心臓を落ち着かせる為にも、私も何か飲もうかな。
ふと見ればロビーの一角で飲み物を提供していた。
こういう劇場で飲み物や食べ物を販売するなんてことあるんだ・・・。
そういえば、ネットで調べた時に昊人は大のコーヒー好きで、マネージャーの入れるコーヒーを公演前に必ず飲むと書いてあった事を思い出した。
そのせいか、多くの観客も昊人のマネをして公演を聞く前にコーヒーを飲むらしい。
コーヒーに限らず紅茶や緑茶などを飲んでリラックスして自分の演奏を聞いてほしいと昊人が音楽雑誌のインタビューにも答えていたことは有名だとも書いたあった。
裕がコーヒー販売のカウンターに近づけば、カウンターの中に一際背の高い男性を発見した。
あの人・・・マスターだ。
それは、あの日、昊人と訪れたカフェのマスター柊馬だった。
ここにいる事を見られるのもなんだかバツが悪い気がした。
そっとそのカウンターを離れる裕。
時計を見れば先程からあまり時間が進んでいなくて、どうしようかと手持ち無沙汰になる。
たくさんの花が飾られているのが目に入る。
よく見れば有名な企業に個人的なファンといろいろなところから届いていた。
自分が考えているより有名なんだと改めて思った。
ポン、と肩に何かが触れた。
ん?
叩かれた肩の方を見れば、そこには先程見かけた、カフェのマスター柊馬がいた。
「あ!こんにちは。」
驚いて咄嗟に頭を下げた。
「聞きにきたの?」
「ええ。・・・あれから調べて・・・ピアノ、聞いてみたいと思って。」
「そうなんだ。まだ時間あるよね?・・・ちょっと待てて。」
言うが早いか、柊馬はカウンターの方へ小走りに行ってしまった。
柊馬は他のスタッフに耳打ちしてすぐにカップを二つ持って、裕に近づいてきた。
「会場内は飲食禁止だから、あっち、行こうか。」
そう言って顎で行く方向を指した。
周りを見ると、購入した飲み物を飲んで、カップをゴミ箱に入れてから会場に入って行く人たちが見えた。
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