恋、できる?!~ピアノ王子の恋はいたって普通(女子)~

奈井

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15、夜中の電話

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RUPOSERの演奏はすばらしかった。

クラシックはCMなどで有名な曲をアレンジし短くメドレーで演奏してくれたので裕も聞いていて楽しかった。

ほとんどはRUPOSERのオリジナル曲だったが、裕もCDを買って聞いてきたので知っている曲ばかり。

最後の曲は裕もお気に入りの曲のバラード「innamoramento(イナモラメント~恋に落ちる事)」。

帰りの電車の中でイヤホンをスマホに差込み、公演の最後の曲を家に着くまで何度もリピートして聞いた。

もちろん、歌詞などは入っていないが、少し切なくて、でも愛する想いが溢れるようなそんな曲が裕の心を熱くした。

ベッドに入り本日何度目かわからないくらい聞いている「innamoramento」を再生する。

やっぱりいいなあ・・・。

うっとりとしながら眠りの淵に足をかけた瞬間、曲が切れて、SNSの通知を知らせる音が聞こえた。

えー、折角気持ちよく眠れそうだったのに。

残念な気持ちでいっぱいになるが、通知の相手や内容も気になるから、仕方なくスマホを操作する。

無視するわけにはいかない、仕事の件だとヤバイし。

・・・!!

裕は慌てて上半身を起こした。

表示された相手は『新しい友達 コート』だった。

え?は?と頭の中は大きなハテナが点滅した裕。

『もう寝た?』

メッセージの内容にも驚く。

なぜ、寝たと聞く?

この、寝たは睡眠の寝た?

それとあっちの意味のヤツ?

イヤイヤ、そうではなく、もしかして、いたずら?

昊人とは連絡先を交換していない。

このコートは昊人なのかわからない。

グルグルと半分眠りかけた頭が急いで働き始めるから熱が出たように頭が熱くなる。。

でも、それに追いつかず2個目のメッセージが入る。

『今から電話する』

許可を求めてくるんじゃないくて、断言ですか?

え?え?どうしよう!もし、本当の昊人だったら・・・。

そんな、混乱をしていると、やはり遠慮なく呼び出し音が鳴った。

出るか出ないか躊躇しながらも通話のマークをスワイプする。

「・・・もしもし・・・。」

『裕ちゃん?』

その声は、やはり昊人だった。

ちょっとの安堵と驚きが裕を埋め尽くす。

「昊人さん?」

確信したが尋ねる裕。

『そう、俺。・・・俺の方が裕ちゃんと先に出会ったのに、なんで柊馬が裕ちゃんの連絡先知ってるの?・・・俺、チョー不機嫌だから!』

本当に不機嫌そうな声だった。

出会った時とはぜんぜん違う低い声。

「え?」

不機嫌って言われても・・・。

「・・・ごめんなさい。」

反射的に謝罪の言葉が出る。

でも・・・なんで、私が謝るの?とスマホを片手に首を傾げる。

誰も見てはいない事はわかっているが、自然に気持ちと連動してしまった首。

『別に、謝らなくてもいいけど・・・。次はお仕置きだからね。』

「・・・はい。は?お仕置きってなんですか?・・・ではなくて、何でですか?」

不穏な響きの言葉を告げる昊人に、少し冷静さが戻ってくる。

『まあ、こうやって連絡が取り合えるようになったんだから、柊馬は許すけど。裕ちゃんは1回ペナルティだね。・・・明日、空いてる?』

「ペナルティて、私が何かしました?」

今度は裕が不機嫌な声で応える。

『したよ。柊馬に連絡先教えたじゃない!』

「それは、聞かれたから・・・。」

新メニューの試食というちゃんとした理由があった。

それに、昊人さんは聞かなかったじゃない・・・。

『聞かれたら誰でも教えるわけ?そんな子じゃないでしょ?俺には最初は警戒心ムキムキだったじゃない。・・・それより、明日だよ。空いてる?俺、午後から空いてるんだ。ランチから付き合ってよ。』

あの時は確かに警戒してましたよ。

でも、柊馬は昊人の知り合いだから教える事に迷いはなかった裕。

ランチに誘ってくれたことに嬉しさを感じるが、それを隠しながら答える。

「・・・空いてますよ。」

『じゃあ、決まり!最初に会ったカフェの駅前で待ち合わせしよ。寝てたよね?ゴメンネ。じゃあ。』

「待って!」

もう、終わり?

電話を切るのがもったいない気がした。

さっさと通話を終了させようとする昊人は公演の後だし忙しいのかな。

でも、何にか話したい。

焦ってしまって頭が真っ白になる。

『ん?何?』

えーと。

そうだ、今日の演奏の事。

「・・・innamoramento・・・とてもステキでした。」

1番に思い浮かんだ事。

1番に伝えたかった事。

ステキでした、しか言葉が出てこない語彙力の無さに悲しくなる。

『・・・ありがとう。』

あ!いつもの昊人さんの声だ。

それだけで伝わった気がするし、裕も一瞬にして満足した。

「・・・それだけです。おやすみなさい。」

『ああ。おやすみ。』

昊人の声が電話を始めた時より柔らかい気がする。

裕は通話の切るマークをタップする。

耳の側で自分の心臓の音が大きく聞こえる。

今日、あの大きなステージでたくさんの人を引き付ける演奏をした昊人が裕に電話をしてきた。

電話がきただけなのにそれだけで心が熱くなる。

優しくされただけ。

イケメンでカッコイイだけ。

男の人でピアノが弾けるだけ。

別世界の人だと自分でブレーキをかけてきたのに。

それなのに・・・。

憧れているだけなんて言い訳は、もう無理だ。

自分でダメだ!て思っているのに。

叶わないとわかっているのに。

私は今、恋に落ちたんだ。





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