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27、食事へ 1
しおりを挟む帰り支度をすませて、貴重品が入っている小さなバッグを持ちブースの外に出た。
制服が無い会社なので更衣室は無く、セキュリティ・カードを翳す少し前にたくさんのロッカーが並ぶスペースがある。
コートなどはそのロッカーに入れておくので仕事が終われば自然にそこへ向かう裕。
「裕さん、この後って時間あります?」
声をかけてきたのは、昨年転勤して最近まで同じチームだった吉田望(よしだ のぞみ)だった。
「えーと、どうしたの?何か相談かな?」
後輩からこのような質問があったときは大抵仕事の悩み事ある時が多い。
そして、先輩からの時は仕事の愚痴を言いたい時、そんな風に決まっていた。
初対面の人と声だけでやり取りするコールセンターのオペレーターの仕事をしていると、対面しないぶんお互いに伝わらない事が多々ある。
怒鳴られたり、理不尽な事を言われたり、とトラブルが発生すればストレスが溜まる。
その解消法は溜め込まないで吐き出すこと!と研修でどの講師にも言われた。
例えば、仕事の内容が個人情報にあたり他人に言えない事だとしたら、他の事をとりあえず話せ!と先輩から教わった。
それができず何も言えなくて、周りが気がつけば仕事を辞めていった同僚が何人もいる。
溜め込めばこの仕事は続かない。
自分の時も助けてもらっているのだから、対応できる限り時間を作る事にしている裕。
「お話しも聞いて欲しいんですけど、裕さんと行ってみたいお店があって・・・シンガポール料理なんですけど、どうてすか?」
「シンガポール料理?行ったことない!行ってみたい!・・・まって、 メールしてからでいい?」
「はい!どうぞ。」
裕と望は同じチームの時、一番仲が良かった。
お互いに地方から出てきた事や事務職からオペレーターになった共通点もあり望の悩みを裕は理解していた。
裕は、スマホを取り出し、手慣れた様子でさっさと送信する。
ほどなく返事が来て、また、それに返しを打つ。
その様子を見ていた望が少しだけ眉をよせた。
「・・・もしかして、彼氏ですか?」
望にズバリ゛彼氏゛と言われてちょとだけムズムズと照れが顔を出す。
「う~ん。そうだね・・・。」
ハッキリとではないが肯定を伝えた。
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