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38、寂しさより食い気
しおりを挟む昊人がドイツに行って2ヶ月がたった。
最初の頃は裕も寂しさを感じていた。
仕事で新しいチームでの業務スタートが本格的になり日々なにかと追われれば、昊人を思い出さずに済むのが現実だった。
でも、どうしても会いたい夜などは、柊馬のカフェへと足を運び、あちらでの昊人の情報をゲットしていた。
直接、連絡をとりあっているが、仕事の事はあまり話さない昊人。
以前、RUPOSERのマネージャーをしていたことや、本人も音大出身の柊馬には、ネットのニュースよりいろいろ情報が集まっていた。
仕事が思ったより長引き、気がつけば午後9時を過ぎていた。
明日は夕方から出勤のシフトだ。
久しぶりに夜カフェしたくなったなあ・・・。
心の中で呟くのは自分を正当化したいだけ。
本当は5日も声を聞いていない昊人の事を、柊馬から聞きたかっただけ。
心の呟きも素直じゃない自分が嫌だなあ、と思う。
「こんばんは・・・て、智ちゃん!来てたんだ!」
カウンターに座り、柊馬と親しげに話している智子が目に入る。
「あ~!カトユ!ひさしぶりだ~。ここで会ったって事は朝まで帰さないぞ~。でいいんだよね?」
「その通り!明日は夕方からのシフトだから、ゆっくり朝まで話そう!」
気を許しあえる友達の存在に仕事で張り詰めていた気持ちが緩む。
「裕ちゃん、仕事の帰り?もしかしてご飯まだ?」
柊馬にご飯の心配をしてもらえば、急にお腹がすいてきた。
「そうなんです!柊馬さんのローストビーフサンドが食べたいです!」
「よし!すぐに作るからまってて・・・その前に、これでも飲んでて。」
そう言ってカウンターに出されたのは緑色の液体。
智子の隣に腰掛けると裕はその液体をじろじろと覗き込んだ。
「それね、柊馬さんが私のためにって、たった今ミキサーでつくってくれたの。」
大きな胸の前で手を合わせてうっとりポーズをする智子。
「昨日まで撮影だったんだ~。前回の作品について、お腹がポッコリしてるってレビュー書かれちゃって・・・。気にしちゃったのもバカらしいんだけど、乙女としては・・・。」
私の映像なんだから、お腹じゃなくて胸でも見ればいいのにねえ、と大きな胸を下から両手で支える智子。
ささえないと重そうな胸は、いたって普通サイズの裕には、羨ましい限りだ。
「それで、撮影前の3日間と撮影の2日はプロテインばかりのダイエットしていたんだあ。撮影なんて体力勝負じゃん!もうヘロヘロで柊馬さんのご飯が食べたい一心でここにきたら、早速、身体にいいものをってお野菜いっぱいのスムージーを作ってくれたってわけ。」
そのおすそ分けか・・・それでもいいけどね。
私も忙しかったから食生活が貧しかったし、ありがたいと思う裕。
「それより、昊人さんから連絡はあるの?」
「それが・・・。」
あちらでも忙しいのはわかるし、こっちのシフトの関係もあるが、いくら遠距離でも5日も連絡無しってどうかと思うよ。
そんな愚痴を柊馬に、ついでに智子に聞いてほしかった。
でも、それは、智子以外のサプライズな人の登場で言えなくなってしまった。
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