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新学期

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 新学期が始まった。

 クラス分けがまたあり、みんな同じクラスになった。

 浅川さんも一緒だった。

 真実と泉が並ぶとやはり目立つ。

 机の席順が決まり、何故か横一列で纏まった。

 浅川さんは真実と泉に挟まれてすごい満足そうだった。

 透も泉の隣の席に座れたことが嬉しくて仕方ない。

 …ここなら泉との間を邪魔するのはせいぜい浅川さんぐらいだ。

 ホッとしていた。

 最近海くんの近くにいると首の後ろあたりがジリジリするような気がしていた。

 気のせいだろうと思っていた。

 苦手だと意識しちゃうとダメだな…。

 気にしないようにしよう。
 
 




 昼休みになる。

 「透、一緒にお昼食べよう?」

 泉がそう言ってくれる。

 一緒に売店でパンでも買ってこようかと話していたのだが海くんがくる。

 「泉、一緒にお昼食べよう?」

 「またかよ…何でクラスのヤツと食わないんだよお前は…。」

 真実は呆れたように言った。

 「なになに?真実の親戚なの?」

 浅川さんは興味深々だ。

 しかしすぐに海くんに興味を無くしたのか浅川さんは真実を連れて売店に行ってしまう。

 「透も行こうぜ?」

 真実が誘ってくれた。

 このまま泉と一緒にいてもな…。

 そう思い真実達の後を追い教室を出る。




 浅川さんと歩く真実。

 オレ…二人の邪魔しちゃってるな…

 
 
 「真実、俺財布忘れちゃったから取って来るよ!先行って!」

 そう言って真実達と別れた。



 
 ★



 
 屋上に上がる。

 人はそんなにいなかったので日陰になっている壁際に座る。

 …海くんしんどいな…。

 そのまま目を閉じた。

 


 昼休みが終わるギリギリに教室に帰る。

 廊下を海くんが歩いているのが見える。

 …やっと帰ったか…。

 少し安心して教室に帰る。



 「透、どこ行ってたんだよ。探しに行こうかと思ってたんだぞ?」

 心配してくれる真実。

 「うん…まあちょっとね」

 ちょうどチャイムが鳴ってくれたのでそれ以上は何も聞かれなかった。

 「ちゃんとご飯…食べた?」

 泉が小声で話しかけてくる。

 「うん」

 それだけ答えて教科書を机から出す。





 ★



 
 放課後も海くんは泉の所に来た。

 「泉、一緒に帰ろう?」

 「海…私…。」

 泉は透を見る。

 海くんの鋭い視線を感じた。

 「ああ…。俺図書館寄って帰るから…。じゃあね。」

 鞄を持って教室を出る。

 


 

 真実が追いかけて来る。

 「透、おいっ!」

 「…。」

 教室から離れた場所で真実に腕を掴まれた。

 「どうしてお前が引いてんだよ?」

 「…。」

 何も答えられない…。

 ただ海くんが苦手だったから逃げただけだ。

 …これ以上考えたくなかった。



 「いいんだ…。別に…。」

 真実の手を外す。

 「心配してくれてありがとう。…でも少し一人にして?」

 「…。」

 真実はそれ以上ついてこないでくれた。




 ★



 
 今日はバイトも無く時間を潰せる場所を探して目に入ったファーストフードのお店に入る。

 「いらっしゃいませ~ご注文はって青海クン…。」

 浅川さんがいた。

 可愛らしい制服を着て…。

 「浅川さんここでバイトしてるんだね!?」

 驚いた。

 「うん、まあね。お小遣い足らなくて…。」

 浅川さんはそう言いながらケラケラと笑う。

 「あっと…あんまり話してるとまた店長に叱られちゃう!接客ってほどほどが分かりずらいわよね。無愛想でもダメ、かと言って話し過ぎもダメって。めんどくさい。」

 「…そうだね。サービスしすぎるとそれが普通になちゃってこっちも疲れるし…。」

 不思議と浅川さんと話が合った。

 「あ、店長だっ!じ、じゃあ青海クンゆっくりしてってね★」

 浅川さんが手を振ってくれた。


 
 注文したセットを持って2階に上がる。

 …浅川さんって気さくなんだな…。

 真実が一緒にいるのもわかる気がする。

 明るくってハキハキしてて一緒にいても苦にならない良い意味でサッパリした女の子だった。

 浅川さんと話して少しだけ気が楽になった。



 そのまましばらく勉強していると少しずつお店の中が騒がしくなって来る。

 そろそろ行くか。

 座っていた場所を片付けて立ち上がる。



 「よお…。」

 真実だった。

 「…。」

 真実は困ったように笑った。

 「悪い…一人にして欲しいって言われたけど…。部活終わって浅川迎えに来たらお前がいるって聞いて…。浅川風にいうならこうだな…来ちゃったっ★」

 その瞬間後ろにいたらしい浅川さんに背中を叩かれている。

 「私のマネするんならもっと可愛くやりなさいっ!」

 思わず笑ってしまった。


 

 ★



 3人で歩く。

 駅で浅川さんと別れてそこからは真実と二人だ。

 「…悪かったな。放っておいてやれなくて…。声かけるのだいぶ迷ったんだけど…。できなかった。」

 真実が一人で笑った。

 「…ううん。俺あんな事言っちゃったのに…ごめん。正直助かったよ。海くんの事苦手だし…。家に帰ったらまた泉といるんだろうって思ったらなかなか帰りづらくて…。真実が来てくれなかったら…またいれる場所探してた。多分…。」

 「…。」

 「だから、真実ありがとう。」

 真実の制服の裾を掴む。
 
 立ち止まる真実の背中に額を押し当てた。

 「海くんを気にしないでいれるように…頑張るから。」

 「…透…。」

 「それに今週はバイト続きだし、早く帰らずに済むしね。しっかり稼いで泉のプレゼント買わなきゃ!」

 何とか気持ちを切り替える。

 もうすぐ泉の誕生日だ!



 
 
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