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25話
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夜が訪れた。大半の者が眠りにつき、昼間は賑やかなルスフォードの街も静寂に包まれていた。
ジェラルドも普段ならとうに就寝している時間だ。だが、今日はベッドに入る気すら起こらず、椅子に座りぼんやりと窓の外を眺めていた。
今日も夢で過去に戻るのだろう。
アデリーナを救うためなら、どんな苦難の道でも歩むと決めた。その決意に偽りはない。
けれど、もうジェラルドには打つ手がなかった。
火事が起きないようにアデリーナの環境を整え、火事が起きてもすぐに対処ができるよう準備をし、アデリーナが負傷してもそれが負い目にならないようにはたらきかけた。
それでも、アデリーナは救えなかった。ただ努力が空回りし、彼女が傷ついた姿だけを見続ける。
ジェラルドの心は疲弊しきっていた。
ふいに、ジェラルドの目がかすみ始める。眠気などなかったのに、まぶたがゆっくりと下りていく。
魔女の魔法に抗う気力すらなく、ジェラルドは眠りに落ちた。
目の覚めるような青い空に、その赤い髪はよく映えた。
吊り目がちの緑の瞳は澄んでいて美しく、傷ひとつない白い肌が眩しい。
こちらを見つめる彼女の表情には憂いも陰りもなく、ジェラルドは胸にこみ上げるものをこらえた。
「お父様、自己紹介は自分でやるわ。彼とふたりきりにさせて」
「おお、そうか。ジェラルド君に失礼のないようにな。……では、ごゆっくり」
立ち去るカールを見送ると、アデリーナはジェラルドに目を向けた。困ったように眉を下げ、ジェラルドの頬に触れる。
「あなた、今にも泣きそうな顔をしてるわ。……また、迷ってるの?」
優しい声音に、触れる手の温かさに、ジェラルドの目から涙が溢れた。
「ええ。……どうすればいいか、わからないんです。何度繰り返しても何をしても、あなたを救えない。俺はもう、あなたの傷つく姿を見たくない」
「……あなた、私を救いたかったの? 復讐したかったんじゃなく?」
「何故、愛する人に復讐しなければならないんですか! 俺はただ、あなたに笑顔を取り戻したかっただけだ。前みたいに笑って過ごしてほしくて……っ」
涙は次から次へと溢れ、嗚咽で喉が震える。幼子のような姿をさらすジェラルドの涙を、アデリーナは取り出したハンカチで拭った。
「なら……会いに来て」
その声は震えていた。その瞳は涙で滲んでいた。
「あなたったら一度様子を見に来たきり、会いに来てくれないじゃない。……私、ずっと待ってたのに」
「アデリーナ……」
視界が急速にぼやけていく。夢が覚めるのだとジェラルドは悟った。
「きっと来てね。私、待ってるから」
朝日が部屋に差し込んでいる。
椅子で眠ってしまったため、体のあちこちが痛みを訴えているが、心はとても軽かった。これほどよい目覚めはいつ以来だろうか。
いつものように夢は覚めた。けれど、いつもとは違った。
都合の良い夢を見ただけかもしれない。ジェラルドが想定外の行動をしたから、途中で打ち切られただけなのかもしれない。
それでも、ジェラルドは偶然だとは思えなかった。ジェラルドの耳には、彼女の声がはっきりと残っている。
『きっと来てね。私、待ってるから』
その懇願に背中を押されるように、ジェラルドは部屋を飛び出した。
ジェラルドも普段ならとうに就寝している時間だ。だが、今日はベッドに入る気すら起こらず、椅子に座りぼんやりと窓の外を眺めていた。
今日も夢で過去に戻るのだろう。
アデリーナを救うためなら、どんな苦難の道でも歩むと決めた。その決意に偽りはない。
けれど、もうジェラルドには打つ手がなかった。
火事が起きないようにアデリーナの環境を整え、火事が起きてもすぐに対処ができるよう準備をし、アデリーナが負傷してもそれが負い目にならないようにはたらきかけた。
それでも、アデリーナは救えなかった。ただ努力が空回りし、彼女が傷ついた姿だけを見続ける。
ジェラルドの心は疲弊しきっていた。
ふいに、ジェラルドの目がかすみ始める。眠気などなかったのに、まぶたがゆっくりと下りていく。
魔女の魔法に抗う気力すらなく、ジェラルドは眠りに落ちた。
目の覚めるような青い空に、その赤い髪はよく映えた。
吊り目がちの緑の瞳は澄んでいて美しく、傷ひとつない白い肌が眩しい。
こちらを見つめる彼女の表情には憂いも陰りもなく、ジェラルドは胸にこみ上げるものをこらえた。
「お父様、自己紹介は自分でやるわ。彼とふたりきりにさせて」
「おお、そうか。ジェラルド君に失礼のないようにな。……では、ごゆっくり」
立ち去るカールを見送ると、アデリーナはジェラルドに目を向けた。困ったように眉を下げ、ジェラルドの頬に触れる。
「あなた、今にも泣きそうな顔をしてるわ。……また、迷ってるの?」
優しい声音に、触れる手の温かさに、ジェラルドの目から涙が溢れた。
「ええ。……どうすればいいか、わからないんです。何度繰り返しても何をしても、あなたを救えない。俺はもう、あなたの傷つく姿を見たくない」
「……あなた、私を救いたかったの? 復讐したかったんじゃなく?」
「何故、愛する人に復讐しなければならないんですか! 俺はただ、あなたに笑顔を取り戻したかっただけだ。前みたいに笑って過ごしてほしくて……っ」
涙は次から次へと溢れ、嗚咽で喉が震える。幼子のような姿をさらすジェラルドの涙を、アデリーナは取り出したハンカチで拭った。
「なら……会いに来て」
その声は震えていた。その瞳は涙で滲んでいた。
「あなたったら一度様子を見に来たきり、会いに来てくれないじゃない。……私、ずっと待ってたのに」
「アデリーナ……」
視界が急速にぼやけていく。夢が覚めるのだとジェラルドは悟った。
「きっと来てね。私、待ってるから」
朝日が部屋に差し込んでいる。
椅子で眠ってしまったため、体のあちこちが痛みを訴えているが、心はとても軽かった。これほどよい目覚めはいつ以来だろうか。
いつものように夢は覚めた。けれど、いつもとは違った。
都合の良い夢を見ただけかもしれない。ジェラルドが想定外の行動をしたから、途中で打ち切られただけなのかもしれない。
それでも、ジェラルドは偶然だとは思えなかった。ジェラルドの耳には、彼女の声がはっきりと残っている。
『きっと来てね。私、待ってるから』
その懇願に背中を押されるように、ジェラルドは部屋を飛び出した。
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