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2章・攻略対象者との出会い

11話

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「さてナヴィリア嬢。呼ばれた理由はわかる?」
「いいえ全く。すみませんでした。」
心当たりがありすぎてちょっと皆目検討もつきません。
けど、恐らくなんかしら作ったものがバレたのかと思われるので一応謝っておきました。
「うん、その感じだと私が把握している物以外にも色々作ってそうだね?」にっこりと笑って言われました。
陛下、目が笑ってないです。レオンハルト様と同じ。さすが親子ですね。

「まぁそれは後で全部出してもらうとして、今回呼んだのはフィリム君の事だよ」
「団長のですか?」
「うん、今回はお礼だよ。」
先代の魔術師団長が連れて帰ってきたものの、城でも彼の能力が高すぎるがゆえに持て余していたらしく、どうしたものか、となっていたそうです。しかも副団長の件があるように何を言っても本人に響かず学習もしないので、とにかく周囲を破壊しまくる、という暴挙が続いていたそうです。
「流石ガディアスの娘だよね、あっさり手なずけちゃうんだからさ」
「、、、別にそういったつもりはなかったんですが」
「まぁでも、手綱はナヴィリア嬢がもってくれたし、安心だねー!いやー良かったよー!」
「、、、お力になれたのなら良かったです。」
最近本格的に派閥争いが収束に向かっており、その後ろで陛下と殿下達がだいぶ奔走なさっているそうで、久しぶりに見た王族の方々は随分とやつれていました。、、、倒れないのが不思議な程ですね。お疲れ様です。

と、フラフラの状態で執務をしながらも会話を続けているここは陛下の執務室です。
呼ばれすぎて常連さんになりました。大変な名誉ですね。不、が付きますけども。

はい。こんばんは、ナヴィリアです。
何故こんばんは、かと言いますと、フィリム団長との対決後すぐにユーリ様を介して呼ばれました。
時刻で言いますと19時を過ぎたあたりです。お腹減りました。
でもメイドさんにはここに来る前にご飯遅めになるから取っておいて下さいってお願いしておきました。
ユーリ様の時で学習したので、これでメイドさんは困らないはずです。多分。

陛下とぽんぽん会話しながら流れで私の作った認識阻害の結界の話になりました。やっぱり怒られました。はい。
「いやー作りたい気持ちはね、分かるんだけどね?認識阻害。僕も欲しいくらいなんだけどさ、理由がね、ダメだよね?って思うんだけどさ」と、?をつけて笑いながら仰ってますが、全くもって目が笑ってません。疲れてるんでしょうか。
チラリと隣で一緒に執務を行っている王太子様を見ますが穏やかな顔で首を横に振られました。違うって事ですね。はい。
「一応、結界としての役割はギリギリまで抑えてありますがこれを外に出される・・・・・・訳には行かないとは思ってます。」
「、、、その意味のありそうな強調は何かなー?」
「陛下、私の作った物は誰にも教えない、という話でしたよね?」
大賢者のお爺さんはちゃんと私の技術が外に出たらどういう扱いになるか理解していらっしゃるので仲良く共犯・・になって頂いてますけど。
何故フィリム団長にまで私の作った物だけ・・がバレるのはともかく、作成者までバレているのか。が不思議でした。
「、、、不可抗力だよ」と視線を逸らしながら言われました。
陛下、こっち見ながら言ってください。嘘っぽいです。その態度は。
「と、言いますと?」
「君が子供達に好かれすぎて起きたことだから。」
、、、はい?子供ってことはレオンハルト様とかですか?好かれてる?あんなに黒い笑顔をこちらに向けてくるのに?
驚いて目が点になっているのに気づいた陛下がいちから説明して下さいました。
いわく、そもそもあの二人は私が作ったものは革命的な物なのに誰にも言わずそのまま墓にまで持って行こうとしているのが納得できない状態だったそうです。
別に誰かに言おう、といった思考はなかったそうですが、以前あった私の名前をどう呼ぶか、にて言い合いになった際に互いに私の事をどれだけ知ってるか、というマウントの取り合いに発展。
私がこれを作った、あれが出来る、これを教えてくれた、など城で私がやりたい放題やっていたことがほぼ全て漏れてしまって城に使えてる人の耳に入ってしまったそうで。すぐに箝口令を引いたので城の外には漏れなかったものの城の中ではもうほぼ全ての人が知っている、という事態になったそうです。なんてこった。

「2人とも随分と落ち込んでいてね~怒るに怒れなくてさ~」と、言う陛下。
「城の外に漏れてないし、まだなんとかなるかなって思ってるんだけど」
「、、、人の口に戸は建てられぬ、ですよ陛下」
「なにそれ、言い得て妙な面白い言葉だね~」
そっかーやっぱりダメかー。と言いながらため息をつく陛下。ご愁傷様です。根本の原因は私のようですけど。南無。

「あ、そうだナヴィリア嬢に手紙来てたんだった。宰相、どこやったっけ?手紙」
これですね、と手紙を渡してくれるお爺さん。
宰相さん前職の人にもう一度戻ってきて貰ったらしいんですけど、年齢を理由に退職したのもあって現在凄くヨボヨボとして大変そう。アイザック様待ちとのことで。、、、頑張って持ちこたえてください。

手紙を受け取ると、お腹減ったでしょーレオンが待ってるから一緒に食べてってあげて~と言われました。そんな急な。
マナーとかは一切問われないとの事だったのでそのまま王家の利用する食堂に向かいました。
メンズが勢ぞろいしてました。
「、、、アイザック様とユーリ様はともかく、なぜフィリム団長が?」
「お呼ばれしちゃった~」
理由を求めレオンハルト様を見るも
「君が手なずけたって聞いたから、呼んでおいたんだ。」という理由になってない理由が帰ってきました。全く分かりません。なぜ。
でも全員気を使う相手でもないので、いつもの様に和やかな・・・・・・・・・・雰囲気で食事をしました。
「だからー!女神が僕に手取り足取り教えてくれるって言ってるんだってばー!」言ってないですね、そんな事。ていよく副団長さんに押し付けられたんです。
「ナヴィはそんな事言わないと思うよ?まぁ、クッキーを食べ合う仲の僕になら言うかもしれないけどね?」言わないです。食べ合ってもないです。私の作ったクッキーを食べられて、殿下が部屋いっぱいにクッキーを送り付けて来ただけです。なんですかクッキーを食べ合う仲って。
「2人とも違うと思うよ。僕なんて家族公認の仲なんだからね」いえ公認じゃないです。お兄さんと話をしてみたらって言っただけであり、御家族とはお名前を知っている同士なだけです。別に認められては無いです。
「あは、いつも通りだね~ナヴィ?」
「ムグ、、、そうですね」いつも通り・・・・・の雰囲気ですね。火花なんて散ってないです。私には見えません。お肉美味しい。
そんな和やかな食事を終え、部屋に戻り手紙を読みます。母からでした。

『弟ができたわ。一度帰ってらっしゃい。』と一言。
今すぐ帰りましょう。

流石に夜も遅かったので朝1番に陛下に連絡言い逃げして転移魔法でサラッと領地に帰ってきました。
王都での日常が濃すぎて何年も帰ってきてなかったような気分です。

流石に驚かせてしまうため、屋敷に直接転移する訳には行かないので、屋敷から少し離れた所に飛び、そこから徒歩でのんびり歩いて帰ろうかなと考えていました。はい。
家の方から突進してくるかの様にこちらに向かって爆走して来る姿が目に映りました。あれはいのし、、、いえ妹ですね。
なんで気づいたんでしょうか。取り敢えず気絶しないように構えましょうか。こんな時の為に城で超強力な対物理結界を作ったのですから。

と、構えていると突っ込んできました。妹が。
魔法など全く意に介さずに・・・・・・・・突っ込んできました。結界が一瞬で粉です。無念。

そのまま意識はスゥッと無くなり目が覚めた時には自室のベットで眠っていました。
今までは妹からの突進で前世の記憶が戻っていましたが、今回新たに戻ってきた記憶は無いので、全ての記憶が戻って来た、という事でしょうか。
後でどうやってここまで運ばれてきたのかを聞くと、妹が気絶した私をボロ泣きの状態で引き摺って帰ってきたそうです。着て来た洋服はボロボロ、、、と。そうですか。

そして母の元に行くとにこやかに出迎えて貰いました。
「あらナヴィ、おかえりなさい。遅かったわね?」
「昨晩陛下に手紙を頂きました。ですので今朝帰ってきました。」
「そう、私は1週間前には出したのだけど、、、あとで言って聞かせないと・・・・・・・・・ダメかもしれないわね」
「、、、だいぶお疲れのようなのでお手柔らかにお願いします。」
「ふふ、それは言い訳にはならなくてよ。ただでさえ娘を1人置いていかせたのに連絡をすぐに取らせないのは同じ子を持つ親として失格よ。」
「、、、なるほど?」

陛下、私に貴方は救えませんでした。せめて安らかにお眠り下さい。

母親とのんびり紅茶を飲みながら優雅な時間を過ごしていると、廊下がバタバタと騒がしくなりました。そして随分と派手な音を立て扉が開くと妹が飛び込んできました。
「お姉様!お起きになりましたか!」
「えぇ、、、ロゼ、おはよう」
「はい!おはようございます!お姉様は本日もとてもお綺麗ですね!」
「ありがとう。お母様とロゼには負けるけれどね」
「いいえ!お姉様が世界一です!」
「、、、そう、ありがとう。ロゼ。」
「えへへ、どういたしましてです!」

でもロゼ、あの扉はどうするんでしょう。
とっても豪快に開けて入ってきた際に随分と不安になる音がしましたよ。バキッと。
心配そうにメイドさんが扉を開け閉めしてます。
、、、あ、ミシッていった。

見なかったことにして、母に本題の弟の事について訪ねた所、後継者問題があった為に分家にあたる親戚の子供で1番能力が秀でていた子を引き取ったとの事。
このお国は余程のことが無い限り男性が跡を継ぐ、と決まっています。
そちら地球でこんな考えは随分とよく燃えるかとは思いますけど。色々あるそうです。
アスタロン家では私と妹のロゼフィリアのみの為、新たに男児が産まれるか養子を引き取るかの2択でした。
私が王都に行く前まではどちらの方面に絞らずに同時進行で考えていましたが、いざ養子を取る、となった際にどの家から引き取るのか、などを考え各家をこっそり調査をした所、能力はとても高いのに、とんでもない環境で育てられた子が1人居たらしく。もうこれは引き取るしかない、と連れて帰って来たそうです。

はい、お察しの良い方はもうお気づきでしょうか。
その義弟が攻略対象者その5にあたります、セリウス・アスタロンです。年齢は私とロゼの間にあたる6歳です。

そしてそのセリウスですが、今は誰にも近寄らず怯えた状態でだいぶ衰弱しているそうです。
誰かが近寄るだけで魔力暴走を起こしてしまい、父か母が来るまで誰の手にも負えなくなるそうです。
しかも、あの母でさえ暴走を治めるのに随分と手こずるそうで。
、、、父ですか?筋肉で解決するので問題ありません。

セリウスは攻略対象者ではあるものの、弟という存在は随分と可愛いものですから。前世談ですけど。
「ナヴィならきっと暴走は治められそうだから、会って来てみなさい」といわれたので会いに来ました。
えぇ。少し顔を見て、姉ですこれからよろしくって挨拶だけするつもりでした。はい。そのつもりでした。

、、、今ですか?弟に縋りつかれながら大泣きされてます。なぜでしょう。既視感と出オチ感が否めません。

誰か助けていただけませんか。魔力暴走は止められても子供のあやし方は知らないんです。
、、、取り敢えず安心させるために笑ってたらいい?なるほど、、、普段笑わないせいか、筋肉が動かなすぎて表情筋がひきつるだけで終わりました。
鏡を見なくても分かるほどに笑顔失敗してます。多分。あっ、、、顔がつりそう、いたい、いたい。

そんな私の百面相をみて余程おかしかったのかセリウスが笑ってくれたので、なぜこんなになったのか説明しましょうか。
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