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3章・ヒロイン大暴走

19話

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ウザ絡みされながら聞いた話ではどうやらやはりヒロインはユーリ様を次のターゲットにしたみたいです。
さすがのユーリ様でも彼女には辟易しているみたいで時々疲れきった顔をのぞかせていました。

「ナヴィは父上と母上の仲をどう思う?」
ユーリ様に少し不安そうな、でもそれを見せないようにと必死で貼り付けたような笑みをこちらに向けながら問われました。既視感が凄い。
まさかヒロイン、また地雷踏みました?色々と才能ですね。ほんとに。
「とてもよろしいかと。コールズ伯爵家の皆さんを見てると互いが互いに尊重し、愛し合ってるように思えます。もちろん、その輪にはユーリ様もいますよ。」
「、、、そっか、君がそう思うならきっとそうだ。ありがとうナヴィ。」
先程の不安そうな顔が無くなりました。いつものくえないお顔ですね。
「、、、そう思うなら下ろしてくださいます?」
今私がいるのはユーリ様の膝の上です。なぜ。
しっかりとホールドされてる為に動けないんです。下ろして。
「んー、、、まだダメ。」
「、、、そうですか」
どうせ殿下のお言葉だなんだでのらりくらりとかわされるのでもう諦めました。乗せられた時に既にされてますから。そこからもう一時間近く経つんですけどね。
、、、足痺れませんか?痺れない?そうですか。
え?羽のように軽い?そんな馬鹿な。それは鳥に失礼ですよ。
、、、そんなに笑います?ユーリ様のツボが分かりません。

「はぁ、笑った~!話を戻すけどね、マスクリート嬢が、僕を見放した両親の事など忘れて自分を愛せって言うんだ」
さすがヒロイン。地雷へ100点満点の着地ですね。
「どこをどう見たらそう見えたんだろうね?父上も母上もあんなに親バカだというのに。」
両親の話をする時のユーリ様の顔はいつも穏やかで、最初に彼から団長の話を聞いた時の顔は随分と無理をしていたな、と昔に比べて家庭環境が良くなっていっている証拠ですね。妹さんも生まれましたし。現在2歳で、とても可愛らしい子です。
以前尋ねた際に「ねぇね」と言われた時は悶え死ぬかと思いました。ここは天国です?生きててよかった。

当時のユーリ様は誰でもいいから助けて欲しくて、でも誰にもいえなくてずっと留まり続けていた気持ちは、ほとんど情報を知らない私相手だからこそぶっちゃけられたんでしょうね。
でもあの時の夕飯の恨みは忘れてませんよ。食べ物の恨みは怖いですから。
「まぁ、彼女の話はナヴィが居なければ確かにあった世界線かもね。でも当時の事を知る人は屋敷うちで働いている人か両親ぐらいだからこの情報を彼女は知り得ないはずなんだよ」

それがどうにも不気味なんだよね~、と首をかしげながら伝えてきました。
前世の後輩の作ったシナリオをどういう訳か知ってて、彼女はその通りに動こうとしてるみたいですね。
あれは趣味だ、と言っていたので後輩に近しくあまり世間を知らない・・・・人物、、、妹?
後輩からは顔は・・良い妹がいる、とは聞いていましたけど。説はありそうですね。

「、、、ナヴィ?聞いてないね?」
「すみません全く」
「何か引っかかる事でもあった?」
「引っ掛かりはしてません。ちょっと当たりをつけていただけなので。」
「ふぅん?教えてはくれないの?」
「はい、すみません」
「いーよ、助けが必要になったら言ってね?、、、それでマスクリート嬢だけどおかしいと思わない?」
「、、、どの辺でしょうか」
「どこがおかしいかって言われると全部なんだけどさ、彼女婚約者のいる男にも接触・・してる。僕の友人もそうだけど最初は不気味がったりするんだけど気づいたら彼女に貢いだり愛を囁いてる“真実の愛を見つけたんだ”って言って。」
「、、、接触、とは本当に触れることですか?」
「うん?そうだね、どっちの意味でもある。彼女は僕にも触れようとしてくるし。」

以前疑問に思っていた、やけに相手に触れようとするのはなにか理由がある?
、、、魅了か、ただ触れたいだけか。
どちらにせよこれは確認しなければいけないですね。
「ねぇナヴィ?ザックは君からアドバイスを受けて実行したら彼女は近寄ってこなくなったと言っていたのだけど、なんて言ったの?」
「アイザック様のブラコ、、、兄弟愛をお伝えしてみては、と進言しました。」
「ぶらこ、、、?そっか確かにザックの兄上はよくできた方だもんね。ザック自体の熱量もすごいけど。」
「そうですね、自分が貶した相手を散々褒めていてはいたたまれないかと思い提案したのですが別の所で嫌がられてしまったようでして。」

「ふぅん、、、じゃあ僕も父上達について彼女に語ったらいいかなぁ」
「いえ、、、彼女には逆効果かと」
「ザックと条件はだいたい同じだと思うのだけど?」
「団長の性格をお伝えしてしまえばむしろ親しみやすい、とより距離を縮めようと行動するかと。」
騎士団長はどちらかというと思考が市民寄りですし。狂戦士バーサーカーの時とか特に。

「、、、なるほど?」
「もしご家族について自慢なさりたいならノア様についてお話するのが良いかと。」
「エレノアを?、、、なぜかを聞いても?」
「はい、彼女にとってノア様は随分と予想外な人物だと思いますので。」
「予想外?、、、ナヴィは随分の彼女の思考や行動を理解してるね?」
「、、、見てますから、映魔道具ドローンで。」
そっと目を逸らしながら伝えました。実際はシナリオと照らし合わせてるだけなのでハッキリわかっている訳では無いですし。
「まぁ、今は目を瞑ってて置くね。とりあえず彼女を片付けてくるかな。ナヴィ、アドバイスありがとうね」
「いえ、ご武運を祈ってます。」

ユーリ様は研究室に入っていた時の疲れきった顔から一転、出ていく時には晴れやかな笑顔で退室していきました。

後日アイザック様同様キラキラとした目で妹のエレノア様について語るユーリ様と、大混乱して目を白黒させているヒロインを中庭のベンチで見かけました。上手くいっているみたいですね。良かった。


「ねぇ!女神聞いてる!?」
中庭の2人を眺めていると、隣に居たトルカ団長がふくれっ面になりながら目の前に回り込んできました。

「はい、聞いてますよ。よく頑張っておられるようで。」
「ふふん、僕ならこれくらい朝飯だよ!」

、、、ちょっとは労力必要って事ですかね。
それかただの間違いか。
トルカ団長ならおそらく後者ですけど。

ドヤ顔して褒めて欲しそうにこちらをチラチラと見るトルカ団長。年上には到底思えないです。可愛い弟感がすごい。
なんにせよ今はそれに構っている暇は無いのでさっさと学園長に挨拶して、ヒロインの調査をお願いします。

トルカ団長には私が個人的に依頼して、ヒロインが禁術である魅了を使っているかどうかの調査をして貰うつもりです。
上手くいけばレオンハルト様に魅了を使おうとしていた、で国家転覆を目論んだ凶悪犯として聖女の称号剥奪位は出来ると思うので。

ぬか喜びさせたくはないので、この話はトルカ団長以外の誰にも伝えてはいません。
触れることが発動のキーなのか、それともただ触れたいだけか。
それ以外にも、もしかしたら魅了を使う何かしらの動作、タイミングがあるはず。とは思いますが、如何せん見たことないので。魅了。

色々なゲームやお話の中で魅了は悪役側が持つもの、というイメージがありました。
、、、成程、女神の言っていた“王道”はこれですか。
王道とは少し外れている気もしますが、女神様がそういうなら間違いないですね。多分。
それに、私も彼女は1度痛い目でも見なければ反省も、その先の更正も難しいとは思っているので、何かしらは仕掛けようとはしてますし。

なんにせよ、行動に移せるのも魅了を彼女が使っていると判明してからですし、取り敢えずはトルカ団長に丸投げですね。
意気揚々と手を振りながら学園を探索しに行く団長と別れ、私は研究室に戻ります。
翻訳はもうネタが尽きてしまいまして。

かぼちゃの馬車のお姫様は王妃様に大好評でした。
でもそこから陛下にバレて怒られましたけど。
「残り、まだ作ろうとしてるのあるよね?怒らないから全部出してくれる?」
と、言われたので思いつく限りで作っておいた翻訳前の資料を陛下に献上しました。だいたい100冊ほどですね。やっぱりハ○ー・○ッターは長くなりました。でも満足のいく作品になりましたよ。パクリですけど。
そしてやっぱり怒られました。怒らないって、怒らないって言ってましたよね、、、?何故、、、?
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