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3章・ヒロイン大暴走

22話

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「え?逃げ出した?」
「あぁ、あの女、警備の男を籠絡して一緒に逃げおおせたそうだ」

母様と城にお邪魔した日から1週間後、レオン様に呼ばれまたお城にお邪魔してます。
ごきげんよう、ナヴィリアです。

「魔力回路、解放するのやめておけば良かったですか?」
「いや、魅了を使用したって証拠が必要だったからナヴィは悪くない」
「うん、悪いのは逃げたアイツと取り込まれた警備の男だからね」
「それに、逃げたとしてもあの女に逃げる所も隠れる所も無いはずだから」
そのうち目撃情報も出てくると思うよ。影の者も探させてるし。との事で。

はい、にげちゃったみたいです。ヒロイン。
まだ、1週間しか経っていないのに随分とゲッソリとしてしまったレオン様達は捜索にあちこち奔走しているらしく。
一応被害者家族であることと、何故か目の敵にされている、という事で私にも伝えておこうとなったそうです。

、、、ふむ、女神様の言うテンプレならばこれは恐らく私へ復讐がありそうですね。逆恨みですけど。

一応ロゼやセリウス、タウンハウスにいる人達は巻き込まれないように領地へ避難させて置いた方が良さそうですね。

「分かりました、ご連絡ありがとうございます。妹達はメイリ嬢が捕獲されるまで領地へ避難させておきます。」
「うん、そうしておいた方がいいかもね」
「ナヴィも油断するなよ、奴は最初の頃から何をしでかすかサッパリ分からん」
「肝に銘じておきます。」

という事で早速行動です。
タウンハウスに戻って事情説明をし、一度領地に戻って受け入れ態勢を整えてもらってから私の転移魔法でまとめて領地へ全員送り込みました。
領地で説明する際、段々と母様から黒いオーラが滲み出して来ていたので、ご愁傷さまです陛下。と思いながら説明を終えた私はタウンハウスへ移動しました。触らぬ神に祟りなし、です。はい。
後で巻き込まれは確定なんですけどね。誰か助けて頂けませんか。

、、、無理ですか、そうですよね。ではお墓だけでもよろしくお願いします。

万が一を考え、タウンハウスには私と筆頭執事のみが残りました。
最初は執事にも向こうに行くように促したのですが、腕振り回してまだまだ若造には負けませんよ!!とやる気満々だったのでそっとしておくことにしました。
父の傍でずっと戦ってた人なので命の危険は無いはずです。多分。

家事は2人がかりで行いましたが魔法を使えば一瞬で終わるので残りは相手からの復讐対策に時間を費やしてました。
魅了を使って軍勢を作って攻めてくるか、暗殺者を雇ってこっちによこしてくるか、はたまた攻略対象者を未だ諦めきれずまだ追いすがるか。
1番悪いのは禁書に封印されてる悪魔を解放してこちらに寄越すことですね。あれはダメです、国滅ぶので。
ほぼ全ての禁書は城に厳重に保管されてるので、手に入れることも、そもそもまともに学校で授業を受けていない彼女では扱う事も難しい筈です。
だからこれに関してはあのヒロインには無理だろうとタカをくくってます。
、、、、あれ、これフラグになってます?

毎日執事さんとあーだこーだと話しながら過ごして2週間程が経った頃、ヨボヨボで輪郭も定まっていない連絡鳥がタウンハウスに届きました。
魔力からしてヒロインですね。輪郭が定まっていないのは恐らく魔力不足です。なぜヨボヨボかは分かりません、疲れちゃったんですかね。鳥が。

伝言を聞こうと魔力を流すと随分と小さな声で
「貴方の妹は私がお預かり致しましたわ。返して欲しくばマスクリート領の教会までおいでませ。それまで貴方の妹を可愛がっていますわね。」
との事でした。、、、は?

どんどんと関わる度に彼女への嫌な感情が募って行きますけど、今回に関しては堪忍袋の緒が切れた、という表現がとても合う気がします。弟だけでなく妹まで手を出すとは。

「、、、アスタロンである私を舐めてるんですかね」
「同意です。お嬢様、馬は・・手配済みです。いつでもどうぞ」
「ありがとう。着替えて、、、いや、このまま行きます。」
そういえば最近変身魔法開発したんでした。
なので玄関に向かいながら魔法で馬に乗りやすい格好に着替え、執事にあちこちへの連絡を済ませるよう頼みました。
レオン様達には私から直接連絡鳥でマスクリート領に向かうことを伝えます。馬に乗りながら。

転移魔法が使えれば良かったんですが、生憎一度行ったことのある場所でなければイメージがつかず行く事が出来ないんですよね。
それが分かってる執事が直ぐに馬車でなく馬を手配した所も分かってますよね。さすがです。
、、、決してアスタロン家が「馬車なんてまどろっこしい!!馬で行くぞ!!」という脳筋家系だから私までそうだと思われたわけじゃないですよ。えぇ、決して。

という事で馬で駆けて丸2日かかりました。
本来なら1週間かかりますが馬に回復魔法と強化魔法かけまくって爆走させたら行けました。
人間本気だせば意外と何とかなるものですね。今回頑張ったの馬ですけど。ありがとう馬。
宿屋に併設されている厩舎に預けた時は凄く元気だったので虐待では無いですよ。無問題です。なので愛護団体に訴えないでくださいね。

マスクリート領は重課税に苦しんでいたにしては復旧は早かったらしく目の前の風景は随分と栄えているように見えました。
ヒロインの暴走に巻き込まれた形での領地統合だった為に、色々と不安でしたが皆元気そうに働いたり買い物したりと生活を楽しんでいるように感じて安心しました。実際に見に来るって大事ですね。ほんとに。

教会に行こうにも場所が分からないので、店員さんや買い物客の方に尋ねながら歩いていると
「おねーさん!!まってー!」
と後ろから追いかけてくる少年が。あ、転けた。

慌てて駆け寄り回復させるとニコニコと笑顔でありがとう!と言われました。いえいえ。何ともなさそうでよかった。
他に怪我がないか尋ね、大丈夫そうだったので立ち去ろうとしたら「あ!まって!本題!!」との事で。

少年はポケットを探り、1つのコロンとしたチョコレートを出してきました。
「これは?」
「怖いおばさんから預かってたの!指定されてた女の人に僕からのプレゼントって事にして渡してって。その容姿がお姉さんみたいな髪色や目の色と身長だったんだけど、おばさんはその人の顔を醜い顔だって言うから。」
ちがうかなーと思ったんだけど、そんな細かく指定された容姿はおねーさんくらいしか居なくて!
と、少年が説明してくれたのですが、醜いとは。
褒められた容姿では無いかもしれませんけど、人並みの顔ではあるのは自負してますからね。これでも。

というどうでもいい否定も虚しく、渡されました、チョコレート。
少年が去り際に「あ!そのチョコ食べない方がいいと思う!凄く悪い顔で“これであの女はいなくなる!!”って言ってたから!じゃーね!」と言って居なくなりました。最後に恐ろしい言葉残していきましたね。

興味があったのでチョコレートを鑑定してみた所『モウドク!!キケン!!タベルナ!!』と鑑定のメッセージ欄が随分と端的に、IQも低めでの記載でした。成程、おびき出して亡き者にしようと、、、?

更によく調べると随分と強力な睡眠薬だったみたいです。人に投与したら致死量で盛り込まれたチョコレートでした。なんてものを子供に持たせてるんですか。あの人。

ここにいても何も変わらないので、取り敢えず教会に向かう事にしました。
そしてお邪魔しまーすと中に入ると扉が勝手に閉まり、封印をかけられました。なるほど、、、?

周囲は何人かの魔力反応がありますが、どれもそこまで強くないようで、私が咄嗟に張った結界を破ろうと必死になって取り掛かってますね。
ならばこちらは放置して、封印の方をどうにかしましょうか。と思いましたが、徹底的にヒロインをやり込む為に、ここは策にハマったフリをして目的を吐かせる方にシフトチェンジします。
結界をわざと夜に壊れるように設定し、封印は放置して、あとは待機です。
そして夜になったので、あのチョコレートを食べて眠りについたフリをしながら襲撃者が近づいてくるのを待ちます。ついでに周囲に自白魔法掛けておきましょうか。

「こいつが女神で間違いないか?」
「えぇ!この女が悪役令嬢で間違いありませんわ!」
「そうか、なら連れてくぞ。おい、目的は果たされた。撤退だ。」
「お待ちなさい!この女は睡眠薬で眠っているのでしょう?ならば私がお仕置をしても問題ないはずですわ」
「、、、5分だ。それ以上は待たない。」
「5分だなんて、、、いえ構いませんわ。」

という会話をした後、ヒロインのみがこちらに近寄ってきました。
あの睡眠薬ってちゃんと眠らせる為に作ったんですね。いえさすがの私でもあの量の睡眠薬は死にますけど。私をなんだと思ってるんでしょうか、化け物でもあるまいし。

「悪役令嬢、、、あなたのせいで私は全ての攻略対象者のルートをクリア出来なかった!!貴方のせいで!!小説の通りに行かなかったっ!!貴方が大人しく悪役令嬢のままでいたならば私はここまで落ちることは無かった!!あなたのせいで!!」
と、怒りの感情むき出しで叫びながら眠ったフリをしている私をげしげしと蹴ってきます。防御MAXのバリア張ってるので痛みは問題ないですよ。
ただ、ヒロインの言い分はどう考えても自業自得では、、、?と内心首を捻りながら寝たフリを続けます。
「なんで!!ロヴルまであんな、あんな、、、!」
いつの間にロヴル様まで接触したんでしょうか。彼にも、もしかしたら火の粉がかかるかもしれないと隣国へ一時帰国しているはずです。
それにしても自白魔法上手く効いてますね、ヒロインの情報提供が多めです。

「絶対、絶対、隣国へ私を迎える為に来たと思っていましたのに、、、!!」

迎えに来た、という事はヒロインが護送されてる途中に鉢合わせた?もしくは直接会いに行った、、、?
どちらにせよこちらは確認しないとですね、下手したら御国問題になりますし。


その後も先程の男に声をかけられるまでずっと蹴られていました。いえノーダメージですけど。
「おい、時間だ」
「、、、私は貴方を絶対に許しませんわ。えぇ絶対に。」
「おい」
「分かっていますわ。先に戻っています。」
「おい、この女を運べ」
はい、ドナドナされますよー

運ばれながらも目印の魔力を撒き散らしながら来ているので応援が来たらこれを頼りに来れるかなと思います。はい。応援が来るかは分かりませんけど。

ついでに指示を出していた男にもマークをつけておいて後で追いかけられるようにしておいたので、本当なら私ドナドナされる必要ないんですよね。

でも折角ならされてみようかと。理由はひとつです。
そう、スパイをやってみたかったんですよ。

、、、捕虜なのでスパイじゃないって文句は受け付けますよ。はい。大切なのは気分ですから。本人がスパイってワクワクドキドキしてたらそれはもうスパイなんです。多分。

そんなこんなでドナドナされて、何だか大きめの城に運び込まれました。
これはロヴル様の国とはまた別の隣国との国境にある防衛の為の城、、、いえ要塞です。
1度スタンピートの予兆があるとの事で訪れたことがありまして。
ここを守っている一族の初代さんは女性で、結構なロマンチストさんだったらしく、要塞の見た目はピー○城です。はい。ステンドグラスが綺麗ですねー。

そんなお洒落な城の裏側にある塔に運び込まれ、上からだいぶ雑に投げ込まれました。安らかに眠るレディになんて事を。
投げ込まれた先は牢屋だったらしく、周囲には堀があり下は水で満たされてます。
少しして牢屋が動き少し浮かされました。

はい、あっという間に鳥籠の完成です。拍手。
これ鳥籠型の牢屋だったんですね。
下から水がせり上がってきて、頭ひとつ分くらいの隙間を空けて止まりました。なんだろうと水の中を覗き込めば水中に住む魔獣、、、魚なので魔魚?が優雅に泳いでました。
なるほど、これで私を隔離&捕獲したと思ったんですかね。
「やっぱり舐められてますね」
はい、という事で遠くからレオン様の魔力も感知したので連絡鳥でその辺で待機して欲しいと伝えます。

さー暴れるぞー
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