愛を知らない私と僕

こむぎ

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16(悠斗視点)

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、、、キーンコーンカーンコーン、、、

「おはよう」
そう言って周りの子に片っ端から挨拶をしながら席につく。
すると周りに大勢のクラスメイトが集まり話し始める。
嘘の笑顔を張りつけながら始業のチャイムが鳴るまでクラスメイトに対応していく。
チャイムが鳴れば授業をして、休み時間にまた対応。
学校ではその繰り返し。
昼休みは夢ちゃん達といるから、少しは気が楽だけれど。

「、、ら、、、ん、、、むらくん、、、鷹村君!」
「、、、っ!?」
そんなことをぼーっと考えていたからか話し掛けられていたのに気づかなかった。
「、、、ごめんね?彼氏の話だっけ?」
「もう!そうだよー!ちゃんと聞いてよー?」
と口を尖らせて怒る女の子をみて。
前までは「こういう仕草ってかわいいなー」とか思ってたのに。
今では鳴瀬さんの事しか考えられない。
鳴瀬さんがこんなことしたら可愛いのかなとか、今は仕事中なのかな、とか。
、、、ずっと彼女が中心になってしまっている。
これが恋、、、なのかな。
恋ってしたことないからな、、、分からない。
透と真子ちゃんカップルに聞いてみようかな?
あれ?言ったこと無かったっけ?
、、、今言いました!はい。
、、、え?これもデジャヴ?気のせいじゃない?



「ということで、アドバイスください」
「、、、随分と唐突ね」
「俺らで頼りになるのかな、、、?」
「いやいや、、、むしろ参考にさせてってレベルだから」

そう、彼らは3年も付き合ってるカップルで未だに仲が良くて見てるこっちが微笑ましいくらい。

「うーん、、、そうだなぁ」
透は何か考え込んでしまい戻ってこない。
すると真子が口を開いた。
「、、、そもそも何が聞きたいの?」
「うーんとね、、、恋ってどんな気持ちになる?」
「、、、は?」
質問したらキョトンとされた。うーん解せぬ。
「意外だったわ。あんたにもそんな悩みあるのね。」
モテモテだからそんな悩みないと思ってたわ。
なんて言われました。そう見えるんですか。
「そうかー恋って何かかー難しいなー」
透がやっと戻ってきたと思ったらまた思考の海に潜っていった。
透さーん、戻ってきてー(棒)

「、、、好きって気づいたらずっとその人しか考えられなくなるわね。
あとは、行動全てがその人と繋がるかしら
、、、例えば家で勉強してて、ふとした時に何してるのかなって気になったり、クラスの男子がうるさい時に、あの人だったらこうするのにって考えたりとか、、、かしら?」
「、、、なるほど」
当たりすぎて怖いぐらいに的確な答えだった。
「考えてる時ってふわふわするんだよねー嫌なことがあっても忘れられるしー」
思考の海から戻って来た透も真子の言葉に付足す。
、、、思い当たることが多すぎて恥ずかしくなるな。

「あとは、他の女の人といたらイラッとするわね」
と、真子ちゃんが黒い笑顔で透を見ていた。
、、、あ、透の目すっごい泳いでる。何したの。

そんなこんなで恋とはなにか伝授してもらって一日を終えた。

そしてその日の夜、鳴瀬さんからメールが来た。
『今週の金曜日の夜開けたので家で話、聞かせてください。』
と、一言。

、、、それだけの文でも嬉しくなる。
、、、あれ?これじゃ俺変態になってない、、、?

さらに聞けば夕飯を作ってくれるとのこと。
嬉しすぎじゃないですか?その後なら死んでもいいかもとか思っちゃうぐらい。

その後の憂鬱な学校も金曜の夜に鳴瀬さんと会えると思うと乗り越えられた。
、、、時間が長く感じたけれどね。うん、凄く。

そして迎えた金曜日。
インターホンを鳴らせば鳴瀬さんの声が。
玄関に通してもらえばいい匂いが鼻をくすぐる。
リビングに行ってみればどこぞのレストラン並みの料理がずらりと並んでいた。
、、、調理実習とかで優希ちゃんが料理得意なのは知ってたけど、鳴瀬さんまで上手いとは。

思わず固まった俺に不安になったのか。
「、、、私気合い入れすぎた、、、?」
と不安げな顔で覗きこまれた。
うん。今日も絶好調で可愛い。

そんなことないと言って鳴瀬さんを宥めてから、お互いに席についてご飯を食べた。
あまりの美味さに感動しながら完食をし鳴瀬さんお手製のカフェオレをもらってホッと一息をついていた。

そして俺は話した。
産まれてから、鳴瀬さんに会う前の人生を。

彼女は何も言わずただただ俺の言葉に耳を傾け、手を握ってくれていた。

そして俺が話し終わると「そっか、、、お疲れ様、よく頑張ったんだね」と一言。
その一言の言葉が凄く嬉しかった。

母親のことを悪く言われたいわけじゃないし、なんなら自分が産まれてきてしまったこともいいこととは思ってないから。

だからただ労って、褒めてもらえて。
それだけで十分、むしろそれが凄く嬉しかった。

そしてやっぱり泣いてしまった。
でも、不思議と恥ずかしくもなくて。
鳴瀬さんは背中をさすってくれて。
ずっと、凄い、凄いね。偉いね。って言ってくれた。

そしてしばらくしてから涙もおさまって気持ちも落ち着いて。
鳴瀬さんは「話してくれてありがとう」って微笑んでた。
その後に「素直になれる事って簡単なようですっごく難しいんだよ。素直に泣けて、話せて感情を真っ直ぐに伝えられるなんて凄いんだよ」って言ってくれた。
それを聞いただけでものすごい報われた気がして、話してよかったって思えたし、何より

「生きてて良かった」

、、、そう心から思えた。
会う前までは辛くて苦しくて、死にたいけれどそんな勇気もなく、心も冷めきってた崖っぷちの俺が彼女に会ってこうも心が動くなんて、夢にも思わなかった、、、しかも救われてるし。
生きててよかったって生まれて初めて思えた。
隠してたことが馬鹿みたいに思えてきたな、、、

そして俺は優希ちゃんが言ってた『1番にはなれない』と言っていた理由は聞けなかった。
「愛情を注いでもらえなかった」と言った時の彼女の顔が苦しそうに歪んだのを見て、どうしても聞いてはいけない気がしたからやめた。
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