愛を知らない私と僕

こむぎ

文字の大きさ
24 / 25

23

しおりを挟む
「、る、、るせ、、、鳴瀬、起きて」
「うぅ、、、ん、、、ん?」
「あぁ、やっと起きた」

ふわふわと眠り続けていた鳴瀬は誰かにゆり起こされ目を覚ます。
一体誰なのかと、人物を見れば
、、、亡くなったはずの兄、星哉が居た。

「私、、、死んだ?」
「ふふっ、死んだってっ、、、ここは死後の世界じゃないから安心して」
「じゃあなんでお兄ちゃんが、、、?」
「うーん、、、鳴瀬の意識世界?」

何だかまたファンタジーになってるよ、、、?

「どうして、ここに来たの?」
「鳴瀬が、苦しそうだったのと、伝えたいことがあったからだよ」
「伝えたいこと、、、?」
首を傾げれば先程までの笑顔はなくなり真剣な顔で星哉は口を開いた。

「、、、あの時は先に死んでしまってごめんね。、、、母さんが僕達の目の前で麻薬を取りこぼしてね、証拠隠滅だとか言って包丁を持ち出されたものだから、、、」
「、、、ううん、、、お腹、痛くなかった、、、?」
「、、、凄く痛かったけど、今はもう平気だよ。」
「、、、そっか。」
「、、、ずっと謝りたかったんだ。優希は気付いていなかったけれど、鳴瀬はうっすら勘づいていたんだろう?、、、色んなことに。」
「、、、うん、後になって色々調べたら発覚したよ、お兄ちゃんが言いたいこと。」
「、、、やっぱり賢いね、鳴瀬は。」
「、、、お兄ちゃんに言われても、あんまり説得力がないよ。」
「ふふっ、そうかぁ~」
「、、、父さんは元気?」
「うん、元気すぎてうるさいくらい!」
「そっか、、、2人が元気に過ごしてるのなら私は許されてもいいのかな、、、」
「それを伝えたかったんだよ、鳴瀬」
「許す許さないってこと?」
「うん、鳴瀬は縛られすぎてたからね、、、もう何も君を無理に縛るものは無いよ、、、自由に、幸せにに生きるといい。」
「自由、、、うーん、あんまり実感が湧かないなぁ」
「ははっ、今はそうかもね~でも目を覚ましたら嫌でも分かるよ、きっと。」
「?そういう物なのね」
「うん、そういうもの、、、じゃあ僕は帰るから、鳴瀬も早く目を覚ましなよ~」
「あ、うん、、、バイバイ、お兄ちゃん」
「うん、次会うのは、、、そうだな、、、100年後ぐらいにしようか!」
「えぇっ!?そんなに長生きする予定ないよ!?ちょっとお兄ちゃん!?」

星哉が最後にとんでもない一言を投下したと思ったら白く周りが霞んで何も見えなくなった。

そして目を開ければ見慣れない風景が目に飛び込んできた。
しばらくぼーっとしてると、ふと右手に温もりを感じて視線を動かせば悠斗が右手を握ったまま眠ってしまっていた。

うん、鷹村君が可愛い。
中村さんいわく、好きって思うとなんでも“いいな”って思う、、、って本当だったんだね~

「、、、鷹村君、鷹村君」
「う、、、なるせ、、、さん、、、鳴瀬さんっ!?」
寝顔をしばし堪能したあと現状確認の為、眠っていた鷹村君を揺り起こしてみる。
すると彼は寝ぼけていたものの鳴瀬の声を聞いて覚醒したらしい、飛び起きてこちらを見ている。
「うん、おはよう」
と笑顔で返せば、涙を浮かべながらも
「おはようございます」と返してくれた。

その後に医者も来て健康チェックを済ませたあと、夢たちにも連絡をしてくれた。
夢たちはのちのち来るらしい。

「あのね鷹村君。」
「はい、なんですか?」
「、、、私の過去を聞いてくれるかな?」
「、、、俺なんかでいいなら、ぜひ。」
鷹村君は少し目を見開いたあと少し嬉しそうに細め頷いてくれた。

「少し長くなるけれど、平気?」
「えぇ、どんなに長くても全て聞かせてください。」
「ありがとう、、、じゃあ、、、」

、、、鳴瀬の過去、それは、孤児院に入る前のこと。
もともとの苗字は“蘭道”という。
そして鳴瀬、優希には兄がいた。星哉という兄が。
星哉は強くて優しくて、いつでも鳴瀬達のヒーローだった。
、、、それでも彼は親と折り合いが悪かった。
元々彼は母親が他所で作った子供だったのだ。
そのため父親は彼を嫌い、母とも仲が悪かった。
それなのに何故鳴瀬達が生まれたのか?
、、、鳴瀬達も父がよそで作った子だったのだ。
だから鳴瀬達は母に嫌われていた。
そのため子供たちだけが仲が良い家族。
そしてこれらの事を星哉は知っていて、双子は知らなかった。
そして事件は突然起きた。

母親が麻薬に手を出していたのだ。
幻覚を見出し、発狂し、自身の子供でない双子に暴力を振るうようになっていった。

そしてある日、双子が家に帰ると。
血まみれになったリビングに父と兄が倒れていた。
そして1人包丁を持って佇む母。
鳴瀬は母と対峙し、優希は隣人と警察に連絡。
しかし母は優希が出ていった後すぐに自殺した。
「警察なんてごめんだ」といって。
そして鳴瀬に一言。「お前やあいつは私の子じゃない。穢れたクソガキめ」と。
そして事件が終わったあとでも鳴瀬はその光景が忘れられなかった。悪夢としてその光景がいつまでも付きまとっていた。
結果父も兄も母も亡くなり残った2人は孤児院に引き取られることになった。
、、、そしてあの養母にあうのだ。

「、、、この後はきっと優希からでも聞いたでしょう?、、、これが私の過去。」
「、、、グスッ、、、うぅ、、、」

話し終わって、鷹村君の方を見たら。
わぁ、大泣きしてる。

「、、、ごめんね、泣かせるつもりはなかったんだけれど、、、」とティッシュを差し出す。
ありがとうと言って鷹村君は鼻をかむ。

「、、、それでね、鷹村君」
「、、、?はい、なんですか?」
「、、、こんなに暗くて醜い過去を持つ私でも良ければ、結婚を前提にお付き合いしてください。」

真っ直ぐに彼を見つめてそう伝えれば
「、、、!!っ鳴瀬さん!!」
よっぽど嬉しかったのか、満面の笑みで私に抱きついてきた。
「わぁっ!!鷹村君!?」

驚くもつかの間、鷹村君は
「あなたを醜いなんて一度も思いません!これまでも、これからも!!
俺は、鳴瀬さんだから好きになったんですよ。
あなたのことだけを一生愛し続けてみせますよ。」
と、笑顔で答えてくれた。

その後すぐに夢たちもやって来た。
優希と夢は私と目が合うと大号泣して駆け寄ってきた。
、、、え?優希が駆け寄ってきた?
あれ?私嫌われてない、、、?

そして後になって鷹村君が「あの人養母が素直に警察に連れていかれたのって優希ちゃんがあの人に向けて絶縁宣言したせいでショックで気を失ったからなんですよ」とおかしそうに教えてくれた。

優希は今までずっと疑問に思っていた、私に対する態度を問い詰め、養母の自分勝手な理由でそんな態度をとっていたのだと知ると大激怒して、絶縁宣言をしたそうだ。

優希があの人には向かうなんて、、、

と、驚いて優希の方を見ればちょうど優希と目が合った。
「、、、優希」
「、、、なに」
「、、、一緒にご飯作って食べようよ。、、、昔みたいに。」
「、、、!っうん!!作る!」
目が合った時は気まずそうにソワソワしていたものの、私の提案に一瞬驚いて、でもすぐに凄く嬉しそうな笑顔になってコクコクと頷いてくれる。
、、、昔に戻ったみたい。すっごく、嬉しいな。

「良かった、、、嫌われてたらどうしようかと思った。」
「、、、?私が鳴を嫌うわけないでしょ?」
「、、、え?だってずっと避けられてたから、、、」
「それは!鳴に全然会えないし、やっと会えたと思ったら疲れ果てて今にも倒れそうになってたからで、、、鳴になんて話しかければいいのか分かんなくって、恥ずかしくって、、、」
と、もごもごと優希が伝えてくる。

「私、優希と目が会う度にすごい勢いで逸らされるからそんなに嫌われちゃってたんだなぁって思ってた、、、」

「「、、、っふはっ!!」」
2人で顔を見合わせお互いが勘違いしてたことに気づくと揃って吹き出して、笑い始めた。

2ヶ月もしんと静まり返っていた病室は一転、明るく、賑やかになり、看護師さんがたしなめに来るほどだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...