愛を知らない私と僕

こむぎ

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「、る、、るせ、、、鳴瀬、起きて」
「うぅ、、、ん、、、ん?」
「あぁ、やっと起きた」

ふわふわと眠り続けていた鳴瀬は誰かにゆり起こされ目を覚ます。
一体誰なのかと、人物を見れば
、、、亡くなったはずの兄、星哉が居た。

「私、、、死んだ?」
「ふふっ、死んだってっ、、、ここは死後の世界じゃないから安心して」
「じゃあなんでお兄ちゃんが、、、?」
「うーん、、、鳴瀬の意識世界?」

何だかまたファンタジーになってるよ、、、?

「どうして、ここに来たの?」
「鳴瀬が、苦しそうだったのと、伝えたいことがあったからだよ」
「伝えたいこと、、、?」
首を傾げれば先程までの笑顔はなくなり真剣な顔で星哉は口を開いた。

「、、、あの時は先に死んでしまってごめんね。、、、母さんが僕達の目の前で麻薬を取りこぼしてね、証拠隠滅だとか言って包丁を持ち出されたものだから、、、」
「、、、ううん、、、お腹、痛くなかった、、、?」
「、、、凄く痛かったけど、今はもう平気だよ。」
「、、、そっか。」
「、、、ずっと謝りたかったんだ。優希は気付いていなかったけれど、鳴瀬はうっすら勘づいていたんだろう?、、、色んなことに。」
「、、、うん、後になって色々調べたら発覚したよ、お兄ちゃんが言いたいこと。」
「、、、やっぱり賢いね、鳴瀬は。」
「、、、お兄ちゃんに言われても、あんまり説得力がないよ。」
「ふふっ、そうかぁ~」
「、、、父さんは元気?」
「うん、元気すぎてうるさいくらい!」
「そっか、、、2人が元気に過ごしてるのなら私は許されてもいいのかな、、、」
「それを伝えたかったんだよ、鳴瀬」
「許す許さないってこと?」
「うん、鳴瀬は縛られすぎてたからね、、、もう何も君を無理に縛るものは無いよ、、、自由に、幸せにに生きるといい。」
「自由、、、うーん、あんまり実感が湧かないなぁ」
「ははっ、今はそうかもね~でも目を覚ましたら嫌でも分かるよ、きっと。」
「?そういう物なのね」
「うん、そういうもの、、、じゃあ僕は帰るから、鳴瀬も早く目を覚ましなよ~」
「あ、うん、、、バイバイ、お兄ちゃん」
「うん、次会うのは、、、そうだな、、、100年後ぐらいにしようか!」
「えぇっ!?そんなに長生きする予定ないよ!?ちょっとお兄ちゃん!?」

星哉が最後にとんでもない一言を投下したと思ったら白く周りが霞んで何も見えなくなった。

そして目を開ければ見慣れない風景が目に飛び込んできた。
しばらくぼーっとしてると、ふと右手に温もりを感じて視線を動かせば悠斗が右手を握ったまま眠ってしまっていた。

うん、鷹村君が可愛い。
中村さんいわく、好きって思うとなんでも“いいな”って思う、、、って本当だったんだね~

「、、、鷹村君、鷹村君」
「う、、、なるせ、、、さん、、、鳴瀬さんっ!?」
寝顔をしばし堪能したあと現状確認の為、眠っていた鷹村君を揺り起こしてみる。
すると彼は寝ぼけていたものの鳴瀬の声を聞いて覚醒したらしい、飛び起きてこちらを見ている。
「うん、おはよう」
と笑顔で返せば、涙を浮かべながらも
「おはようございます」と返してくれた。

その後に医者も来て健康チェックを済ませたあと、夢たちにも連絡をしてくれた。
夢たちはのちのち来るらしい。

「あのね鷹村君。」
「はい、なんですか?」
「、、、私の過去を聞いてくれるかな?」
「、、、俺なんかでいいなら、ぜひ。」
鷹村君は少し目を見開いたあと少し嬉しそうに細め頷いてくれた。

「少し長くなるけれど、平気?」
「えぇ、どんなに長くても全て聞かせてください。」
「ありがとう、、、じゃあ、、、」

、、、鳴瀬の過去、それは、孤児院に入る前のこと。
もともとの苗字は“蘭道”という。
そして鳴瀬、優希には兄がいた。星哉という兄が。
星哉は強くて優しくて、いつでも鳴瀬達のヒーローだった。
、、、それでも彼は親と折り合いが悪かった。
元々彼は母親が他所で作った子供だったのだ。
そのため父親は彼を嫌い、母とも仲が悪かった。
それなのに何故鳴瀬達が生まれたのか?
、、、鳴瀬達も父がよそで作った子だったのだ。
だから鳴瀬達は母に嫌われていた。
そのため子供たちだけが仲が良い家族。
そしてこれらの事を星哉は知っていて、双子は知らなかった。
そして事件は突然起きた。

母親が麻薬に手を出していたのだ。
幻覚を見出し、発狂し、自身の子供でない双子に暴力を振るうようになっていった。

そしてある日、双子が家に帰ると。
血まみれになったリビングに父と兄が倒れていた。
そして1人包丁を持って佇む母。
鳴瀬は母と対峙し、優希は隣人と警察に連絡。
しかし母は優希が出ていった後すぐに自殺した。
「警察なんてごめんだ」といって。
そして鳴瀬に一言。「お前やあいつは私の子じゃない。穢れたクソガキめ」と。
そして事件が終わったあとでも鳴瀬はその光景が忘れられなかった。悪夢としてその光景がいつまでも付きまとっていた。
結果父も兄も母も亡くなり残った2人は孤児院に引き取られることになった。
、、、そしてあの養母にあうのだ。

「、、、この後はきっと優希からでも聞いたでしょう?、、、これが私の過去。」
「、、、グスッ、、、うぅ、、、」

話し終わって、鷹村君の方を見たら。
わぁ、大泣きしてる。

「、、、ごめんね、泣かせるつもりはなかったんだけれど、、、」とティッシュを差し出す。
ありがとうと言って鷹村君は鼻をかむ。

「、、、それでね、鷹村君」
「、、、?はい、なんですか?」
「、、、こんなに暗くて醜い過去を持つ私でも良ければ、結婚を前提にお付き合いしてください。」

真っ直ぐに彼を見つめてそう伝えれば
「、、、!!っ鳴瀬さん!!」
よっぽど嬉しかったのか、満面の笑みで私に抱きついてきた。
「わぁっ!!鷹村君!?」

驚くもつかの間、鷹村君は
「あなたを醜いなんて一度も思いません!これまでも、これからも!!
俺は、鳴瀬さんだから好きになったんですよ。
あなたのことだけを一生愛し続けてみせますよ。」
と、笑顔で答えてくれた。

その後すぐに夢たちもやって来た。
優希と夢は私と目が合うと大号泣して駆け寄ってきた。
、、、え?優希が駆け寄ってきた?
あれ?私嫌われてない、、、?

そして後になって鷹村君が「あの人養母が素直に警察に連れていかれたのって優希ちゃんがあの人に向けて絶縁宣言したせいでショックで気を失ったからなんですよ」とおかしそうに教えてくれた。

優希は今までずっと疑問に思っていた、私に対する態度を問い詰め、養母の自分勝手な理由でそんな態度をとっていたのだと知ると大激怒して、絶縁宣言をしたそうだ。

優希があの人には向かうなんて、、、

と、驚いて優希の方を見ればちょうど優希と目が合った。
「、、、優希」
「、、、なに」
「、、、一緒にご飯作って食べようよ。、、、昔みたいに。」
「、、、!っうん!!作る!」
目が合った時は気まずそうにソワソワしていたものの、私の提案に一瞬驚いて、でもすぐに凄く嬉しそうな笑顔になってコクコクと頷いてくれる。
、、、昔に戻ったみたい。すっごく、嬉しいな。

「良かった、、、嫌われてたらどうしようかと思った。」
「、、、?私が鳴を嫌うわけないでしょ?」
「、、、え?だってずっと避けられてたから、、、」
「それは!鳴に全然会えないし、やっと会えたと思ったら疲れ果てて今にも倒れそうになってたからで、、、鳴になんて話しかければいいのか分かんなくって、恥ずかしくって、、、」
と、もごもごと優希が伝えてくる。

「私、優希と目が会う度にすごい勢いで逸らされるからそんなに嫌われちゃってたんだなぁって思ってた、、、」

「「、、、っふはっ!!」」
2人で顔を見合わせお互いが勘違いしてたことに気づくと揃って吹き出して、笑い始めた。

2ヶ月もしんと静まり返っていた病室は一転、明るく、賑やかになり、看護師さんがたしなめに来るほどだった。
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