『二十六時のアオイヒカリ』

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二十六時のアオイヒカリ

第二十一章 兄弟焦点距離

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 お盆明け八月中旬。照人は一時帰省した兄と、かつて秘密基地と呼んだ資材ヤードへ向かった。兄弟は同じタイムラインを走りながら、互いが被写界深度外へ滲み始めていた。今日はその距離を測り直す小さな旅だ。  

◆ 焦点距離とは時間の距離  

 実験レンズ〈Brother-Range105〉は左右ライブビューで現実像と脳内像を映す。重なった時の数値“BDI”が兄弟距離指数だ。  

◆ テスト1 過去ピント・BDI230  

 望遠端。兄の現像像と木登り少年の残像が重ならず粒子荒れ。  

◆ テスト2 現在ピント・BDI165  

 中望遠。錆びたレールと兄の掌紋が合焦、青光ノイズ少。  

◆ テスト3 未来ピント・BDI95  

 広角端。未来講堂の兄と草払い中の兄が情報過多。白札に〈解像度オーバー〇・〇七〉。  

◆ 妥協フォーカス・BDI135  

 自動補正で過去と未来を〇・三ぼかし。ネガに三世代像を滑らか定着。白札〈兄弟焦点距離最適化〉。  

◆ 未来指数+1.8  

 新規プロジェクト期待値表示。兄は二人展「焦点距離」を提案。  

◆ 稲光ショット・BDI100  

 雷光が距離をゼロへ縮め、銀粒子が兄弟シルエットを同像に閉じ込める。白札〈レベルA〉。  

 夏夜、資材ヤードの仮設テントでレール片を選びながら、兄弟は百ミリの焦点距離を未来へ固定した。被写界深度は浅くも深くも自在。列車のホイッスルが涼風を運び、二人のピントは同じページで静かに合った。了
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