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第4部 帝都地下神殿篇
4 笑った顔が見たい
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ヒューゴから連絡があったのはそれから10日ほど経ってからだった。彼に懐いているファミリアのジーとルーにそのことを伝えると、2体は飛び跳ねて喜んだ。
「ヒューゴが来るなら、風に頼んでお肉買ってきてもらおうよ!」
「うんうん!」
「あ、でも、この前マーケットあったばっかりだよね。どうしよう」
「ルブラに行けば、ミシュさんのお肉屋さんがあるんだよ。風が言ってた」
「じゃあ、頼んでみよう!」
「うんうん!」
2体は転がるように部屋を出ていった。
「ほんと、好きだよね」
〈どうしてヒューゴがそんなに好きなのか訊いたら、友だちみたいに接してくれるからなんだって〉
「彼は確かに、種の違いとか気にしなさそうな雰囲気があるね」
〈大らかなんだよね〉
「良くも悪くもね」
バルクは笑って肩をすくめた。
***
肉屋の主人はめずらしくわざわざやってきた女性にすぐ気づいた。
「やあ、ソアさん。わざわざ来てくれるなんてめずらしい」
「ええ。ちょっと、お客が来ることになったの。それで、うちの子たちがミシュさんちのお肉を買ってこいってうるさくて」
風の扮する「ソアさん」は人懐こい笑みを浮かべる。
「そりゃ嬉しいね。何にする?」
「何か、いいのあるかしら。来るの若い男の子だから、ガッツリ豪快に焼こうかしら」
実際に調理するのはシェフなのだが。
「ああ、それならステーキにちょうどいいのが入ってるよ」
「それ、いただくわ。そういえばミシュさんは?」
「寺院に行ってるよ」
「寺院に? 大丈夫なの?」
ミシュは前に魔物に襲われて重傷を負い、寺院に担ぎ込まれて一命を取り留めたことがある。また事故にでも遭ったのかと心配する。
「いやいや、ミシュが診てもらってるわけじゃなくてね」
主人は塊から肉を切り出しながら言う。
「前にミシュが怪我した時にお世話になった僧侶様が、何やら呪われた女の子を治療のために連れて帰ってきたらしくてね。それでまあ、治療はともかく、ルブラの寺院は男所帯でしょ? どうしても女手は必要だからって」
「ミシュさんらしいわね」
風は肉を受け取って支払いをする。
「ミシュに用があったんなら、寺院に行ってみるといいよ。まだいると思うよ」
「いえ、特に用があったわけじゃないし、邪魔になるといけないからやめとくわ。ミシュさんによろしくね」
「ああ、伝えとくよ。ありがとうね」
「じゃ、次のマーケットでね」
「ソアさん」から鎧の姿になった風が塔に戻ると、2体のファミリアが転がり出てきた。
「風、ちょうどよかった。さっきヒューゴから連絡があって、ヒューゴ、夕方に来るんだって!」
ジーが跳びはねながら言う。
「うんうん!」
ルーも跳びはねている。
「あら、じゃ、ちょうど良かったわね。シェフにお肉渡してくるわ」
***
廃坑での喧騒は遠くに過ぎ去って、ルブラの町は静かだった。午前中、ミシュが来ている時間に数人の患者があったが、そのあとは誰の来院もなく、診療所は静かだった。セストは、治療に使う硬いベッドに腰掛けているナナカの隣に座る。
「ナナカ、今日、来客があるんだよ」
ナナカはなんの反応も返さない。ミシュもファム同様「反応はなくても、きっと聞こえているはずだから、話しかけ続けた方がいいと思うわ」と言うので、セストはそのとおりにこうして暇を見てはナナカに話しかけていた。内容は、所長やシシェンはどうしているだろうかという世間話だったり、帝都での出来事だったり、話すことが思いつかない時は教義の内容だったりした。
「前に話した、ヒューゴが来るんだ。俺が頼んだから、忙しいのに都合をつけてくれたんだと思う。きみを救うきっかけが見つかればいいんだけど」
セストは人差し指の背でナナカの頬を撫でる。ナナカの目は曖昧に床に向けられたままで、セストの方を見もしない。
セストはおそるおそる、ナナカのこめかみの髪を指先で掬って耳にかけた。ナナカはなんの反応も返さない。
――ねえ、セスト。あたし今、すっごく楽しい。すっごく幸せ。
古都の収穫祭で、笑いながら泣いていたナナカの顔が重なる。セストは、良くないと思いながらナナカの身体を抱き寄せた。
(きみは俺に、救ってくれてありがとうと言ってくれた。なのに、こんなことになって……)
「会いたい、ナナカ。笑った顔が見たい。……俺は無力だ。そして馬鹿だ」
きみはどこにいるんだろう、とセストはナナカの肩口に額をつけたまま思う。身体という意味でなら、もちろん目の前に。セストの腕の中に。しかし、今の彼女は抜け殻だった。廃坑の前でセストを引き留めた切羽詰まった顔が、収穫祭で子どものように跳びはねて踊っていた楽しそうな顔が、薄暗い洞窟の中で周囲の気配を探っている真剣な顔が、髪飾りをつけた時の驚いた顔が、脳裏に浮かんでくる。その顔を思い浮かべながら、今のナナカの意思が感じられない表情を見るのは辛かった。
「今気づいた。俺は、ずっときみのことばかり見てたんだ……。なんですぐにバレるんだろうと不思議だったけど、当然だよな」
そう、収穫祭の日、髪飾りの屋台の女性が選んでくれた花の花言葉は「あなたを見つめている」だった。
「ナナカ、必ず見つけるから、挫けずに待っててほしい。話したいことがたくさんあるんだ。俺は、きみの笑った顔が見たい。……きみのことが好きだ」
こうしていると、自分の身の内にあるものを意識せずにはおれない。これ以上はいけない、とセストは引き裂かれるような思いで、ナナカの、柔らかく無抵抗な身体に回していた腕を解いた。やはりナナカはなんの反応も返さなかった。今のナナカはセストを拒絶してもいないが、受け入れてもいない。ナナカの意志を無視して自分の気持ちを押しつけるような真似はしたくなかった。それでは「彼」と同じになってしまう。挑みかかるようにこちらを睨めつけていた、あの、紫の瞳。
(闇の来訪者……)
人の世に接する、こことは違った世界。全てが調和した世界。喜びも、悲しみもそこでは同じものだ。今なら、光の世界の力を引き出すことができると感じる。人が使える上限を遥かに超えた力。おそらく、彼も。
(光と闇の和合とは、一体何のことなんだろう。そこに、均衡の魂と混沌は、どう関わってくるんだろう)
考えても答えは出なかった。
「彼はきみに、何か言ってた? 何て言ってた?」
ナナカは答えない。
「……彼のことをきみに訊くのは、残酷だな。ごめん。話したくなければ、何も話さなくていいんだ。俺はきみを愛してて、きみも俺のことを愛してるって言ってくれた。俺にとって重要なのは、そのことだけなんだ。完全均衡の魂の持ち主であるきみの元に彼が現れて、きみが彼に救いを見いだしたのは、当然のことだと思う。誰だって、ひとりぼっちで生きていけるほど強くはないから。むしろ、俺が不意に現れたりしなければ、きみは、きみと彼の閉じた世界で幸せでいられたのかもしれないと思う時もある」
これは違う、と苦し気に、悲し気にナナカは泣いていた。
「違うと思う必要はないんだ。違ってなくていいんだ。そうやって生きてきた時間も含めて、俺はきみが好きだ。きみにとっては受け入れるのは難しいかもしれないけど、否定しなくていいんだ。……必ず見つけるから。もう一度」
ナナカはやはり曖昧な視線を床に向けるだけだった。セストはもう一度、想いをこめてナナカの頬を撫でた。
「ヒューゴが来るなら、風に頼んでお肉買ってきてもらおうよ!」
「うんうん!」
「あ、でも、この前マーケットあったばっかりだよね。どうしよう」
「ルブラに行けば、ミシュさんのお肉屋さんがあるんだよ。風が言ってた」
「じゃあ、頼んでみよう!」
「うんうん!」
2体は転がるように部屋を出ていった。
「ほんと、好きだよね」
〈どうしてヒューゴがそんなに好きなのか訊いたら、友だちみたいに接してくれるからなんだって〉
「彼は確かに、種の違いとか気にしなさそうな雰囲気があるね」
〈大らかなんだよね〉
「良くも悪くもね」
バルクは笑って肩をすくめた。
***
肉屋の主人はめずらしくわざわざやってきた女性にすぐ気づいた。
「やあ、ソアさん。わざわざ来てくれるなんてめずらしい」
「ええ。ちょっと、お客が来ることになったの。それで、うちの子たちがミシュさんちのお肉を買ってこいってうるさくて」
風の扮する「ソアさん」は人懐こい笑みを浮かべる。
「そりゃ嬉しいね。何にする?」
「何か、いいのあるかしら。来るの若い男の子だから、ガッツリ豪快に焼こうかしら」
実際に調理するのはシェフなのだが。
「ああ、それならステーキにちょうどいいのが入ってるよ」
「それ、いただくわ。そういえばミシュさんは?」
「寺院に行ってるよ」
「寺院に? 大丈夫なの?」
ミシュは前に魔物に襲われて重傷を負い、寺院に担ぎ込まれて一命を取り留めたことがある。また事故にでも遭ったのかと心配する。
「いやいや、ミシュが診てもらってるわけじゃなくてね」
主人は塊から肉を切り出しながら言う。
「前にミシュが怪我した時にお世話になった僧侶様が、何やら呪われた女の子を治療のために連れて帰ってきたらしくてね。それでまあ、治療はともかく、ルブラの寺院は男所帯でしょ? どうしても女手は必要だからって」
「ミシュさんらしいわね」
風は肉を受け取って支払いをする。
「ミシュに用があったんなら、寺院に行ってみるといいよ。まだいると思うよ」
「いえ、特に用があったわけじゃないし、邪魔になるといけないからやめとくわ。ミシュさんによろしくね」
「ああ、伝えとくよ。ありがとうね」
「じゃ、次のマーケットでね」
「ソアさん」から鎧の姿になった風が塔に戻ると、2体のファミリアが転がり出てきた。
「風、ちょうどよかった。さっきヒューゴから連絡があって、ヒューゴ、夕方に来るんだって!」
ジーが跳びはねながら言う。
「うんうん!」
ルーも跳びはねている。
「あら、じゃ、ちょうど良かったわね。シェフにお肉渡してくるわ」
***
廃坑での喧騒は遠くに過ぎ去って、ルブラの町は静かだった。午前中、ミシュが来ている時間に数人の患者があったが、そのあとは誰の来院もなく、診療所は静かだった。セストは、治療に使う硬いベッドに腰掛けているナナカの隣に座る。
「ナナカ、今日、来客があるんだよ」
ナナカはなんの反応も返さない。ミシュもファム同様「反応はなくても、きっと聞こえているはずだから、話しかけ続けた方がいいと思うわ」と言うので、セストはそのとおりにこうして暇を見てはナナカに話しかけていた。内容は、所長やシシェンはどうしているだろうかという世間話だったり、帝都での出来事だったり、話すことが思いつかない時は教義の内容だったりした。
「前に話した、ヒューゴが来るんだ。俺が頼んだから、忙しいのに都合をつけてくれたんだと思う。きみを救うきっかけが見つかればいいんだけど」
セストは人差し指の背でナナカの頬を撫でる。ナナカの目は曖昧に床に向けられたままで、セストの方を見もしない。
セストはおそるおそる、ナナカのこめかみの髪を指先で掬って耳にかけた。ナナカはなんの反応も返さない。
――ねえ、セスト。あたし今、すっごく楽しい。すっごく幸せ。
古都の収穫祭で、笑いながら泣いていたナナカの顔が重なる。セストは、良くないと思いながらナナカの身体を抱き寄せた。
(きみは俺に、救ってくれてありがとうと言ってくれた。なのに、こんなことになって……)
「会いたい、ナナカ。笑った顔が見たい。……俺は無力だ。そして馬鹿だ」
きみはどこにいるんだろう、とセストはナナカの肩口に額をつけたまま思う。身体という意味でなら、もちろん目の前に。セストの腕の中に。しかし、今の彼女は抜け殻だった。廃坑の前でセストを引き留めた切羽詰まった顔が、収穫祭で子どものように跳びはねて踊っていた楽しそうな顔が、薄暗い洞窟の中で周囲の気配を探っている真剣な顔が、髪飾りをつけた時の驚いた顔が、脳裏に浮かんでくる。その顔を思い浮かべながら、今のナナカの意思が感じられない表情を見るのは辛かった。
「今気づいた。俺は、ずっときみのことばかり見てたんだ……。なんですぐにバレるんだろうと不思議だったけど、当然だよな」
そう、収穫祭の日、髪飾りの屋台の女性が選んでくれた花の花言葉は「あなたを見つめている」だった。
「ナナカ、必ず見つけるから、挫けずに待っててほしい。話したいことがたくさんあるんだ。俺は、きみの笑った顔が見たい。……きみのことが好きだ」
こうしていると、自分の身の内にあるものを意識せずにはおれない。これ以上はいけない、とセストは引き裂かれるような思いで、ナナカの、柔らかく無抵抗な身体に回していた腕を解いた。やはりナナカはなんの反応も返さなかった。今のナナカはセストを拒絶してもいないが、受け入れてもいない。ナナカの意志を無視して自分の気持ちを押しつけるような真似はしたくなかった。それでは「彼」と同じになってしまう。挑みかかるようにこちらを睨めつけていた、あの、紫の瞳。
(闇の来訪者……)
人の世に接する、こことは違った世界。全てが調和した世界。喜びも、悲しみもそこでは同じものだ。今なら、光の世界の力を引き出すことができると感じる。人が使える上限を遥かに超えた力。おそらく、彼も。
(光と闇の和合とは、一体何のことなんだろう。そこに、均衡の魂と混沌は、どう関わってくるんだろう)
考えても答えは出なかった。
「彼はきみに、何か言ってた? 何て言ってた?」
ナナカは答えない。
「……彼のことをきみに訊くのは、残酷だな。ごめん。話したくなければ、何も話さなくていいんだ。俺はきみを愛してて、きみも俺のことを愛してるって言ってくれた。俺にとって重要なのは、そのことだけなんだ。完全均衡の魂の持ち主であるきみの元に彼が現れて、きみが彼に救いを見いだしたのは、当然のことだと思う。誰だって、ひとりぼっちで生きていけるほど強くはないから。むしろ、俺が不意に現れたりしなければ、きみは、きみと彼の閉じた世界で幸せでいられたのかもしれないと思う時もある」
これは違う、と苦し気に、悲し気にナナカは泣いていた。
「違うと思う必要はないんだ。違ってなくていいんだ。そうやって生きてきた時間も含めて、俺はきみが好きだ。きみにとっては受け入れるのは難しいかもしれないけど、否定しなくていいんだ。……必ず見つけるから。もう一度」
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