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第4部 帝都地下神殿篇
12 ラウエ
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バルクの「離脱」は、一瞬でセストと2体のファミリア、そしてジュイユを帝都のアパルトマンの1室に運んできた。ハンター協会所有のアパルトマンに空き巣に入ろうという命知らずはいないと思うが、と断ったうえで、念のためにとバルクはセストに結界術を施すよう依頼した。結界術では、許可された者しか術の領域内に立ち入ることができなくなる。
「なれねえとこだと使い勝手が悪いな、やっぱ。狭いしよ」
骸骨のシェフは鎧をガチャガチャ鳴らしながらキッチンの戸棚を開けて物の場所を確認し、道具入れから愛用の包丁を出して、どこに置くべきか試行錯誤している。
「心配しなくてもすぐ慣れますよ」
そう言ったのは、この場には似つかわしくない、生真面目そうな少年だった。耳の少し下で切りそろえられた長めの髪に、細いフレームの眼鏡をかけている。服装は少年の晴れの日のいでたちといった風で、大人が着るようなスーツを着ていた。歳は12、3歳くらいか。髪は真っ直ぐの黒髪だが、光が当たる部分は少し青みがかかって見える。切長の瞳は光を放つような、鮮やかな青だった。
「水、えらく可愛らしくなったじゃないか」
ジュイユがからかうように言う。水は軽く肩をすくめた。その仕草や表情は大人のようだった。
「省エネモードですよ。本当はこちらの方が」と言うと、次の瞬間少年は金属光沢を放つ青い蜻蛉に姿を変えている。「消耗は少ないですが、見た目が人間の方が何かと便利ですので。それにまあ、リコがそばにいるなら、消えてしまってしばらく復活しないというようなことはないでしょう」
人間の姿の時のように口を動かしているところが見えるわけではないが、蜻蛉の方向から声が聞こえる。
「懐かしいな、その姿。久しぶりに見た」
「そうでしょう」
そう言うと蜻蛉は元の少年の姿に戻った。
部屋の片隅には、ボッチが笑った顔のまま膝を抱えて座っている。
「ねえねえ、ボッチは、帝都の地下から来たんだよね?」
ジーがボッチに話しかける。ボッチは頷いた。
「懐かしい?」
ボッチはしばらく考えるような素振りを見せてから、首を横に振った。
「そうかぁ。僕は帝都がこんなところだったなんて知らなかったよ。すごいところにいたんだねぇ」
ボッチは笑った顔のままだった。ヴィラントは、「ボッチはもともとパリピだった」と言っていた。属性を無効化する同タイプの魔物が集まって、一つの群れを作っていたと。しかしボッチは群れに馴染めず、ヴィラントと塔に来ることを選んだのだ。そこに何かがあったのかなかったのか、ボッチは言葉を発しないのでわからない。
「ねえ、今日、ヒューゴ来るのかな」
ルーがジーに言う。
「来るといいよね!」
「うんうん!」
2体は小さくぴょんぴょん跳ねた。ボッチは跳ね回る2体を見て、変わらず笑っていた。
そこに、不意に大音量でビープ音が鳴り、バルクのコールリングに通信が入る。警察が使う、緊急強制通信だ。この場の全員にサッと緊張が走る。
「何かあった?」
〈バルク、今帝都にいるか? いるなら、ラウエに来てほしい〉
ヒューゴの切羽詰まった声がする。
「わかった」
「俺も行く」
「セストも一緒に行くよ」
〈マジか。助かる。緊急コードを送る。それでラウエのポートに飛べる〉
そこで通信は切れてしまった。バルクは協力者用のコードを使ってラウエ駅のポートを呼び出す。
コールリングに跳ね返るように許可の通知が来る。バルクはセストの肩に手を置くと、ラウエに飛んだ。
視野が一瞬ぼやけ、次に像を結んだ時にはラウエ駅のポートにいる。防火扉のような鉄の扉を開けて、古ぼけたラウエ駅の事務所の中に出る。メトロの職員たちが一斉に2人を見た。バルクは構わずヒューゴに呼びかける。
「ヒューゴ、どこにいる。今着いた」
〈17番階段から保安用の通路に降りてくれ……後ろだ、避けろ!!〉
ヒューゴの声をかき消すように射撃音がする。
どうやら通信の向こう側は激しい戦闘になっているようだ。ヒューゴの声も緊迫して、少し息が上がっているように聞こえる。
「こちらへ」
その通話を聞いていた年配の男性職員がバルクとセストを先導する。
「ここです」
男性は黒いペンキで大きく「17」の表示がある扉を開ける。
バルクは言葉を発する間も惜しんで、男性職員に小さく頷くと一気に階段を次の踊り場まで飛び降りた。セストは慌てて身軽なバルクの後を追う。
階段を一気に駆け下りて、ぼんやりと灯りが灯るだけの、保安通路の暗闇に躍り出た。通路に出たバルクに、暗闇から何かが襲いかかる。紙一重でそれをかわし、氷の矢で応酬するが、攻撃は宙で溶けるように消えてしまう。無効化だ。
薄暗闇で両者は睨み合う。バルクに攻撃を仕掛けた魔物はパリピに酷似していたが、両腕両脚が異様に長く、大型の類人猿のように、腕と脚を使って立っていた。その身体が一瞬沈んだのをバルクは見逃さなかった。凄まじい跳躍力で襲いかかってくる魔物の懐に逆に入りこんで、ゼロ距離で属性攻撃を放つ。魔物は氷を纏いながら吹き飛ばされるが、それもすぐに無効化される。しかし計算の上だ。姿勢を崩した魔物の喉元に狼になって食らいつき、振り回す。地面に叩きつけると鈍い音がして魔物の首が折れ、力を失い、ジェムになる。
「……」
バルクは人の姿に戻ると、残されたジェムを拾い上げた。さまざまな色のビーズを集めて、焼き固めたようジェムだった。混沌。
振り返ると、セストが完全に腰を抜かして座りこんでいた。
「ああ、ごめん、言ってなかったね。そういうことだから。さ、行こう。負傷者がいるかもしれない。きみの力が必要だ」
「あ、ああ……」
セストは目の前で繰り広げられた一連の出来事を理解できないままに、こくこくと頷いた。
「こっちか」
ヒューゴの使う、派手な火の気配がする方へ駆ける。ところどころで、甲殻類のような魔物が出てくるのを蹴散らす。先程の魔物に比べれば簡単な敵だった。
天井の隅、暗闇になった場所から何かがセストに襲いかかる。慌てて助けようとしたバルクを、圧倒的な光が照らした。真夏の太陽を直視しているような光なのに、眩しさは感じない。不思議な感覚だった。セストの法術だ。先程と同じ、手足の長い魔物は、溶けるように消えていく。
「すごい。法術をこんな近くで見たのは初めてだよ」
バルクは純粋な感嘆を口にする。
「今のは盾の法術だったんだけど……。魔物を消してしまうような力はなかったはずなんだ……」
セストは自身がやったことに自分で驚いて、自らの掌を見つめている。
「それが光の来訪者の力ということなのかもしれないね。いずれにせよ、急ごう」
ズン……と鈍い振動がトンネルに伝わる。緩やかにカーブするトンネルの奥から、特殊治安部の刑事と見られる者たちが数名こちらに駆けてきた。
「セスト導師……!」
その中の1人の男性がセストに気づく。
「来てくれたんですか? しかしこの先は危険です、退避してください」
そう言う彼は額を切ってしまったのか、その顔の半分は血と埃で汚れている。
「ヒューゴは?」
セストは短く尋ねる。
「脱出の時間を稼ぐからって、まだ、奥に……!」
バルクとセストは顔を見合わせると、トンネルの奥に駆け出した。
「なれねえとこだと使い勝手が悪いな、やっぱ。狭いしよ」
骸骨のシェフは鎧をガチャガチャ鳴らしながらキッチンの戸棚を開けて物の場所を確認し、道具入れから愛用の包丁を出して、どこに置くべきか試行錯誤している。
「心配しなくてもすぐ慣れますよ」
そう言ったのは、この場には似つかわしくない、生真面目そうな少年だった。耳の少し下で切りそろえられた長めの髪に、細いフレームの眼鏡をかけている。服装は少年の晴れの日のいでたちといった風で、大人が着るようなスーツを着ていた。歳は12、3歳くらいか。髪は真っ直ぐの黒髪だが、光が当たる部分は少し青みがかかって見える。切長の瞳は光を放つような、鮮やかな青だった。
「水、えらく可愛らしくなったじゃないか」
ジュイユがからかうように言う。水は軽く肩をすくめた。その仕草や表情は大人のようだった。
「省エネモードですよ。本当はこちらの方が」と言うと、次の瞬間少年は金属光沢を放つ青い蜻蛉に姿を変えている。「消耗は少ないですが、見た目が人間の方が何かと便利ですので。それにまあ、リコがそばにいるなら、消えてしまってしばらく復活しないというようなことはないでしょう」
人間の姿の時のように口を動かしているところが見えるわけではないが、蜻蛉の方向から声が聞こえる。
「懐かしいな、その姿。久しぶりに見た」
「そうでしょう」
そう言うと蜻蛉は元の少年の姿に戻った。
部屋の片隅には、ボッチが笑った顔のまま膝を抱えて座っている。
「ねえねえ、ボッチは、帝都の地下から来たんだよね?」
ジーがボッチに話しかける。ボッチは頷いた。
「懐かしい?」
ボッチはしばらく考えるような素振りを見せてから、首を横に振った。
「そうかぁ。僕は帝都がこんなところだったなんて知らなかったよ。すごいところにいたんだねぇ」
ボッチは笑った顔のままだった。ヴィラントは、「ボッチはもともとパリピだった」と言っていた。属性を無効化する同タイプの魔物が集まって、一つの群れを作っていたと。しかしボッチは群れに馴染めず、ヴィラントと塔に来ることを選んだのだ。そこに何かがあったのかなかったのか、ボッチは言葉を発しないのでわからない。
「ねえ、今日、ヒューゴ来るのかな」
ルーがジーに言う。
「来るといいよね!」
「うんうん!」
2体は小さくぴょんぴょん跳ねた。ボッチは跳ね回る2体を見て、変わらず笑っていた。
そこに、不意に大音量でビープ音が鳴り、バルクのコールリングに通信が入る。警察が使う、緊急強制通信だ。この場の全員にサッと緊張が走る。
「何かあった?」
〈バルク、今帝都にいるか? いるなら、ラウエに来てほしい〉
ヒューゴの切羽詰まった声がする。
「わかった」
「俺も行く」
「セストも一緒に行くよ」
〈マジか。助かる。緊急コードを送る。それでラウエのポートに飛べる〉
そこで通信は切れてしまった。バルクは協力者用のコードを使ってラウエ駅のポートを呼び出す。
コールリングに跳ね返るように許可の通知が来る。バルクはセストの肩に手を置くと、ラウエに飛んだ。
視野が一瞬ぼやけ、次に像を結んだ時にはラウエ駅のポートにいる。防火扉のような鉄の扉を開けて、古ぼけたラウエ駅の事務所の中に出る。メトロの職員たちが一斉に2人を見た。バルクは構わずヒューゴに呼びかける。
「ヒューゴ、どこにいる。今着いた」
〈17番階段から保安用の通路に降りてくれ……後ろだ、避けろ!!〉
ヒューゴの声をかき消すように射撃音がする。
どうやら通信の向こう側は激しい戦闘になっているようだ。ヒューゴの声も緊迫して、少し息が上がっているように聞こえる。
「こちらへ」
その通話を聞いていた年配の男性職員がバルクとセストを先導する。
「ここです」
男性は黒いペンキで大きく「17」の表示がある扉を開ける。
バルクは言葉を発する間も惜しんで、男性職員に小さく頷くと一気に階段を次の踊り場まで飛び降りた。セストは慌てて身軽なバルクの後を追う。
階段を一気に駆け下りて、ぼんやりと灯りが灯るだけの、保安通路の暗闇に躍り出た。通路に出たバルクに、暗闇から何かが襲いかかる。紙一重でそれをかわし、氷の矢で応酬するが、攻撃は宙で溶けるように消えてしまう。無効化だ。
薄暗闇で両者は睨み合う。バルクに攻撃を仕掛けた魔物はパリピに酷似していたが、両腕両脚が異様に長く、大型の類人猿のように、腕と脚を使って立っていた。その身体が一瞬沈んだのをバルクは見逃さなかった。凄まじい跳躍力で襲いかかってくる魔物の懐に逆に入りこんで、ゼロ距離で属性攻撃を放つ。魔物は氷を纏いながら吹き飛ばされるが、それもすぐに無効化される。しかし計算の上だ。姿勢を崩した魔物の喉元に狼になって食らいつき、振り回す。地面に叩きつけると鈍い音がして魔物の首が折れ、力を失い、ジェムになる。
「……」
バルクは人の姿に戻ると、残されたジェムを拾い上げた。さまざまな色のビーズを集めて、焼き固めたようジェムだった。混沌。
振り返ると、セストが完全に腰を抜かして座りこんでいた。
「ああ、ごめん、言ってなかったね。そういうことだから。さ、行こう。負傷者がいるかもしれない。きみの力が必要だ」
「あ、ああ……」
セストは目の前で繰り広げられた一連の出来事を理解できないままに、こくこくと頷いた。
「こっちか」
ヒューゴの使う、派手な火の気配がする方へ駆ける。ところどころで、甲殻類のような魔物が出てくるのを蹴散らす。先程の魔物に比べれば簡単な敵だった。
天井の隅、暗闇になった場所から何かがセストに襲いかかる。慌てて助けようとしたバルクを、圧倒的な光が照らした。真夏の太陽を直視しているような光なのに、眩しさは感じない。不思議な感覚だった。セストの法術だ。先程と同じ、手足の長い魔物は、溶けるように消えていく。
「すごい。法術をこんな近くで見たのは初めてだよ」
バルクは純粋な感嘆を口にする。
「今のは盾の法術だったんだけど……。魔物を消してしまうような力はなかったはずなんだ……」
セストは自身がやったことに自分で驚いて、自らの掌を見つめている。
「それが光の来訪者の力ということなのかもしれないね。いずれにせよ、急ごう」
ズン……と鈍い振動がトンネルに伝わる。緩やかにカーブするトンネルの奥から、特殊治安部の刑事と見られる者たちが数名こちらに駆けてきた。
「セスト導師……!」
その中の1人の男性がセストに気づく。
「来てくれたんですか? しかしこの先は危険です、退避してください」
そう言う彼は額を切ってしまったのか、その顔の半分は血と埃で汚れている。
「ヒューゴは?」
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