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プロローグ

プロローグ

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 ガラスペンの軸は窓からの西日を受け流し、便箋に穏やかな光を落としている。
彼は透明なペン先をインクに浸し、ボトルのふちでそっと撫でるようにして持ち上げた。
 紙との邂逅を楽しむようにペンが動く。インクが滲み、濃淡とともに言霊が生み出されていった。
そこに紡がれた言葉たちはゆきばを失った想いの数々。心の引き出しにおさまりきれず、さらけ出すことも許されず、そっと蓋をされた想いだ。
 山奥のポストに託された想いを、彼のガラスペンは形にする。インクが命と力を授ける。そして、誰かのもとへ飛んでいく。
 きりがない話だ。エゴかもしれない。だから、ガラスペンを握る。たとえ彼女に笑われたとしても。
 彼はガラスペンの先を見つめながら、ひとりごちる。
「君はそこにいる?」
 答えはなかった。
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