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落ちる!

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 パパとママのことを思い出したゾラは、どんどん心細くなっていた。

「ねぇ、ジャスパー。そろそろおうちに帰りたいんだけど」

「帰ってどうするの?」

「どうするって、パパとママも待っていると思うんだ」

「待っている? 牛になったのに?」

「なんだって!」

 ゾラは素っ頓狂な声を上げた。

「牛になったって、どういうこと?」

「君が願ったんじゃないか。だから、牛になって今頃のんびり寝ているよ」

「いやだよ、そんなの」

 ゾラがわっと泣き出した。大粒の涙がジャスパーの顔に落ちると、彼は悲鳴を上げた。

「やめて、泣かないで! もやもやは湿気ると重くなるんだ!」

 しゅうう! 

 まるで風船に穴があいたように、ジャスパーの体が縮み始めた。ジャスパーはあっちへ飛び、こっちへ飛び、くるくる回りながらどんどん落ちていく。

「うわああ!」

 ゾラは必死にしがみつく。

「ジャスパー! どこに行くの?」

「わかるもんか!」

 ジャスパーの泣きそうな声がした。

「人生はわからないことばっかりなのさ」

 がくんっとジャスパーが急降下しはじめた。ゾラは悲鳴をあげながら、いつしか気を失った。
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