7 / 10
普通じゃない
しおりを挟む
何を作ったらいいものか。
考えあぐね、サルヴァドールはジャスパーを連れ、市場にやってきた。新鮮な魚、分厚い肉、色鮮やかな野菜と果物――何を見ても、彼は首を横に振る。
「どの料理も好きすぎて選びきれないよ」
サルヴァドールを遠巻きに見る者たちがこそこそと囁き合っている。
「おい、また変わり者のサルヴァドールが来ているよ」
「旅立つ者に料理をふるまうんだろう? 一緒にどこかへ連れていかれそうで不気味じゃないか」
「もともとあいつは普通じゃないよ。かわいそうなやつだ。みんなのように幸せを追いかけることなく、口を開けば料理のことばかり」
ジャスパーは大好きな仲間の陰口にすっかり腹を立てていた。ぷくぅっと頬を餅のように膨らませている。サルヴァドールがその様子に気づいて笑った。
「気にしていないよ。昔から私は普通じゃないと言われてきた。でも、普通って自分が真ん中にいるものの見方だ。だから普通は人それぞれなのさ」
「たしかにヨナじいさんもそんなこと言っていたけど」
「生きやすい世の中だと信じたいんだよ、あの者たちはね。そして生きずらいと感じることが怖いだけなのだ」
サルヴァドールはそう言いながらも、ジャスパーが自分のために怒ってくれたことを嬉しく思った。
少しばかり笑みがこぼれた彼を見て、ジャスパーが首をかしげる。
「何を笑っているの?」
「うん、まあ、いいじゃないか。それよりも君がたそがれのひと皿を食べるとしたらなんにする?」
「そうだな」
ジャスパーが少しの間考え、きっぱりと言った。
「僕はぶどう酒がいいな。暖炉の火であたためて、たっぷりの蜂蜜と果物と香辛料を入れるんだ。眠る前に一息つくような気持ちになりたいから」
「なるほどね、一息つくというのもいいね。まるでシチューがことこと煮えている音を聞いている気分かな」
長いくちばしをさすり、サルヴァドールは買い物カゴにぶどう酒を入れた。
考えあぐね、サルヴァドールはジャスパーを連れ、市場にやってきた。新鮮な魚、分厚い肉、色鮮やかな野菜と果物――何を見ても、彼は首を横に振る。
「どの料理も好きすぎて選びきれないよ」
サルヴァドールを遠巻きに見る者たちがこそこそと囁き合っている。
「おい、また変わり者のサルヴァドールが来ているよ」
「旅立つ者に料理をふるまうんだろう? 一緒にどこかへ連れていかれそうで不気味じゃないか」
「もともとあいつは普通じゃないよ。かわいそうなやつだ。みんなのように幸せを追いかけることなく、口を開けば料理のことばかり」
ジャスパーは大好きな仲間の陰口にすっかり腹を立てていた。ぷくぅっと頬を餅のように膨らませている。サルヴァドールがその様子に気づいて笑った。
「気にしていないよ。昔から私は普通じゃないと言われてきた。でも、普通って自分が真ん中にいるものの見方だ。だから普通は人それぞれなのさ」
「たしかにヨナじいさんもそんなこと言っていたけど」
「生きやすい世の中だと信じたいんだよ、あの者たちはね。そして生きずらいと感じることが怖いだけなのだ」
サルヴァドールはそう言いながらも、ジャスパーが自分のために怒ってくれたことを嬉しく思った。
少しばかり笑みがこぼれた彼を見て、ジャスパーが首をかしげる。
「何を笑っているの?」
「うん、まあ、いいじゃないか。それよりも君がたそがれのひと皿を食べるとしたらなんにする?」
「そうだな」
ジャスパーが少しの間考え、きっぱりと言った。
「僕はぶどう酒がいいな。暖炉の火であたためて、たっぷりの蜂蜜と果物と香辛料を入れるんだ。眠る前に一息つくような気持ちになりたいから」
「なるほどね、一息つくというのもいいね。まるでシチューがことこと煮えている音を聞いている気分かな」
長いくちばしをさすり、サルヴァドールは買い物カゴにぶどう酒を入れた。
0
あなたにおすすめの小説
魔女は小鳥を慈しむ
石河 翠
児童書・童話
母親に「あなたのことが大好きだよ」と言ってもらいたい少女は、森の魔女を訪ねます。
本当の気持ちを知るために、魔法をかけて欲しいと願ったからです。
当たり前の普通の幸せが欲しかったのなら、魔法なんて使うべきではなかったのに。
こちらの作品は、小説家になろうとエブリスタにも投稿しております。
緑色の友達
石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。
こちらは小説家になろうにも投稿しております。
表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。
少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
イシュタは病の妹のため、誰も死なない村・エリュシラーナへと旅立つ。そして、夜空のような美しい少女・フェルルと出会い……
「昔話をしてあげるわ――」
フェルルの口から語られる、村に隠された秘密とは……?
☆…☆…☆
※ 大人でも楽しめる児童文学として書きました。明確な記述は避けておりますので、大人になって読み返してみると、また違った風に感じられる……そんな物語かもしれません……♪
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
人柱奇譚
木ノ下 朝陽
児童書・童話
ひたすら遣る瀬のない、救いのない物語です。
※デリケートな方は、閲覧にお気を付けくださいますよう、お願い申し上げます。
昔書いた作品のリライトです。
川端康成の『掌の小説』の中の一編「心中」の雰囲気をベースに、「ファンタジー要素のない小川未明童話」、または「和製O・ヘンリー」的な空気を心掛けながら書きました。
そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。
桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。
それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。
でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。
そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
パンティージャムジャムおじさん
KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。
口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。
子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。
そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる