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11.
しおりを挟む意を決して聞いてみた。
ジョエルは彼の問いかけに微笑み、
「どうして怒られると思ったのかな?」
と、逆に聞き返された。
「だって…あんたの手、叩いたから」
「それは急に私が声をかけて君に触れたからであって叩かれて当然だろう?」
質問したはずなのに気づいたら自分が答えていて、更には叩かれて当然だと言われますます混乱する。
ジョエルは話を続けた。
「一人で生きていた君が私のような相手を警戒しているのは当たり前のことだよ。
だから私は君を責めないし、受け入れるよ」
(また、だ)
俺を見て微笑む。
俺をまっすぐと見る、優しい目。
結局モヤモヤする気持ちは晴れなかったが、聞く気になれず黙ってお風呂に入ることにしたのだった。
ーーーー
支度を終えジョエルと並んで歩みを進める。
行き先が分からないまま到着すると、既に湯気が立ち上る料理が長テーブルにずらり所狭しと並べられていた。
何か特別な日でもあるのかと横を通りすぎようとしたら侯爵に止められる。
「良かったらエーテルも一緒に食べよう?一人だと寂しいからね」
一瞬躊躇ったものの、一緒に食べようと言われテーブルの中央にある席へ導かれ座る。少ししてジョエルも隣に並んで座る。
…どうしよう。今になって食事の作法はどうすればいいか気になってしまう。あまり食堂には行かないし、だいたいは外で携帯食を食べていたから緊張する。
「さあ、食べるとしようか」
頂きますと手を合わせ、ぎこちなくフォークを持つ。まずはどれを食べていいか迷い、隣の様子をチラチラと盗み見しながらそれに習って手を動かす。
(ー!!、美味しい!)
作法がと悩んでいたことを忘れ、口に入れた肉に集中する。
なんて柔らかいお肉なんだ!口にいれた瞬間溶けて無くなった…。
この具材がたっぷり入ったスープも野菜がしっかり煮込まれてて食べやすい!!
エーテルは目を輝かせながら食事を楽しみ、幸せな時間を過ごす。
彼にとってこんなに美味しい食事を沢山食べたのは人生で初めての事だった。エーテルは満足そうにフォークをテーブルに置くと、ジョエルは微かに目を見開き問いかける。
「もう終わりかい?まだあるから遠慮せずに召し上がれ」
「?」
結構な量を食べているのに何か変だったか…?もしかして残したことを気にしてるのか。
「美味しかった。けど、残してごめんなさい」
ジョエルはエーテルの口元に人差し指を立てた。
「謝らなくていい、好きなだけ食べてくれたなら料理長も喜ぶし私も嬉しいよ。
デザートはまた別の日にしようね」
この時エーテルは気づいていなかった。
育ち盛りの17歳が消費する食事量の半分も満たしていなかったことに。
ジョエルは満足に食事が出来なかった彼を想像し、不自由な思いをさせないと誓ったのは言うまでもない。
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