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第六章 茜岩谷に吹く風が
第九話 地上絵
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起伏のない地面に、縦横に走る線。矢印と思われる記号。そしてたくさんの線画。
それは俺に滑走路や、テーマパークの駐車場を連想させた。空からの何かを迎えるための案内図、離着陸時の混乱を防ぐための順路の表示。そんなものに見える。少なくと人工物である事は間違いない。
この岩山からでは、全てを見渡す事は出来ない。あの場所はどう考えても、空を飛ぶ何かのためのものだ。
「ヒロト」
「あれ、なんだ?」
ロレンとリュートが追いかけて登ってきた。
「耳なしの空飛ぶ船の発着所、ですかね」
「驚いた。空飛ぶ船、本当にあったんだな。ヒロトのスマホの中のシャシンみたいだ」
二人も俺と同じように、空飛ぶ船に関係する施設だと想像しているらしい。
「降りてみますか?」
降りて、調べてみたい気持ちはある。だが、危険度が予測できない。引くべきか?
「音、たぶん、動物や獣の人を、近寄る、させないため」
「ああ、ヒロトが聞こえないって事は、あの場所が耳なしの秘密の施設って可能性が高いな」
むむ、リュートが日本語を使ってくれない。冷静に見えるが、動揺しているのだろう。ロレンが逆引き単語帳をめくり「ヤガン、アッサンテは『内緒』の『住処』」と教えてくれた。
ああ、秘密基地みたいなニュアンスか。
「尻尾、どう?」
俺は尻尾の危険察知を信じる事にした。
「音の壁を越えてからは、特に何も感じませんね」
岩山の上で作戦会議をはじめる。あの場所まで行って調べてみたい、という点で俺たちの意見は一致している。
「獣の姿なる、どうか?」
この世界の人は獣の姿となると、様々な能力が人の姿でいるよりも上がると聞いている。
「喋れなくなるし、手先を使った作業もできなくなる。武器も使えないぞ」
なるほど、便利な事ばかりではないらしい。
「非常事態、獣の姿、走れ。俺はあくびで走る」
悪いが、あくびは俺と一蓮托生だ。
「よし! 行くぞ!」
慎重に慎重を重ね、気合を入れて足を踏み入れたその場所は、気が抜けるほど閑散としていた。身を隠す物のない開けた空間に不安になり、走り抜けたい衝動に駆られる。
縦横に走る白っぽい線は、スタンプで押したように、均一に何かの染料が固定されている。道路の中央分離帯を示す線とそう変わらないように見える。触っても指に色がつく事はなかった。
地面の色はサラサスーン地方のものに偽装されているが、踏み心地が違う。何かで舗装されているようだ。踏みなれた感触に一瞬懐かしくなる。ロレンとリュートも気づいたらしく、剣の鞘や靴の踵で地面をガリガリとこすっている。
「土ではないですね。岩のように固い」
これもオーバーテクノロジーだろう。
空飛ぶ船が関係した場所なら、管制塔や格納庫のようなものが必要ではないだろうか。外周付近を歩きならが、それらしい建物を探すが見当たらない。地面に偽装された地下への入り口や、岩壁に隠し扉のようなものがある気がする。
「壁、隠し扉、地面、隠し階段、探そう」
そう言いながら、俺はある事に思い当たっていた。
大岩の家を取り囲む岩壁が開くギミック。あれは、正に隠し扉だ。
いくら爺さんが凄腕の職人だといっても、この世界には不似合いな装置だとは思っていた。爺さんはここに来た事があるのかも知れない。
「リュート、大岩の壁、仕掛け、知ってるか?」
唐突な質問になってしまったが、リュートも思うところがあったらしい。
「あれは、父さんしか知らないんだ。俺がいくら聞いても教えてくれなかった。そうか、父さんはここの事を知っているのかも知れないな」
一度戻って、爺さんに話を聞く必要がある。
それは俺に滑走路や、テーマパークの駐車場を連想させた。空からの何かを迎えるための案内図、離着陸時の混乱を防ぐための順路の表示。そんなものに見える。少なくと人工物である事は間違いない。
この岩山からでは、全てを見渡す事は出来ない。あの場所はどう考えても、空を飛ぶ何かのためのものだ。
「ヒロト」
「あれ、なんだ?」
ロレンとリュートが追いかけて登ってきた。
「耳なしの空飛ぶ船の発着所、ですかね」
「驚いた。空飛ぶ船、本当にあったんだな。ヒロトのスマホの中のシャシンみたいだ」
二人も俺と同じように、空飛ぶ船に関係する施設だと想像しているらしい。
「降りてみますか?」
降りて、調べてみたい気持ちはある。だが、危険度が予測できない。引くべきか?
「音、たぶん、動物や獣の人を、近寄る、させないため」
「ああ、ヒロトが聞こえないって事は、あの場所が耳なしの秘密の施設って可能性が高いな」
むむ、リュートが日本語を使ってくれない。冷静に見えるが、動揺しているのだろう。ロレンが逆引き単語帳をめくり「ヤガン、アッサンテは『内緒』の『住処』」と教えてくれた。
ああ、秘密基地みたいなニュアンスか。
「尻尾、どう?」
俺は尻尾の危険察知を信じる事にした。
「音の壁を越えてからは、特に何も感じませんね」
岩山の上で作戦会議をはじめる。あの場所まで行って調べてみたい、という点で俺たちの意見は一致している。
「獣の姿なる、どうか?」
この世界の人は獣の姿となると、様々な能力が人の姿でいるよりも上がると聞いている。
「喋れなくなるし、手先を使った作業もできなくなる。武器も使えないぞ」
なるほど、便利な事ばかりではないらしい。
「非常事態、獣の姿、走れ。俺はあくびで走る」
悪いが、あくびは俺と一蓮托生だ。
「よし! 行くぞ!」
慎重に慎重を重ね、気合を入れて足を踏み入れたその場所は、気が抜けるほど閑散としていた。身を隠す物のない開けた空間に不安になり、走り抜けたい衝動に駆られる。
縦横に走る白っぽい線は、スタンプで押したように、均一に何かの染料が固定されている。道路の中央分離帯を示す線とそう変わらないように見える。触っても指に色がつく事はなかった。
地面の色はサラサスーン地方のものに偽装されているが、踏み心地が違う。何かで舗装されているようだ。踏みなれた感触に一瞬懐かしくなる。ロレンとリュートも気づいたらしく、剣の鞘や靴の踵で地面をガリガリとこすっている。
「土ではないですね。岩のように固い」
これもオーバーテクノロジーだろう。
空飛ぶ船が関係した場所なら、管制塔や格納庫のようなものが必要ではないだろうか。外周付近を歩きならが、それらしい建物を探すが見当たらない。地面に偽装された地下への入り口や、岩壁に隠し扉のようなものがある気がする。
「壁、隠し扉、地面、隠し階段、探そう」
そう言いながら、俺はある事に思い当たっていた。
大岩の家を取り囲む岩壁が開くギミック。あれは、正に隠し扉だ。
いくら爺さんが凄腕の職人だといっても、この世界には不似合いな装置だとは思っていた。爺さんはここに来た事があるのかも知れない。
「リュート、大岩の壁、仕掛け、知ってるか?」
唐突な質問になってしまったが、リュートも思うところがあったらしい。
「あれは、父さんしか知らないんだ。俺がいくら聞いても教えてくれなかった。そうか、父さんはここの事を知っているのかも知れないな」
一度戻って、爺さんに話を聞く必要がある。
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