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EMANON side
EMANON side:マリアンネ
しおりを挟む今日はサンくんが私達と一緒に職場へ行く日です。
朝からサンくんはとても緊張した様子でした。
事務所に入ると、ロジェさんがパソコンを操作していました。
ロジェさんはシェルアさんの話を聞きながら立ち上がると、サンくんに自己紹介をして握手を交わしました。
サンくんはロジェさんにシェルアさんから迷惑をかけられていないかと聞かれて、焦っていました。
ロジェさんの冗談はサンくんには通じなかったようです。
ロジェさんはシェルアさんに騙されないようにとまた冗談を言ってデスクに戻りました。
シェルアさんとロジェさんは相変わらず仲良しです。
エッシちゃんとブラッドくんは二人でJP区にお使いに行ったらしく、シェルアさんとロジェさんはこれからお仕事のようで、ロジェさんは外に出る支度を始めました。
サンくんを気にかけているシェルアさんは当然お仕事に行くのを渋っていましたが、ロジェさんに言われると仕方なく依頼者の家へと向かわれました。
二人を見送ると、何処からともなく大福くんとよもぎちゃんが現れます。
二匹はどうやら先回りをしていたようでした。
ルイスがサンくんにソファへ座るよう促すと、私はサンくんに紅茶とコーヒーどちらがいいかを尋ねました。
でもサンくんはお気遣いなくなんて言って遠慮しました。
私は飲み物を淹れにキッチンに向かいました。
コーヒーは使う器具を温める所から始まります。これは出来上がりの温度を下げないためです。
そして沸かしたお湯をドリップポットに入れて、コーヒーの粉をペーパーフィルターにセットします。
粉の表面を平らにすると、お湯をコーヒーの粉の上に少し注ぎます。
じっくり蒸らしてから円を描くようにお湯を静かに注いで、サーバの中のコーヒーを軽く混ぜたら完成です。
あとはソーサーにミルクと角砂糖を添えるだけです。
二人分のコーヒーを淹れて戻ると、エッシちゃんとブラッドくんがちょうど帰ってきていました。
おかえりなさいと言って飲み物は何がいいか尋ねると、エッシちゃんはつい先程のサンくんみたいに最初は遠慮しましたが、エッシちゃんの好きなミルクティーでいいか聞くと観念していました。
ブラッドくんはコーヒーでいいか聞くと、彼は丁寧に御礼を言いました。
私はルイスとサンくんのコーヒーをテーブルに置くと、またキッチンに向かいました。
まず冷蔵庫から牛乳を取り出してミルクポットに注ぎます。
次にティーポットとカップを温めている間にお湯を沸かすと、温めたポットにアッサムの茶葉を多めに入れて沸かしたお湯を注ぎます。
ティーコジーをかぶせて蒸らすと、ティーポットの中を軽く混ぜます。
ティーストレーナーでこしながら温めたカップに注いで、常温になった牛乳をミルクポットから注げば完成です。
ブラッドくんのコーヒーはマナー的に良くないですが、前回むせてらしたので今日はあらかじめ砂糖を一つ入れさせて頂きました。
飲み物を淹れている間は賑やかな声が聞こえてきて、私は自然と笑みが溢れました。
やっぱり若い子同士だと会話が弾むようです。
私は飲み物と、さっき出し忘れていたお手拭きであるウェットティッシュを皆に配りました。
すると大福くんが私の所までやって来ると、ワンと鳴きました。
てっきり私はおやつの催促だと思ったのですが、何故かルイスは私もソファに座れと言い出しました。
……誰か来た時にお出迎えしないとEMANONの評判に関わるのに。
断ろうとすると、ブラッドくんが日を改めるから大丈夫だと言って、エッシちゃんもブラッドくんに賛同しました。
私個人はお仕事を優先したいところですが、今日はサンくんがいます。
私は自分を納得させて気持ちを切り替えるとらサンくんの隣に腰掛けました。
基本立ち仕事をしているから、この時間に座っているのはなんだか変な感じです。
大福くんの丸い目が私を見つめると、サンくんは大福くんを撫でます。
足元にいるよもぎちゃんを見ていると、エッシちゃんが私の飲み物を淹れてくると立ち上がりました。私が返事をする前にルイスが先に返事をして、私は一瞬呆気に取られました。
すぐに立ち上がってキッチンに向かうエッシちゃんを追いかけようとしましたが、よもぎちゃんにつま先を前足で叩かれました。
まるで行くなと言っているようです。
ブラッドくんにも止められて、仕方なく私はソファに座り直しました。
よもぎちゃんは私の手に顎を乗せると、じっと私を見つめてきました。
丁寧にブラッシングされたらふわふわの毛が気持ちいいです。
ゆっくり撫でると、よもぎちゃんは気持ち良さそうに目を閉じました。
しばらくよもぎちゃんを撫でていると、エッシちゃんが戻ってきました。
紅茶のストレートを淹れてくれたようです。
御礼を言うとエッシちゃんはこちらこそと御礼を言って、私の前に紅茶とウェットティッシュを置きました。
私は早速、手を拭いて紅茶を頂きました。
エッシちゃんは私の淹れたミルクティーを美味しいと言ってくれました。
私もエッシちゃんの淹れてくれた紅茶は美味しいと伝えると、エッシちゃんは笑顔を浮かべました。
ニコニコしていると、ブラッドくんが思い出したようにシェルアさん達の居場所を尋ねました。
ルイスが入れ違いで仕事に行った事を伝えると、ブラッドくんは残念そうにしています。
——ブラッドくんはシェルアさんが本当に好きですね。
そう言うとブラッドくんは照れながらも、私の言った言葉を肯定しました。
するとルイスが、非難めいた口調でブラッドくんを注意し始めました。
何やら私が席を外している間にちょっとしたトラブルがあったようです。
エッシちゃんもルイスと一緒になってブラッドくんを責め立てます。
しかもエッシちゃんはブラッドくんに肘鉄を入れました。
ブラッドくんは静かに痛みで震えています。
私は喧嘩に発展する前に仲裁しようと、まず手を叩いて現状を整理しました。
ブラッドくんはサンくんに警戒心がある事、そしてサンくんには悪意がない事を話すと、次にサンくんの意思を聞きました。
サンくんの答えは誰にも危害を加える気はないというもので、私はサンくんの純粋さに思わず笑みが溢れました。
私が意思を再確認すると、サンくんは元気いっぱい頷いて返事をしました。
とても微笑ましかったですが、ブラッドくんは皆の視線に耐えられなかったようで、煙草を理由に屋上へ行ってしまいました。
大福くんがブラッドくんを追いかけます。
よもぎちゃんは大福くんについて行く事はないようで、足元で欠伸をしていました。
エッシちゃんが代わりに謝ると、サンくんはブラッドくんの言う事は尤もだと言って、シェルアさんの事を大切に想っていると感想を述べました。
ルイスとエッシちゃんが無言になると、サンくんは焦っていましたが、私は大丈夫ですよと微笑みました。
エッシちゃんはサンくんの純粋さを天然記念物かと褒めて、ルイスはその言葉を肯定するように頷いていい奴だと言いました。
でも肝心のサンくんは二人に何故褒められているのかわからないようで、困惑しています。
私はサンくんの肩を叩くと、少し暴走しかけている二人に声をかけました。
サンくんが困っていると言うと二人とも我に返ったみたいで、すんなり会話を止めてくれました。
けれどその時サンくんがキラキラした目を私に向けてきたので、私は少し照れくささを感じました。
冷めない内にとコーヒーを勧めると、サンくんは美味しいと言いました。嬉しいです。
エッシちゃんが私にコーヒーの淹れ方を教えてほしいとお願いすると、サンくんも私にコーヒーの淹れ方を教えてほしいとお願いしました。
サンくんの美味しいものを淹れられるようになって皆に飲んでほしいという純粋な理由に、ルイスとエッシちゃんはまた暴走しかけていましたが、私は適当に流す事にしました。
当の本人達は無自覚で可愛がっているのでしょうが、いまいちサンくんには伝わっていませんでした。
ブラッドくんが屋上へ行って三十分が経った頃、ルイスがスマホの画面を見せて、シェルアさんから昼食の買い出しに行ってほしいというメッセージが届いた事を知らせました。
ソファから立ち上がって買いに行こうとすると、エッシちゃんは男性陣に行ってほしい旨と、ついでに依頼料を貰ってきてほしいと記された画面を私に見せました。
自分のスマホでも確認すると、同じ文面が並んでいました。
シェルアさんの事だから何か思惑《おもわく》があるのでしょうが、私はあの子達が喧嘩になったり、トラブルに巻き込まれたりしないかちょっと心配でした。
大丈夫ですかねと心の声が漏れると、エッシちゃんは私の言葉をブラッドくんへの懸念だと捉えたようでした。
その後すぐブラッドくんが来ると、早く行くぞと急かして出ていきました。
私とエッシちゃんはサンくん達を見送ると、一息ついてよもぎちゃんに目を向けました。
よもぎちゃんは眠いのか欠伸をして、伏せの体勢になりました。
「久しぶりの女子会ですね」
「! そうですね。マリアさんは最近どうですか?」
「私は変わりないですよ。エッシちゃんはロジェさんとどうなんですか?」
「ぅぐっ! ちょ、っマリアさん!!」
真っ赤な顔をしているエッシちゃんは大変可愛らしいです。
恋する乙女とはエッシちゃんのような子の事をいうのでしょう。
私はルイスに恋人が出来るまで恋愛する気はないですが、人を好きになれるエッシちゃんを少し羨ましく思いました。
「っもー……マリアさん、あたしの事はいいですから! それより昨日、美味しそうなお店見つけたんです! 今度琴ちゃんと一緒に行きません?」
「あら、いいですね。何が美味しいお店なんですか?」
「それがパスタ専門店らしくて、麺の種類とかソースとか選べるんですよ!」
エッシちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべると、スマホを操作してお店の写真を見せました。
場所はXX区の郊外にあるらしく、車がないと厳しい場所ですが、バスが出ているようです。
「あ、あとあたし最近料理始めたんですよ! まだ全然ダメダメですけど……」
「いいじゃないですか。何を作ったんです?」
「ビーフシチューです」
「美味しく出来ました?」
「いやまったく……赤ワイン入れすぎちゃって……」
エッシちゃんは恥ずかしそうに目を伏せました。
以前から食事は出来合いの物をスーパーで買っていると言っていたので、料理は苦手分野なのでしょう。
私は少し考えた後、ある事を思い付きました。
「もし良ければ、私とお料理練習します?」
「えっ!?」
「スタジオを借りるのはお金がかかるので、開催場所が私のアパートかエッシちゃんの家になるんですけど……それでも良ければ」
「いいんですか!?」
エッシちゃんは食い気味に返事をすると、私の手を握って懇願しました。
なんでも、レシピを見ながら作っているのに上手くいかない事が多くて自信を失くしていたようです。
私は自分の得意分野でエッシちゃんが助かるならこんなに嬉しい事はないので、二つ返事で了承しました。
今日のお使いの話を聞いていると、シェルアさんとロジェさんが帰ってきました。
「ただいま」
「っおかえりなさい」
「おかえりなさいませ。早かったですね」
「うん。時間押すかと思ったけど、切り上げてくれた」
ロジェさんはすぐに上着を脱いで椅子にかけると、座ってパソコンを操作し始めました。
シェルアさんは部屋を見回すと、私と目が合いました。
「まだ帰ってきてませんよ」
「そっか。じゃあ連絡だけ入れとこうかな」
「そんないちいち連絡しなくてもその内帰ってくるだろ」
ロジェさんが呆れたように言うと、シェルアさんは苦笑して椅子に座りました。
二人に飲み物の有無を聞くと、依頼人の家で頂いたようで、飲み物はお昼と一緒に提供する事が決まりました。
そうして十分後、三人と大福くんが帰ってきました。
怪我をした様子もなく、トラブルに巻き込まれる事もなかったようです。
私はおかえりなさいと言うと、ルイスから昼食の入った紙袋を受け取って、エッシちゃんと一緒に昼食の準備をしました。
ルイスが戻ってくると、私と同じ事を聞いてロジェさんに答えて貰っていました。
ルイスは立っているサンくんに座るよう声をかけると、サンくんはルイスに御礼を言って隣に座りました。
二人を微笑ましく見ていると、大福くんがサンくんの足元にやって来ました。
大福くんは愛くるしい表情でサンくんをじっと期待の眼差しで見つめています。
優しいサンくんなら食べ物をくれるはずだと思っているようでした。
ルイスが大福くんに注意すると、大福くんは少しだけ右に移動しました。
どうやら正面で見つめると駄目だと判断して右に動いたようです。
私はルイスの注意が上手く伝わっていないのが面白くて、エッシちゃんと一緒に笑いました。
ベーグルサンドを食べていると、大福くんは次にブラッドくんの所に行ってじゃれ始めました。
エッシちゃんはその様子を見て犬が順位付けする話をしたのですが、ルイスがそれは違うという一説を話しました。
またエッシちゃんとブラッドくんのちょっとした言い合いが始まったので、私はまあまあと言って仲裁に入ります。
その後も会話は続いていましたが、ブラッドくんはシェルアさんに名前を呼ばれると固まっていました。
シェルアさんが仲がいいのは知っているから程々にと言うと、二人は声を揃えて仲良くないと訴えました。
喧嘩するほど仲がいい、というのでしょうか。
私には二人が仲良しに見えました。
二つ目のベーグルサンドを食べながらソファの上でくつろぐ大福くんを眺めていると、昼食を食べ終えたよもぎちゃんがやって来て、大福くんとじゃれあい始めました。
午後は依頼が入っていないので皆さんでゆっくり出来そうですねと何気なく言うと、ロジェさんはそうだといいけどと何故か言葉を濁しました。
何かあったのか聞くと、ロジェさんは以前の依頼で害虫駆除があったと話されました。
蜂か何かだと思っていたら毛虫だったようで、虫が苦手なロジェさんにはきつかったみたいです。
依頼はブラッドくんが完遂したようですが、ブラッドくんは一人で仕事をした事に不満を溢していました。
世間話の延長でエッシちゃんの虫嫌いを言うと、虫を見て気持ち悪くならないのか聞かれました。
私もルイスもボロ小屋に住んでいた過去があるので、虫は見慣れたものです。
いっぱいいたら多少不快には感じますが、それ以外は特にないと言うと、ルイスも私と同じように答えました。
サンくんはエッシちゃんに虫が得意か聞かれると、関わった記憶がないため得意でも苦手でもないと言っていました。
でも蝶々は知っているようでした。
エッシちゃんは目を輝かせながら地上を覚えているか聞きましたが、ブラッドくんが記憶喪失のサンくんに聞いてどうするとエッシちゃんを咎めました。
しかしブラッドくんは途中で言葉を止めると、何でもないと誤魔化しました。
よくない言葉を言おうとしていたようです。
私は二人を見ているサンくんに、こっそりこの流れはお決まりだと教えました。
ルイスが独り言のように地上は今どうなっているのか呟くと、シェルアさんはどうなっているんだろうと答えになっていない答えを言って、ロジェさんは色々変わっているか何も変わっていないかの二択を答えました。
三十年前は当然私達は生まれていません。
私は行った事のない地上の世界の話を聞いて、新鮮な気持ちになりました。
地上は最下層よりも平和らしく、ロジェさんが地上にいた頃は犯罪が起きたという話を聞かなかったそうです。
平和が羨ましいと言うと、ロジェさんはその代わり退屈だと苦笑しました。
シェルアさんからも以前聞きましたが、地上のルールは独特で、本やテレビ、映画、スポーツ等、冒頭と末尾には必ず才人の真似はしないようにという注意喚起があるそうで、学校ではテストの点数が平均点を大きく上回ると色々目をつけられてしまうとの事でした。
特に年に一度の凡人テストは地上にいる“才人”をあぶり出して地下へ落とす仕組みになっているらしく、毎年間引きが行われているようです。
聞くと結構恐ろしい話ですが、シェルアさんとロジェさんは何とも思っていない様子でした。
エッシちゃんがロジェさんはテストで全教科満点取ってそうだと言うと、ロジェさんは最初それをやって大変だったと答えました。
学校のテストは凡人テストと違って見逃して貰えるシステムのようです。
エッシちゃんはシェルアさんに学校のテストの点を聞いていましたが、シェルアさんは学校に通っていなかったからと困ったように答えました。
私は過去に聞いた専属の家庭教師の話を持ち出すと、ルイスが便乗してシェルアさんを結構なお嬢様だと言いました。
仮にも雇い主に対してその言動はどうなんだとルイスには言いたくなりましたが、シェルアさんは全く気にせず、むしろロジェさんをお坊ちゃまだとからかっていました。
巻き込まれたロジェさんは嫌そうな顔をしています。
ロジェさんは話を打ち切ると、今後の話を始めました。
サンくんはパンを喉に詰まらせたみたいでむせていましたが、ルイスが背中をさすると落ち着いたようでした。
気を取り直してロジェさんが話を再開すると、一丁の拳銃をサンくんに投げ渡しました。
サンくんは拳銃に触れた事がないようでかなり驚いていましたが、護身用だとわかるとスマホを持っているからと拳銃を返却しようとしました。
でもロジェさんに正論で問い詰められると、サンくんは意気消沈していました。
——ロジェさんは言葉が直球すぎるんですよね。
言葉のデッドボールを受けたサンくんを慰めようとすると、それより早くルイスがサンくんの肩を叩いてフォローしました。流石自慢の弟です。
ルイスに慰められてサンくんの表情がほんの少し明るくなりました。
私はサンくんの問いに頷くと、小さな声でロジェさんの厳しい言葉は一種の優しさだと伝えました。
エッシちゃんも頷いて同意を示します。
サンくんはその後持ち直したようで、ルイスから拳銃の使い方を教わっていました。
ブラッドくんがエッシちゃんを指差して、無闇矢鱈と発砲するなとサンくんに言っていましたが、エッシちゃんとまた口喧嘩に発展しました。
どうしようか迷っていると、見かねた大福くんが仲裁にブラッドくんのお腹に突進しました。
ブラッドくんが蹲るとエッシちゃんが次は頸動脈だと冗談を言っていましたが、ブラッドくんは殺す気かと怒っています。
よもぎちゃんは痛そうにお腹をさするブラッドくんをしばらく見つめると、ブラッドくんの膝に飛び乗りました。
どうやらよもぎちゃんなりにブラッドくんを慰めているようです。
ブラッドくんはよもぎちゃんを撫でると、仕返しとばかりに大福くんをからかいました。
大福くんはよもぎちゃんを取り返そうと切なげに鳴いていますが、当のよもぎちゃんは関心がないのか欠伸をしています。
エッシちゃんが注意するとブラッドくんは事実を言っているだけだと言い返して、二人は睨み合いました。
しかし地面が揺れると、それどころではなくなりました。
揺れはすぐに収まって、ロジェさんが今回はただの自然現象だと言いました。
するとサンくんが此処は地震が多いのかと疑問を口にしました。
シェルアさんはサンくんが初めての地震を怖がっていると思って心配していましたが、ロジェさんは地震の数は住んでいる場所によると冷静な回答をしました。
そしてロジェさんは地下の方が安全であるという諸説を話しました。
地上より地下の方が揺れが少なくて済むとの事でしたが、酸欠にある危険もあるそうなのであまり変わらないような気がしました。
エッシちゃんは最下層にいる時点で危険も何もないと尤もな事を言っています。
ロジェさんが笑うと、エッシちゃんは頬を赤く染めました。
此処は自然災害より事件事故が多いと手を打って言うと、ルイスはサンくんを怖がらせるなと私に注意しました。
完全に気が抜けていました。
謝るとブラッドくんが先程の私の発言に同意して、平和だったら警察はなくていいと話します。
ロジェさんは冗談混じりに僕の友人の一人が職を失う事になるなんて言っていました。
交友関係の話になると、ロジェさんはシェルアさんにあっち側に関わるなと釘を刺していましたが、シェルアさんは曖昧に笑っています。
きっとシェルアさんがまた危ない橋を渡ろうとしていたのでしょう。
下がった空気の温度をどうしようか考えていると、真っ先に動いたのは大福くんでした。
大福くんはロジェさんの所に行くと、無言で訴えたようです。
いじめた訳じゃないと言うロジェさんに、大福くんが不思議そうに鳴くと、シェルアさんは肩を震わせて笑っていました。
一気に空気が和むと、大福くんとよもぎちゃんはシェルアさんの所に走っていきました。
シェルアさんは二匹を撫でると、膝に乗せてパソコンの作業を再開しました。
腕の間から見える大福くんとよもぎちゃんが可愛らしいです。
明後日は区域清掃の依頼が入っているそうで、今回も人手不足が理由でした。
自治会のルールで家庭や会社の代表が最低一人参加するという条件ですが、皆さん様々な事情があって参加出来ない方が多いようです。
ブラッドくんは身体を存分に動かせない事に不満を露にしていました。
エッシちゃんが平和な証拠だと宥めていましたが、それでもブラッドくんは引き下がりません。
筋トレやゲームを勧められても反応はいまいちでした。
でもシェルアさんから組手の誘いを受けると、ブラッドくんは面白いくらい目を泳がせていました。
シェルアさんは完全な善意で言っているのでしょうが、ブラッドくんは女性に対して紳士なので組手なんてと思っているのでしょう。
私がそう言うとルイスとエッシちゃんは何故か不思議そうな顔をしました。
二人はブラッドくんをからかうのが好きなようです。
昼食後は依頼もなく、久々にのんびり過ごせました。
あまりに暇だったのでエッシちゃんと書類の整理をしながらお話して過ごしました。
ルイスはサンくんと一緒にゲームをして楽しんだようです。
帰りはスーパーへ寄って、シェルアさんの家で夕食を作りました。
皆で作って食べるのはやっぱり良いものです。
初日に比べるとルイスとサンくんはだいぶ仲良くなったようで、距離が近くなっていました。
——サンくん、これからもルイスと仲良くしてくださいね。
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