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流行病
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久々のチェスタ一家での一家団欒を終え、疲労でぐったりしていたセシルは早めに寝支度を整えベッドに横になっていた。
少し身構えて臨んだ晩餐だったが、ロイドはいつも通り温厚な様子で、時折ゾフィーに構って雷を落とされながらも、概ね和やかなひとときだったように思う。
(でも……フレデリックは相変わらず空気なのよね)
一応同席はするが、昔からフレデリックは両親と……特にゾフィーとの間に一線を引いている節があった。
まあバートン家では一家団欒など皆無だったので、あるだけマシといえなくもないが。
「なんだか怠いわね……ちょっと長湯しすぎたかしら……」
なにやら頭がぼうっとしてきて身体が妙に怠い。
今日はこのまま寝てしまおうとセシルは重い瞼を閉じた。
それからどれくらいの時間が経ったのか……額に感じる冷たい感触でセシルはふと目を覚ました。
「ん……? フレデリック?」
明るい金髪が目に飛び込んできて、眩しさに一瞬目が眩む。
どうやらフレデリックがセシルの額に手を乗せ、こちらの顔を覗き込んでいるようだ。
間近に迫るフレデリックの仏頂面をぼんやり眺めながら、セシルはふるふると小さく首を振る。
「無理……流石に今日は無理よ……」
「馬鹿か、お前二日も意識を失ってたんだぞ」
「え……?」
少し寝て起きたくらいの感覚だったが、まさか二日も意識を失っていたとは驚きだ。
「皇都での流行病らしい」
「嘘……早く離れてよ、伝染るでしょ」
セシルが力の入らない手でフレデリックの胸を押すと、フレデリックは実に憎々しげに顔を歪めた。
「……今更遅い。二日間お前の世話をしたのはこの俺なんだからな」
「…………なんの、冗談?」
「ああ、本当冗談ならよかったのにな。運悪く最初に発見したのが俺だったから、そのまま一緒に隔離されたんだよ」
ちっと舌打ちをしつつ、フレデリックは苛立たしげに髪を掻き上げる。
「最初に発見って……まさか夜這いにでも来たわけ?」
「ああそのまさかだ。結局それどころじゃなかったけどな」
悪びれもせずしれっと告げながら、フレデリックはセシルの隣にゴロリと寝転がった。
「……熱さえ下がれば数日で回復するそうだ」
「そう……迷惑をかけたわね、ごめんなさい」
しおらしく詫びるセシルの額をフレデリックは指先で軽く小突いた。
「万が一俺が発症したら今度はお前が看病する番なんだ、せいぜい覚悟しとけよ」
「え……」
そこそこ広い部屋とはいえ、何日もフレデリックと二人きりで閉じ込められるなんて……嫌だ、考えただけで発狂しそうだ。
いや、フレデリックの話が本当なら、彼は現在進行形でその苦痛に耐え続けているということになる。
改めて申し訳ない気分になり、セシルはフレデリックに頭を下げた。
「あなたも不運だったわね。ごめんなさい、と、その…………ありがとう……」
「何素直になってんだ、気持ち悪いな」
いつもの憎まれ口も、今は不思議と腹が立たなかった。
それよりも、(嫌々ながらも)この男が二日も付ききりで世話をしてくれた衝撃のほうが大きい。
セシルはフレデリックに背を向けるよう寝返りを打ち、ほうっと息を吐いた。
「……治るまであと数日はかかるんでしょ? なら意地なんて張ってられないじゃない」
「ああ、実に賢明だ。俺が発症したら更に延びるんだからな」
「そうなったら……ちゃんと看病させてもらうわよ。あなたに借りは作りたくないし」
「借り?」
はっと嘲笑しながらフレデリックは背後からセシルをすっぽりと抱きすくめる。
「そんなものはいいから、早く良くなってやらせろよ」
「なっ……」
「お前体だけは最高だからな」
あまりにも最低な発言にげんなりし、腿にあたる硬い感触に更にうんざりする。
うっかり感動してしまった数秒前の自分をことごとくすり潰して消してしまいたい。
「……病人を犯すほどの鬼畜じゃなくて幸いだわ」
「鬼畜になっても俺は構わないけど?」
「せ、せめて治るまでは待ってよ、お願い……」
必死な様子のセシルがおかしかったのか、フレデリックはくっくと笑いながら鼻先を項に擦り付けた。
「弱ったお前を甚振ってもつまんないだろ。食欲は?」
「あ……ちょっとお腹空いてるかも?」
「いい兆候だ。早く体力戻せよ」
俺のためにも、と付け足された言葉は聞かなかったことにする。
フレデリックはベッドから降り、扉を閉ざしたまま向こう側に常駐しているらしい使用人に食事や薬の指示を出していた。
どうやら二人が徹底的に隔離されているのは事実らしい。
使用人との直接の接触も許されていないということは、フレデリックが何から何までセシルの世話をしたという話は本当なのだろう。
(信じられない……あのフレデリックが私の世話を焼くなんて……)
それから食事が運ばれてくるまでの数分間、セシルはぼうっとフレデリックの姿を夢現の気分で眺めていた。
放置することだってできたのに、見捨てずにいてくれたことがいまだに信じられない。
「起き上がれるか」
いつの間にかフレデリックは食事の乗ったトレイを手に戻り、一旦サイドテーブルの上に乗せた。
そしてセシルの背に腕を差し入れ、そっと上体を起こす手助けをしてくれる。
「……ありがとう」
枕をクッション代わりにもたれながら、セシルはフレデリックを見上げた。
不機嫌そうにむっつりと押し黙っているが、病人だからか信じられないほど優しい。
差し出されたスープを受け取りながら、やはり現実とは思えなくて、セシルはぼんやりしながら匙を口に運んだ。
スープを飲み終えた頃、ちょうどいいタイミングで医者が往診にやってきた。
そしてひととおり診察を終えた後、夜に熱が上がるかもしれないが峠は越えたと太鼓判を押してくれた。
どうやら医者の話では、この流行病は治療が遅れれば命にも関わる危険なもので、患者は発症から五日間、被接触者は三日間徹底的に隔離措置を取っているらしい。
しかしフレデリックのように被接触者が患者と同室に隔離される例はないそうで、医者も困惑していた。
もしかしたらゾフィーの決定なのかもしれないと思い至り、セシルは改めてフレデリックに申し訳なく思った。
普通なら使用人か専門の看護人をつけるはずなのに、何故たった一人の後継者を危険に晒してまで世話をさせるのか。
(ラースが言っていたように、お父様に何か弱みでも握られているのかしら?)
ここでふと、ラースに調査を依頼していたことを思い出した。
しかしこの医者の徹底ぶりを見るに、ラースやチェスター夫妻も隔離されている可能性が高い。
(不可抗力とはいえなんて罪深いことを……皆に申し訳ないわ……)
やるせない自己嫌悪に陥りながら、セシルは医者からの細々とした助言を殊勝に受け止めていた。
「あと三日は絶対安静に」と念を押しつつ医者が去ったあと、セシルはベッドに横になりながら、隣で本を読みはじめたフレデリックの横顔をぼんやり眺めていた。
(眼鏡をかけてるの、はじめて見たわ)
いつからかけていたのだろう。
普段の百倍は知的に見え、悔しいがとてもよく似合っている。
(私ってフレデリックのこと、何も知らないのね……)
お腹が満たされ、薬も効いてきたせいか段々と瞼が重くなってくる。
セシルはそのままうとうとと、迫り来る心地よい睡魔に身を委ねた。
「あつ、い……」
目覚めた時感じたのは耐え難いほどの火照りだった。
頭は靄がかかったように不明瞭で、身体中から吹き出す汗が不快で気持ち悪い。
「ふれ、でりっ……く?」
そんなセシルの寝衣を剥ぎ、タオルで拭ってくれるフレデリックの姿が目に入った。
信じられない……生きている間にフレデリックのこんな献身的な姿を見られるなんて。
「私……死ぬの、かな」
「は?」
眉間に深い皺を刻みながらも、フレデリックの手は意外にも優しい。
「……」
熱に浮かされているせいかとても現実とは思えなくて、セシルはぼうっとその光景を眺めていた。
一通り汗を拭われさっぱりしたところで、フレデリックの腕が背に差し入れられた。
そしてそのままセシルを抱き起こし、汗で濡れた寝衣を片手で器用に脱がせる。
セシルはフレデリックの胸に頭をもたれながら、なんだか甘えたいような不思議な気持ちになってフレデリックの腰にしがみついた。
「おい、離れろ。着替えさせられないだろ」
「うん……」
素直に頷きながらも、熱に浮かされおかしくなっているのか心細くなっているのか……セシルはこの手を離したくなかった。
「セシル」
「少しだけ……このままで……」
ただでさえ正常な判断ができないのに、フレデリックが優しいから完全に調子が狂ってしまっている。
「……分かったから、ひとまず服だけは着ろ」
セシルは再度うん、と頷きフレデリックから手を離した。
フレデリックはゆったりとしたネグリジェを頭からすっぽりと被せ、セシルの背を支えるように抱いた。
硬い胸板に頭をもたれながら、セシルもフレデリックの背にしがみつく。
セシルのことを嫌いで仕方ない男なのに、守られているような安心感を覚えるのは何故だろう。
――俺を愛したセシル・バートンなど……きっとつまらな過ぎて捨てたくなるだろうな。
どうして今、あの時の言葉を思い出すのか……
「フレデリック……」
「なんだよ」
「眠るまで……こうしてて……」
すべて流行病のせいだ。
体が弱っているから心もどうかしてしまっているに違いない。
今頼れるのはこの人しかいないのだから当然のことだ。
「……仕方ないな」
フレデリックの温もりを全身に感じながら、セシルは霞みはじめた視界をそっと閉ざした。
少し身構えて臨んだ晩餐だったが、ロイドはいつも通り温厚な様子で、時折ゾフィーに構って雷を落とされながらも、概ね和やかなひとときだったように思う。
(でも……フレデリックは相変わらず空気なのよね)
一応同席はするが、昔からフレデリックは両親と……特にゾフィーとの間に一線を引いている節があった。
まあバートン家では一家団欒など皆無だったので、あるだけマシといえなくもないが。
「なんだか怠いわね……ちょっと長湯しすぎたかしら……」
なにやら頭がぼうっとしてきて身体が妙に怠い。
今日はこのまま寝てしまおうとセシルは重い瞼を閉じた。
それからどれくらいの時間が経ったのか……額に感じる冷たい感触でセシルはふと目を覚ました。
「ん……? フレデリック?」
明るい金髪が目に飛び込んできて、眩しさに一瞬目が眩む。
どうやらフレデリックがセシルの額に手を乗せ、こちらの顔を覗き込んでいるようだ。
間近に迫るフレデリックの仏頂面をぼんやり眺めながら、セシルはふるふると小さく首を振る。
「無理……流石に今日は無理よ……」
「馬鹿か、お前二日も意識を失ってたんだぞ」
「え……?」
少し寝て起きたくらいの感覚だったが、まさか二日も意識を失っていたとは驚きだ。
「皇都での流行病らしい」
「嘘……早く離れてよ、伝染るでしょ」
セシルが力の入らない手でフレデリックの胸を押すと、フレデリックは実に憎々しげに顔を歪めた。
「……今更遅い。二日間お前の世話をしたのはこの俺なんだからな」
「…………なんの、冗談?」
「ああ、本当冗談ならよかったのにな。運悪く最初に発見したのが俺だったから、そのまま一緒に隔離されたんだよ」
ちっと舌打ちをしつつ、フレデリックは苛立たしげに髪を掻き上げる。
「最初に発見って……まさか夜這いにでも来たわけ?」
「ああそのまさかだ。結局それどころじゃなかったけどな」
悪びれもせずしれっと告げながら、フレデリックはセシルの隣にゴロリと寝転がった。
「……熱さえ下がれば数日で回復するそうだ」
「そう……迷惑をかけたわね、ごめんなさい」
しおらしく詫びるセシルの額をフレデリックは指先で軽く小突いた。
「万が一俺が発症したら今度はお前が看病する番なんだ、せいぜい覚悟しとけよ」
「え……」
そこそこ広い部屋とはいえ、何日もフレデリックと二人きりで閉じ込められるなんて……嫌だ、考えただけで発狂しそうだ。
いや、フレデリックの話が本当なら、彼は現在進行形でその苦痛に耐え続けているということになる。
改めて申し訳ない気分になり、セシルはフレデリックに頭を下げた。
「あなたも不運だったわね。ごめんなさい、と、その…………ありがとう……」
「何素直になってんだ、気持ち悪いな」
いつもの憎まれ口も、今は不思議と腹が立たなかった。
それよりも、(嫌々ながらも)この男が二日も付ききりで世話をしてくれた衝撃のほうが大きい。
セシルはフレデリックに背を向けるよう寝返りを打ち、ほうっと息を吐いた。
「……治るまであと数日はかかるんでしょ? なら意地なんて張ってられないじゃない」
「ああ、実に賢明だ。俺が発症したら更に延びるんだからな」
「そうなったら……ちゃんと看病させてもらうわよ。あなたに借りは作りたくないし」
「借り?」
はっと嘲笑しながらフレデリックは背後からセシルをすっぽりと抱きすくめる。
「そんなものはいいから、早く良くなってやらせろよ」
「なっ……」
「お前体だけは最高だからな」
あまりにも最低な発言にげんなりし、腿にあたる硬い感触に更にうんざりする。
うっかり感動してしまった数秒前の自分をことごとくすり潰して消してしまいたい。
「……病人を犯すほどの鬼畜じゃなくて幸いだわ」
「鬼畜になっても俺は構わないけど?」
「せ、せめて治るまでは待ってよ、お願い……」
必死な様子のセシルがおかしかったのか、フレデリックはくっくと笑いながら鼻先を項に擦り付けた。
「弱ったお前を甚振ってもつまんないだろ。食欲は?」
「あ……ちょっとお腹空いてるかも?」
「いい兆候だ。早く体力戻せよ」
俺のためにも、と付け足された言葉は聞かなかったことにする。
フレデリックはベッドから降り、扉を閉ざしたまま向こう側に常駐しているらしい使用人に食事や薬の指示を出していた。
どうやら二人が徹底的に隔離されているのは事実らしい。
使用人との直接の接触も許されていないということは、フレデリックが何から何までセシルの世話をしたという話は本当なのだろう。
(信じられない……あのフレデリックが私の世話を焼くなんて……)
それから食事が運ばれてくるまでの数分間、セシルはぼうっとフレデリックの姿を夢現の気分で眺めていた。
放置することだってできたのに、見捨てずにいてくれたことがいまだに信じられない。
「起き上がれるか」
いつの間にかフレデリックは食事の乗ったトレイを手に戻り、一旦サイドテーブルの上に乗せた。
そしてセシルの背に腕を差し入れ、そっと上体を起こす手助けをしてくれる。
「……ありがとう」
枕をクッション代わりにもたれながら、セシルはフレデリックを見上げた。
不機嫌そうにむっつりと押し黙っているが、病人だからか信じられないほど優しい。
差し出されたスープを受け取りながら、やはり現実とは思えなくて、セシルはぼんやりしながら匙を口に運んだ。
スープを飲み終えた頃、ちょうどいいタイミングで医者が往診にやってきた。
そしてひととおり診察を終えた後、夜に熱が上がるかもしれないが峠は越えたと太鼓判を押してくれた。
どうやら医者の話では、この流行病は治療が遅れれば命にも関わる危険なもので、患者は発症から五日間、被接触者は三日間徹底的に隔離措置を取っているらしい。
しかしフレデリックのように被接触者が患者と同室に隔離される例はないそうで、医者も困惑していた。
もしかしたらゾフィーの決定なのかもしれないと思い至り、セシルは改めてフレデリックに申し訳なく思った。
普通なら使用人か専門の看護人をつけるはずなのに、何故たった一人の後継者を危険に晒してまで世話をさせるのか。
(ラースが言っていたように、お父様に何か弱みでも握られているのかしら?)
ここでふと、ラースに調査を依頼していたことを思い出した。
しかしこの医者の徹底ぶりを見るに、ラースやチェスター夫妻も隔離されている可能性が高い。
(不可抗力とはいえなんて罪深いことを……皆に申し訳ないわ……)
やるせない自己嫌悪に陥りながら、セシルは医者からの細々とした助言を殊勝に受け止めていた。
「あと三日は絶対安静に」と念を押しつつ医者が去ったあと、セシルはベッドに横になりながら、隣で本を読みはじめたフレデリックの横顔をぼんやり眺めていた。
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(私ってフレデリックのこと、何も知らないのね……)
お腹が満たされ、薬も効いてきたせいか段々と瞼が重くなってくる。
セシルはそのままうとうとと、迫り来る心地よい睡魔に身を委ねた。
「あつ、い……」
目覚めた時感じたのは耐え難いほどの火照りだった。
頭は靄がかかったように不明瞭で、身体中から吹き出す汗が不快で気持ち悪い。
「ふれ、でりっ……く?」
そんなセシルの寝衣を剥ぎ、タオルで拭ってくれるフレデリックの姿が目に入った。
信じられない……生きている間にフレデリックのこんな献身的な姿を見られるなんて。
「私……死ぬの、かな」
「は?」
眉間に深い皺を刻みながらも、フレデリックの手は意外にも優しい。
「……」
熱に浮かされているせいかとても現実とは思えなくて、セシルはぼうっとその光景を眺めていた。
一通り汗を拭われさっぱりしたところで、フレデリックの腕が背に差し入れられた。
そしてそのままセシルを抱き起こし、汗で濡れた寝衣を片手で器用に脱がせる。
セシルはフレデリックの胸に頭をもたれながら、なんだか甘えたいような不思議な気持ちになってフレデリックの腰にしがみついた。
「おい、離れろ。着替えさせられないだろ」
「うん……」
素直に頷きながらも、熱に浮かされおかしくなっているのか心細くなっているのか……セシルはこの手を離したくなかった。
「セシル」
「少しだけ……このままで……」
ただでさえ正常な判断ができないのに、フレデリックが優しいから完全に調子が狂ってしまっている。
「……分かったから、ひとまず服だけは着ろ」
セシルは再度うん、と頷きフレデリックから手を離した。
フレデリックはゆったりとしたネグリジェを頭からすっぽりと被せ、セシルの背を支えるように抱いた。
硬い胸板に頭をもたれながら、セシルもフレデリックの背にしがみつく。
セシルのことを嫌いで仕方ない男なのに、守られているような安心感を覚えるのは何故だろう。
――俺を愛したセシル・バートンなど……きっとつまらな過ぎて捨てたくなるだろうな。
どうして今、あの時の言葉を思い出すのか……
「フレデリック……」
「なんだよ」
「眠るまで……こうしてて……」
すべて流行病のせいだ。
体が弱っているから心もどうかしてしまっているに違いない。
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「……仕方ないな」
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