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胸に暖かい温もりを感じて目が覚めた。視界に飛び込んできたのは光り輝くようなプラチナブロンド。
ああ、と思い出す。

一緒に寝て欲しいとしつこいアウリスのおねだりに、セリシティアンが押し負けて共寝してくれたのだった。

離すまいとするかのように、寝た時同様アウリスはセリシティアンをしっかりと腕に抱いていた。

少し身を離してセリシティアンの顔を眺める。こうして改めてゆっくり顔を見るのは初めてかもしれない。

セリシティアンは美しい。
これまで美しい女はたくさん見てきたけれど、彼女の美しさはどこか浮世離れしていた。

造作の美しさはさることながら、例えるなら精霊や天使のように清らかで尊い、そんな清廉な気を纏っている。

実際彼女は天使のように慈悲深く情に脆い。だから気を許した者には線引きをしたギリギリの境界まで侵入を許してしまうのだろう。

付け込んでいる自覚はある。
どこまで許してくれるのかと試している自覚も。

卑怯だと分かってはいても近づきたくて、もっと深いところに触れたくて堪らないのだ。

これは初めての女故の執着なのだろうか。そう考えた時、強烈な違和感が湧く。違う、そんな生やさしいものではない。

諦められた命に、こんなにも誠意を尽くし情細やかな慈悲を与えられ、どうして心動かされずにいられようか。

感情の呼び名などどうでもいい。
ただ自分はこの女に堪らなく惹かれている、それだけだ。

「ん……」

抱きしめる腕につい力が篭っていたらしい。セリシティアンが苦しげに身じろいだ。

「アウリス、起きていたか。おはよう」

半覚醒なのか無防備にふにゃっと笑うセリシティアン。

可愛い過ぎる……

大分回復した体は明確な肉欲を伝えるけれど、ぐっと堪えてちゅっと額に軽くキスをする。

「おはようセリ」

「うむ、大分顔色が良いな」

そう言って起き上がると、セリシティアンは昨日のようにクルっと空に円を描いた。次の瞬間掌の上にはホカホカの緑色の物体が。

アウリスは虚無の表情になる。

「分かる、気持ちは分かるぞ。じゃがな、これが最後故我慢するのじゃ」

忍耐強いアウリスは、半ば嘔吐きながら3分の2も平らげた。
セリシティアンが、「こんなに飲んでくれた人は初めてじゃ!」と大いに喜び褒めてくれたので良しとした。

それにしてもあのスープには睡眠作用でもあるのだろうか。また少し寝るようにと促され、アウリスはストンと深い眠りに落ちていた。
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