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ちょっと前までなら、そんな馬鹿なと思っていたところだが、今のアリーチェは……。
(色々ありすぎたわね)
「あの、アリーチェ様」
「何かしら?」
「あの、アリーチェ様の祖国で人気のぬいぐるみが売っていると聞いたのですが」
「ぬいぐるみ??」
フィリベルトと色々話した後で、他の令嬢に声をかけられたアリーチェはきょとんとした。
(もしかして……)
「えっと、手触りの良い動物のぬいぐるみのこと?」
「っ、それです! とても人気だとか」
「そう、みたいね」
アリーチェは、色々あった時に我が家が、それに埋め尽くされかけたとは言わなかった。占領されたのは、アリーチェの部屋と2部屋だけだ。
その後、ダブったぬいぐるみたちは、大事にしてくれる令嬢やら夫人が見つかったが、爆発的な人気となっていることをアリーチェは知らなかった。
しかも、その令嬢いわく、それをプレゼントされると幸運が訪れるのだとか。
(幸運??)
アリーチェは、これまた知らないが、アリーチェが欲しがっていた令嬢たちにあげた令嬢たちが、望む幸運を大小で叶えたらしく、それが隣国まで届いていることを知りもしなかった。
どうやら、母親譲りで上手くいく、いかないがわかるだけでなく、人に幸運をもたらすことまでできるようだ。だが、それを本人が気づくことはなかった。
母は、アリーチェからぬいぐるみをかなりの数もらったことで、医者が驚くほどの回復っぷりを遂げていたようだが、それにも気づいていなかった。
「アリーチェ様。そのぬいぐるみを購入したいんです。お店を教えていただけませんか?」
「……」
そう言われて、アリーチェは記憶を大急ぎで掘り起こした。お礼の手紙をもらったのを思い出して、そこに行き着いて、名前を口にした。
それをその令嬢だけでなくて、他の令嬢や子息たちも聞いているとは思いもしなかった。
そして、ここでもそのぬいぐるみが爆発的な人気となることをこの時のアリーチェは知りもしなかった。
「あの、ぬいぐるみの種類とかって、わかりますか?」
「えっと、値段とかはわからないのだけど」
大きさと動物のことやらを話した。それが難なく話せたのは、アリーチェの部屋に飾られていたからだ。
留学しに来たアリーチェは、ぬいぐるみの布教に来たみたいになってしまったが、それでまたお店からお礼の手紙がアリーチェのところに来たが……。
「私、特に何もしていないんだけどな」
アリーチェは、お礼をされる理由がわからないままだった。
それを見ていたフィリベルトは……。
「君は、そういう人みたいだね」
「??」
フィリベルトの言葉の意味が、アリーチェにはわからなかった。そんな姿を見てフィリベルトはにこにこしていた。その姿は、アリーチェの母によく似ていた。
よくわからないが、フィリベルトはアリーチェのことを物凄く気に入ってくれたらしく、彼が令嬢をそこまで気に入るのは珍しいからと彼の養父母はアリーチェを逃がすまいと婚約することになるまで、あっという間のことだった。
(私は、このパターンで婚約するのね)
外堀を埋められて、アリーチェは婚約することになって苦笑してしまったが幼なじみと婚約した時よりも、頭を抱えることはなかった。
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