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しおりを挟む(エルネスト様が、元王女と離婚するなんて思わなかったわ。結婚する前に婚約が解消されるか。破棄されると思っていたのが、そうならなかったから、上手くいっているのかと思っていたのに)
アリーチェは、フィリベルトと婚約してからも兄がしつこくしていて、留学期間が終わってからもフィリベルトの養父母のところで花嫁修業をさせてもらうことにして、こちらの学園に通い続けて戻らなかった。
兄とは、お互いの結婚式の時に会った。
でも、2度目の兄の結婚の時は会いに行くことはなかった。丁度、臨月だったのだ。しかも、双子で会いに行くなんて出産後も忙しすぎてできなかった。
「アリーチェ嬢によく似ているな」
「そうですか?」
「あぁ、よく似ている」
エルネストは離婚しても再婚をする気はないようで、フィリベルトとアリーチェの様子を見に息子を連れてやって来た。
(今では義理でも、エルネスト様がお兄様になったのよね)
不思議なものだと思っていた。フィリベルトは、双子の兄と見た目はそっくりでも、中身や話し方が違うのもありエルネストの息子が驚いていたのも束の間で、すっかり懐いていた。
「あかちゃん、かわいい」
「ふふっ、そうですね」
養子となっていても、兄の息子は可愛い甥っ子だ。両親が離婚して寂しがっているかと思いきや息子の方は……。
「ははうえは、あそんでくれないし、おはなしきいてくれたことないから」
いなくても、隣にいても変わらないと言いたいようだ。
それを聞いてエルネストはいたたまれない顔をしていた。
「でも、ちちうえは、いそがしいのにぼくのはなしをきいてくれる」
「そうなのですね。どんなお話をしているのかしら? 私にも教えてくれる?」
「いいよ!」
満面の笑顔で、アリーチェと双子たちにも話をしてくれた。
それをフィリベルトとエルネストは、微笑ましそうに見ていた。
それを耳にしたアリーチェの兄は、妹と会っているのに腹を立てて、久々にパーティーで出会った時にいつもの調子で叩いたところを多くの者に目撃され、アリーチェの兄夫妻がパーティーに呼ばれることはそれまで以上き激減していくことになった。ロベルタはお茶会でも滅多なことで呼ばれることはなくなって、夫妻は不満ばかりが募っていくことになったが、そんな2人をわざわざ助けようとする者は現れなかった。
アリーチェの兄は、再婚することになってから両親は息子に爵位を譲って、田舎に引っ込んで父は妻を独占できて喜んでいた。母も、自然豊かなところで、身体が弱かったとは思えないアクティブなことを満喫して、それに付き合っている父がバテ気味になっているようだ。
アリーチェは、しっくりくる夫と結婚して、理想そのものも義理の兄ができて、仲睦まじい夫婦として、色んな人たちに羨ましがられ、目標のように思われるようになり、笑顔溢れる人生を送ることができたのだった。
ちなみに双子の出産祝いにぬいぐるみが、販売しているところから贈られてきて、子供たちがそれを気に入ってどこでも持ち歩くことで、これまた人気になって、よく売れている商品になっていくことにアリーチェは気づくことはなかった。
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