前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら

文字の大きさ
79 / 99
第3章


リュシアンは、時間が許す限り、フィオレンティーナの側にいた。本当なら、ずっと側にいたいが、王が特例として認めてくれないせいで、移動するのに体力を奪われ始めていた。

そんな時にノックの音がした。オギュストが来たのかと思えば、扉の向こうには違う人がいた。


「見習いか。確か名前は……」
「コルラードです。あの、これをお部屋に」
「花かごとそれは……?」
「壁掛けです」
「……これも、考えたのか?」


リュシアンは、それをしげしげと見ていた。妖精たちは、ちらちらとフィオレンティーナを気にして、そわそわしていたが、大人しくしようとしていた。


「フィオレンティーナ様が、アイディアを出してくれていて、屋内、屋外でも飾れるものを考えてくれてたんです」
「そうか。こっちは、私が持つ。そちらを飾ってくれ」
「え? でも……」


フィオレンティーナの部屋に入れる者は限られていた。部屋どころか。屋敷に入れない者もいるようだ。誰とは言わないがいた事に驚いたほどだ。あちらは入れないのではなく、用事を思い出して帰ったことにしたようだが、そんなのを婚約者候補に寄越したらしく、そもそもフィオレンティーナのいる部屋までたどり着けてすらいないのだ。

フィオレンティーナのところに婚約者になろうとして、やって来る者たちは恥をかく危険性があるとわかり尻込みし始めてもいた。

それをコルラードは聞いたようだ。そばに寄っても、近づけない者もいた。頑張れば頑張るほど遠ざかると言えばいいのか。

オギュストは面白いなと見ていたが、そんなこと言っていられなくなっているのだが、自分の屋敷が古い魔法で強化されたようになったのだ。

それで、誰が入れなかったかも密かにチェックされていた。


「君はフィオレンティーナとは、前々から仲良くしていた。入っても大丈夫だ」
「し、失礼します」


コルラードは、花の守り手となったフィオレンティーナに会うのは初めてだった。駆け寄って、その手を取りたいと思ったが、そんなことが許される身分ではない。顔をまじまじと見ることすら、もう難しいのだ。

そのため、そちらを見ていられないとコルラードは飾ることに集中していた。フィオレンティーナが、ベッドから起き上がって見るのに丁度良さそうなところに飾った。

花の守り手となった証の蔦が、ぴくりと反応した。それをリュシアンは、見逃さなかった。


「待て」
「っ、」
「飾ったら、こちらに来てくれ」
「え? あ、はい」


コルラードは、壁掛けをフィオレンティーナの見やすいところに飾って、リュシアンに言われるままに移動した。

すると蔦が、見習いに反応したのだ。


「驚いた。君は、血が濃いのか?」
「えっと、あの、母方にこちらから駆け落ちした女性がいるようですけど」
「駆け落ち……?」


それを聞いて、リュシアンはとある家系を思い浮かべた。それだけ、有名だったのだ。


「“理事長を呼んでくれ。新しい婚約者を見つけた”」
「あ、あの」
「緊急事態だ。君にも、婚約者になってもらう」
「は? え? お、俺が?」


コルラードは、敬語を覚えてから私と言っていたが、俺とつい言ってしまっていた。

すると理事長が、リュシアンの声を聞いてすっ飛んで来た。大慌てで来たのが丸わかりな格好で、コルラードはぎょっとした。

だが、リュシアンは見慣れているのか。それどころではないのか全く気にしていなかった。

そして、リュシアンの話を聞いたオギュストは、この状況を見て頷いた。


「そこの家系なら、血が濃く現れても無理ないな。すぐに準備しよう」
「あの、でも」
「フィオレンティーナ様の命に関わるんだ。あとで解消できる」
「え? 解消できるんですか?」
「私とも、解消できるようにしてある。フィオレンティーナ様が目覚めてから本当の婚約者を選出する。まずは、蕾をつけることが先決だ。花の守り手の命に関わることだ」
「……わかりました」


見習いは、ぷるぷるしながらサインをした。そんなことで、文字を習って来たわけではないのだが、大事な書類にサインすることになって緊張していた。

蔦が震えて、小さな小さな蕾が生まれた。


「よかった」


小さくとも、蕾ができたことに妖精たちは狂喜乱舞した。その喜びようは凄まじいものがあった。

その知らせが瞬く間に国中に広まったのも、妖精たちのなせる技だ。

それに喜ぶ面々だけではなかった。


「は? 花の守り手の婚約者が、庭師見習いに決まっただと?!」
「庭師の見習い風情に負けたってこと……?」


王の息子であるリュシアン以外の王子たちは、その知らせに苛立っていた。


「あいつだけでなくて、見習いの庭師ごときが選ばれるなんて……」
「今回の花の守り手って、人間なんでしょ? 妖精の縁もないんだからさ。仕方がないのかもよ?」
「下手なこと言わない方がいい。花の守り手を侮辱していると取られたら、大変だぞ」
「だけど」
「目覚めたら、変わるさ」


王子たちと違い、キャトリンヌの弟であるアシル・ドルブリューズは、余裕な顔をしていた。

フィオレンティーナの婚約者になれずにいたことで、アシルは腸を煮えさせていた。目の前の従兄弟たちである王子たちと違い、余裕そうにしているが、人間に侮辱されたと思っていた。

彼なのだ。オギュストの屋敷にすら入ることができなかった1人だ。姉が、妖精の血が濃いのに対して、弟のアシルは薄いというよりも、歪んでいるとか。淀んでいると言った方が正しい。

彼は人間が何より嫌いなのだ。妖精の縁もないのに花の守り手になったことも、何かしらあってのことだと勘ぐってすらいた。

更には、誰も彼もが騙されているんだとすら思っていた。

それは全て、フィオレンティーナの側に近づくことすらできなかった屈辱的な目にあってから、なお一層強くなっていた。そんな彼の側に妖精が近づくことはなくなっていたが、アシルは気にもしていなかった。

どこぞの姉と同じことが起きていたが、本人は何が起こっているかに気づいていなかった。

アシルは、姉を嫌っていて寮生活をしていて家にも寄り付かなくなっていたため、彼の両親は息子がそんな風になっていることに全く気づいていなかった。

姉のキャトリンヌは、妖精の血が濃いのもあり、気づいていたが自業自得だと思っていて悪化していくばかりとなった。


あなたにおすすめの小説

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

妹に全て奪われて死んだ私、二度目の人生では王位も恋も譲りません

タマ マコト
ファンタジー
【高評価につき21話〜43話執筆も完結】 第一王女セレスティアは、 妹に婚約者も王位継承権も奪われた祝宴の夜、 誰にも気づかれないまま毒殺された。 ――はずだった。 目を覚ますと、 すべてを失う直前の過去に戻っていた。 裏切りの順番も、嘘の言葉も、 自分がどう死ぬかさえ覚えたまま。 もう、譲らない。 「いい姉」も、「都合のいい王女」もやめる。 二度目の人生、 セレスティアは王位も恋も 自分の意思で掴み取ることを決める。 だが、物語はそこで終わらない。 セレスは理解している。 本当の統治は、即位してから始まる。 壊れた制度の後始末。 王太子という肩書きの再定義。 影で生きてきた者たちの行き先。 腐敗を一掃した後に残るものを、どう生かすか。 それを選ぶのが、女王セレスティアの次の戦いだった。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!