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第3章
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掻い摘んで聞く限り、妖精の縁のある者たちが住まう国では、フィオレンティーナの存在は吉慶のようだ。本人は、どれほどのものなのかがさっぱりわからないが。
「君は人間のようだが、花をとても大事にして寄り添い続けて来てくれていた。だから選ばれたんだろう」
「……」
リュシアンの言葉にフィオレンティーナは……。
(転生前のおばあちゃんは、ここから、あちらに行ったようだけど……。今の私は、転生してるわけだから、この身体には、妖精との縁はないってことになるのかな?)
そんなことを思っていた。しかも、花の守り手となったのを双子の妹であるチェレスティーナ・アルタヴィッラの方だと勘違いした両親に勘当され、家の迷惑だと国からも出て行けと言われたと聞いて、フィオレンティーナは遠い目をしてしまった。
(あの人たちなら、やりかねないわね)
フィオレンティーナは、その場にいたのかはわからないが寝ていたというか。気絶していたというか。意識がなかったはずだが、目を閉じると想像できてしまうことに何とも言えない表情をしていた。
「さっさとサインをしたことと君が、心を痛めてしまったことと妖精の縁がないことで、生死の境を彷徨っていたんだ。そのために縁をつけるのに私の養子に迎えて、婚約者もつけた」
「……婚約者?」
フィオレンティーナは、オギュストの言葉にこれまでで一番驚いた顔をして、目をパチクリとしてしまった。養子のことより、そちらだ。
「リュシアンと見習いの彼だよ。二人を婚約者にして、ようやく蕾がついたんだ。本当は、もっとつけたいところだったんだが、選ばれたのは二人だけだったんだ」
「選ばれた……? えっと、それって……」
「その蔦だよ」
「……」
フィオレンティーナの動揺など、何のそので、蔦はフィオレンティーナの手首でうにょうにょしていた。これが、蕾がつくまで、くったりしていたとは思うまい。
(ちょっと、可愛いかも)
普通なら、気持ち悪いと言いそうだが、フィオレンティーナは喜んでいるように見えたため、そんなことを思ってしまった。
しかも、可愛いと心で思ったことが通じたのか。益々元気になって、ビチビチと動いた。
それは、何やら猫の尻尾のようだ。いや、この場合は犬の尻尾かも知れない。
「……」
「やはり、フィオレンティーナ様が目覚めたことが嬉しいようですね」
(うん。喜んでるんだよね)
フィオレンティーナは、何とも言えない表情のまま、蔦から部屋の人たちへと向けた。その中で、リュシアンをじっとフィオレンティーナは見つめることになった。彼の顔色が、この部屋の誰よりもよくないように見えたのだ。
「……それでだ。その、君が生死の境を彷徨っていた時の緊急事態だったから、仮の婚約者となっただけで、君が気に入らなければ……」
「あの、大丈夫、ですか?」
「っ、」
リュシアンは、眠気が襲ってきたようで崩れ落ちるように眠ってしまった。
どうやら、1か月半も足繁く通ってできる限り側にいてくれたようだ。つまり、最低限しか寝ていなかったようだ。
それを聞いて、フィオレンティーナが世話をやこうとしたが、そんなこと花の守り手がすることじゃないからと言われても、世話をすることを誰かに任すことはなかった。
コルラードも、限界だったようで、二人を寝かせてフィオレンティーナは側にいた。
(私が育てるべきって、この子のことよね?)
リュシアンとコルラードの手に蔦を伸ばして、ちょんちょんと触っていた。意外に伸縮自在のようだ。
「寝かしてあげましょう。疲れているのを起こしたら、可哀想だもの」
フィオレンティーナの言葉に合わせて、蔦は、ようやく大人しくなった。
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