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しおりを挟む子爵令嬢の長女パニューラは、転生する前の記憶があった。
元は宮廷魔導師で、男性社会の中で唯一の女性となり、最強とまで言われていた。だが、婚約者の王子に浮気された挙げ句、それを金と権力でもみ消され、パニューラの方が浮気していたということにされた。女に負けていることを認めたくない者たちによって、婚約破棄だけでなく宮廷魔導師の地位まで剥奪され、魔法までも封じられて追放処分となった。
(思い返しても、未だに腸が煮えくり返る)
それを転生してから夢でよく見ていた。
転生した時にそれを忘れていたら、よかったのかも知れないが、パニューラは全部を覚えたまま転生してしまった。
そんな、荒んだ心を癒やしたのは、2歳下の妹のディーテの存在だ。
「おねぇたま」
「っ!?」
(私の天使! なんて、可愛いの!)
パニューラに笑顔を見せるディーテにメロメロだった。可愛くて仕方がない妹のおかげで、毎日を幸せに暮らせていた。両親も、周りの人たちも、ディーテの笑顔に癒やされていた。
ディーテのおかげで、よく見ていた夢を最近ではあまり見なくなっていた。
なのに昨晩、久しぶりに嫌な夢を見てしまった。魔法を封じられて、追放処分になったあとの夢だ。男性社会で、頼みの綱の魔法が使えず追放処分となり、犯してもいない罪をなすりつけられた女性が、どんな末路を辿るか。
(あぁ、せっかくのディーテとの買い物なのに気分が最悪だわ。……前は、怒り狂うと雷を落として、周りを怖がらせていたっけ。震え上がっていた奴らが、私の魔力を封じた途端、勝ち誇った顔をして……、今も鮮明に覚えている。あいつらの顔を……)
パニューラは、魔法を封じられたことと転生したことから魔法が今の自分に使えるかを試したことがなかった。魔法が使えなくなったことが、物凄いショックだったことが原因だ。
試して使えなかったら、辛すぎる。それにここは魔法などない世界だ。魔力がないのだと思い込んでいた。
まさか、パニューラの周囲で雷が落ちるようになっていたとは思いもしなかった。転生して魔法が使えるとは、本人も思っていなかった。
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