私より婚約者に詳しい男爵令嬢に同じ物を贈っているのに浮気を認めないまま婚約破棄となりまましたが、彼はその後も認めていません

珠宮さくら

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学園であった修羅場は、すぐに知れ渡ることになった。無理はない。あんなことがあった後だ。広まらない方がおかしい。

だが、あれだけのことがあった後でもフィエロは頑なに浮気相手のことを認めようとしなかった。身に覚えのないことだとして、誰に聞かれても否定することをやめることはなかった。

フィエロの浮気相手の令嬢は、カルロッタ・グラヴィーナという名前の男爵令嬢だとわかった。あまりにも否定し続けるため、フィエロの身内はそれなりにきちんと調べることにした。

カルロッタが嘘をつくためには、オーダーメイドの一点ものをもう一つ作らせなくてはならないが、コネもお金もないことは明らかだった。

それにオーダーメイドで作った人物にも確認した。そこで、一点ものをオーダーされたのではなくて同じものを2つ作ってくれと頼まれたと話したことが、決定的となった。

それを聞いたフィエロは……。


「はぁ!? そんなわけない! 私は、一点ものを頼んだんだ!」


そんなことをオーダーされたと言われても、フィエロは頑ななままだった。


「いい加減にしろ! お前が頼んだことはわかっているんだ」
「父上! そいつが、嘘をついているんです。よく調べてください!」


侯爵家の息子であるフィエロは父親にそう言ったが、父どころか。家族みんながそんな言葉を信じることはなかった。

当たり前だ。どう見ても、フィエロが苦し紛れに言っているようにしか見えないし、聞こえはしなかった。


「あぁ、お前がそう言うと思って、よく調べた。2つとも、同じデザインで同じ職人の作ったものだった。それにお前が、どちらの代金も支払い済みなのもわかっている」
「なっ、そんなの嘘だ!」


フィエロは、詳しく調べてわかったことでも否定することをやめなかった。それに家族は眉を顰めずに入られなかった。


「嘘をついているのは、お前の方よ。学園で、あんなことになって私たちまで色々言われているのよ。さっさと認めて謝罪しなさい」
「してもいないことを謝罪なんてしたありません」


姉の言葉にフィエロは、すぐさまそう言った。まだ
していないとフィエロは言うのをやめなかった。

それを聞いていたフィエロの弟は……。


「オルテンシア嬢に悪いとは思ってもいないんですね」
「だから、私は浮気なんてしていないんだ」


姉と弟どころか。両親も、フィエロの言うことなど欠片も信じていなかった。だって、調べれば調べるほどフィエロがやった証拠しか出てこなかったのだ。

こんなことでは、フィエロの言い分を信じる者が現れるわけがない。


「いい加減に認めなさい。これだけの証拠があるのよ」
「ですから」
「もういい。お前の婚約は破棄する」
「そんな父上!」


フィエロは、破棄する気はないと言い続けた。それに家族は、何とも言えない顔をした。こんなのを聞き続けていたくないとばかりに思った。


「あなた」
「仕方がない。こいつは合意しないんだ。解消はできない」


侯爵は、妻を見てそう言うしかなかった。フィエロ以外の子供たちもいたたまれない顔をしていた。


「……そうですけど」 
「あんまりだわ。オルテンシアが、可哀想すぎる」
「何とかならないんですか?」


フィエロ以外は解消にしてやりたかったが、婚約を解消する気が全くないのを変える気もなければ、説得することもできなかったため、破棄することになった。破棄ならば、フィエロが納得していなくてもできる。

侯爵夫妻もフィエロの姉と弟は、それに納得しきれないものがあろうとも、フィエロと婚約し続けることになるオルテンシアがもっと可哀想だと思ってその方向で動くことにした。

そんなことがあったなんて知らないオルテンシアの家族は、侯爵家から婚約を破棄したいと言われて怒りをあらわにしていた。伯爵家のオルテンシアの両親や妹は、その知らせを聞くなり憤慨してもいた。オルテンシアの兄は、留学中で家にいなかったが、いたら大暴れしていたことだろう。

でも、いなかろうとも、伯爵夫妻も妹も暴れる寸前までになっていた。何なら侯爵家と一戦交えてもいいくらいにはなっていた。


「どうあっても、浮気を認めないつもりのようだ」
「あんな風に浮気していたのがわかったのにこの後に及んで解消ではなくて、破棄したいだなんてあんまりだわ」
「オルテンシアお姉様」
「……」


オルテンシアは、すっかり意気消沈していた。家族が憤慨して怒っているのを他人事のように見ていた。

ここのところ、あんなことがあってから部屋で塞ぎ込んでいて侯爵家からの破棄の知らせに部屋から出て来ていた。それ以外では、学園も休んでいて食事の時しか部屋から出て来なかった。

それでも食事を取ろうとしていたが、あまり食べていないが、それでも家族と取ろうとするのをやめることはなかった。

数日しか経っていなくとも、オルテンシアがやつれているのは一目瞭然だった。そんな姿を毎日見ているのだ。腹が立たないわけがなかった。


「慰謝料を多めに渡してなかったことにしようだなんて見くびられたものだ」


伯爵である父は、侯爵家のやり方に本気で怒っているのは明らかだった。温厚で喧嘩なんてわざわざするような人物ではないのにやる気満々でいた。

それこそ、やる気満々なのはオルテンシアの兄の方が得意とすることだ。ここにいたら、笑顔で殺気立っていたことだろう。

だが、いないというだけでなく、こんな風にされたのだ。息子を頼るなんて、この父はしなかった。慣れていなかろうとも、自分の娘が蔑ろにされたことをそのままにする気はなかった。

そんな父を見ていたオルテンシアが、言葉を紡いだ。


「お父様」
「なんだ?」


ずっと沈黙していたオルテンシアが、久しぶりに父を呼んだことに嬉しそうにした。何を話しかけても心ここにあらずだったのだ。どんなことでも話しかけられて嬉しくないわけがなかった。


「破棄で構いません」
「オルテンシア」
「もう、いいんです」


疲れきった顔の娘を見て妻と末の妹が、そんなオルテンシアに抱きついているのを見ることになった。


「お姉様」
「オルテンシア」


可哀想になんて、母は娘に言えなかった。ただ、もう泣く気力もなくなったオルテンシアを抱きしめてやるしかできなかった。

この家でも、婚約者に一点もののオーダーメイドのアクセサリーをもらったことをオルテンシアは家族に話していた。

それを両親は、にこにこと聞いていて、オルテンシアの妹は羨ましがった。それほどまでに大事にされて思われているのだと思っていたら、そんなことなかったのだ。

オルテンシアが、どれほど喜んでいたかもわかっていた分、フィエロがした仕打ちは酷いなんて言葉では済まされるものではなかった。

だが、オルテンシアがそうしてほしいと言う姿に納得いかずとも、その言う通りにしたのは見ていられなかったからにほかならない。伯爵は、すぐにそのようにした。

侯爵子息は未だに納得いかないようで、オルテンシアに会いたがっていたようだが、そんなことを侯爵家も伯爵家も許すことはなかった。

こうして、オルテンシアたちは婚約破棄することになった。フィエロからの直接の謝罪はないままだったが、会ったところで悪いと思っているどころか。

誤解だと言うだけだと思われていて侯爵家では、フィエロをオルテンシアに会わせないようにするのに必死になっていた。

喜んだのは、男爵令嬢のカルロッタだけだった。


「やったわ! これで、婚約できる」


男爵夫妻は、そんな娘にげんなりした顔をしていた。

それを娘のカルロッタは見ていなかった。


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