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本当に身に覚えのないことだった。
オルテンシアへのプレゼントを奮発したのは確かだ。オーダーメイドにしたが、彼女の誕生日までに間に合わせるのにお金もそれなりにかかったが、侯爵家の跡継ぎとなる私と今後も贔屓にしたいと思ったことも大きかったようだ。
「本来なら、間に合わせるのは難しいのですが、特別にお作りします」
「そうか。助かる」
「ですが、予約いただいている方々もいますから、その分割り増し料金になりますが、よろしいですか?」
「もちろんだ」
特別な贈り物だ。ケチなことはできないと思っていた。
でも、そんなことをしたことを周りにそれとなく話したのも、それだけのことができることを伝えたかっただけだ。
それに周りの子息たちも、オルテンシアから色々聞いた令嬢たちも、私を見る目が違っていたことに優越感を持っていたというのにそれが、ほんのちょっとのことで一変することになるとは思いもしなかった。
何で、こんなことになるのか。私は全く知らないし、身に覚えもない。
どうして、同じものがもう一つあるんだ? オーダーメイドで一点ものを頼んだはずなのに、はじめから2つ頼まれていた事に頭を抱えたくなった。
なぜ、割増し料金分でもう一つ作ったことになっているんだ? そんな説明は受けていない。
他にも、あんな令嬢と話したこともないのになぜ、それを持っているのかがさっぱりわからない。
あの女は男爵令嬢らしいが、そんなものを買う余裕はないせいで、私がオーダーメイドの一点もののはずが、もう一つ作らせてわざわざ渡したかのようになってしまっていた。
しかも、話したこともないのに私のことにやたらと詳しかった。オルテンシアすら知らないようなことまで、事細かくあの女は知っていて、ストーカーではないかと思わずにはいられなかった。
何を言っても私が浮気していたことに変わりはない状況から脱することができなかった。何をしても、何もしなくても、私が浮気していたことが覆ることはなかった。
それでも、私は解消なんてしたくなかった。だって、身に覚えなどないのだ。それをそのままにしたら、受け入れたことになるから益々必死になったが、それが怪しく見えてならなかったようだ。
それこそ、沈黙したら受け入れたことになる。そんなことはできない。必死になればなるほど怪しく見えてならなかったとしても、私は嘘をついてなどいないのだ。誰かしらがわかってくれると思っていた。
そんな中でも、オルテンシアと話をすればわかってもらえると思っていた。それだけのことをこれまでしてきたから、きちんと話せばわかってもらえると信じていた。
オルテンシアのことを思ってそれなりのことをしてきたのだ。あれが、全部浮気を隠すためだとは思っていないはずだ。私は無実なのだ。
これまでオルテンシアにしてきたことに嘘偽りはない。婚約者のことを思ってあれこれして来た。他の子息ではしないことをしてきた。オルテンシアが幸せそうにしているのを見て、牽制もできていた。何気に彼女は人気があった。
だから、彼女を幸せにできるのは、私しかいないかのように特別なものをプレゼントしたのにそれが仇になると誰が思うというのか。
周りに自慢していなかったら、ここまでにはなっていなかったかもしれない。いや、かもしれないではなくて、なっていなかったはずだ。
私にしかできないことだと自慢したのがまずかった。
それだけでなくてオルテンシアも、貰ったものを喜んで令嬢たちに話していたのも仇になった。
それも相まって、両親や姉と弟だけでなく、オルテンシアの妹や学園の他の面々もオルテンシアに会わせまいとしていて会うことができないまま、オルテンシアと婚約破棄をすることになって、あの女と婚約することになった。
「やっと婚約できたわ」
「……」
男爵令嬢は嬉しそうにしていた。怒鳴り散らしている彼女しか知らなかったが、私と婚約できたことをこんなにも喜んでいるのかと思って見ていたが、私がオルテンシアに贈ったものと同じものを腕につけてにこにことしていた。
見れば見るほど同じものがそこにあった。粗悪品と一緒にはできない。確かにオーダーメイドで作られたものと同じものがそこにあった。
それに苛ついてならなかった。私が贈ったものではないが、オルテンシアにだけあげたはずのアクセサリーと同じのを嬉しそうに触るのも見ていて、腹が立って仕方がなかった。
だって、本当に私には何一つ身に覚えがないのだ。なのにオルテンシアと婚約破棄させられて、わけのわからない女と婚約させられたのだ。腹が立たないわけがない。
「おい、お前、いい加減にしろよ」
「まだ、根に持っているの? 婚約破棄できるものならしたいと言っていたのになんで破棄になってまで怒っているのよ」
さも、わけがわからないかのようにしていた。それに腹が立って仕方がなかった。まだ、この茶番を続けるのかと思ってならなかった。
「怒るに決まってるだろ! 私は、お前と話したこともないんだぞ」
私の言葉に目の前の女は、何を言っているんだと言う顔をした。
「そりゃ、いつも手紙だったから当たり前でしょ」
「は? 手紙?」
「会うと色々まずいからって、手紙をくれていたじゃない」
「その手紙を見せろ!」
私の言葉に益々、何を言っているんだと言う顔をして益々苛ついてしまった。この女と話していると頭が痛くなってくる。
「何、言ってるの? 婚約するのに手紙があるとまずいから、燃やせって書いたのは、あなたでしょ」
「だから、私はそんな手紙書いていない。って、燃やしたのか?!」
「そうよ。これだけは愛の証だから持ち続けてくれていいって書いてもくれていたじゃない」
「だから、私じゃない」
私は、そんな手紙を聞いていない。それが証拠になると思っても、男爵令嬢は燃やしたとあっけらかんと言うせいで、頭を抱えたくなった。
何を言っても目の前の女は、私から手紙をもらって口説かれていたと言い続けることをやめなかった。
その上、私のことを私よりよく知っていて気味も悪かった。
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