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しおりを挟む「どうして、殿下が?」
「お前と婚約したかったんだ」
「……私と?」
婚約したかったのにフィエロと婚約したと聞いて、そこから王太子はミケーレとステファニアの仲を利用して、2人を唆してあんなことになるように仕向けたと言うのにオルテンシアは絶句した。
王太子が、こうしたらいいと言うままに2人は自分たちが婚約するためにあんな大掛かりなことをしたのだ。そして、フィエロから跡継ぎの座を奪い、ステファニアが嫁いで来れるようにしたのだ。
両親が、ステファニアを嫁がせるつもりでいたからフィエロが侯爵家の跡継ぎのままでは駄目だったのとオルテンシアの婚約も駄目にしなければならなかったから、2人は愛してやまない人と一緒になりたくてしたのだ。
その裏で、王太子はオルテンシアと婚約するために浮気されていたことで憔悴しているところに優しくして漬け込むという思惑があったことを知ることになった。
「お兄様」
「ん?」
「私、そんな方と婚約するのは嫌です」
「そうだろうな。私も、そんなのと婚約させたくはなくはないから、こっちに呼んだようなものだ
」
オルテンシアは、妹と彼の弟がしたことに腹は立たなかった。2人がそんなに仲だったことに気づけなかったのも大きかった。オルテンシアは、あの婚約にそこまでの熱意はなかった。全く乗り気ではなかったのだ。
フィエロが、オルテンシアのことを見初めて、見栄のために婚約したかっただけにほかならないのだ。子息の多くがオルテンシアと婚約したがっていたのを知って、自慢できる令嬢だと思ったのは、オーダーメイドの一点ものを買ってプレゼントするのだと言いふらしたところから見てもよくわかる。
はめられたとわかっても、やり直したいと思うことはなかった。
むしろ、ステファニアとミケーレがそんなことをして婚約できるのかと心配になってしまった。
「お兄様。ステファニアたちは、婚約できると思いますか?」
「どうだろうな」
オルテンシアは、王太子と婚約する気は全くない。婚約ができないとわかったから、ここまでしたのだ。王太子がどう動くかなんてわかりそうなものだ。
ステファニアたちだけが幸せになるのを許すとも思えない。だからといって、オルテンシアが王太子と婚約なんてしたくはない。
でも、ここまでのことをして自分たちだけ幸せになろうとするとはオルテンシアは思えなかった。少なくともステファニアは、優しい令嬢だ。いくら、相応しくない相手と婚約破棄させただけだとしても、解消ではなくて、破棄となるとは思わなかったのではなかろうか。
そんなことで姉を傷物にしたことを気に病んでいるように見えた。それこそ、オルテンシアが破棄となるとわかってから、ステファニアはオルテンシアに前より気にかけてくれていたが、そんなことをしたからだとは思ってもみなかった。
「ステファニアたちを許せないか?」
「そちらは、むしろ私が気づかなかったことを申し訳なく思います」
「そうか。私もだ」
「お兄様は、いつ知ったのですか?」
「留学してから知った」
「……だから、短期間の留学か、長期になさったんですね」
「すまない。やらせてみなければわからないと思ったんだ」
ステファニアたちは、そこまでしてやった後で、どうなるかまで考えていなかったのは明らかだ。
兄は、知ってしまった時には王太子に言われるままに色々としていたところで、そんなところで止めに入っても中途半端なことになると思ったようだ。
この兄にとって、まだどちらの妹も大事なままなのだとわかってオルテンシアはホッとしていた。
それが、今後も同じままになることを願わずにはいられなかった。
少なくともオルテンシアは、妹を今回のことでは嫌いにはなれなかったし、今後も嫌いになれる自信はなかった。
ステファニアたちに幸せになってほしいと願わずにはいられなかった。
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