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しおりを挟む「ローランド……? いや、私は会ったことないな」
「……」
兄に確認をしたラファエラは、知らないというのに眉を顰めた。
入れ違いになったのは後からだから、知っているかと思ったが、知らなかったのだ。
ピエルルイジは、そんなことを聞くラファエラに不思議そうにした。それにラファエラは、どうしたのだろうと首を傾げた。
(私、おかしなこと聞いたかな?)
「ジョルヴァンナは、ティルデ国に留学したのではないのか?」
「え? いえ、お兄様と同じところのはずですけど」
「ん? そうなのか? 父上たちは、ティルデ国に留学したと言っていたと思ったんだが」
「え?」
「聞き間違えたかな」
「……」
ラファエラは、すぐに確認すると……。
「ジョルヴァンナなら、ティルデ国に行ったぞ」
「え? ローランド様は、お兄様が留学したところから来ていたんですよ」
両親は、ラファエラの言葉に目をパチクリさせた。ピエルルイジも聞き間違えではなかったとわかったが、複雑な顔をした。
「そうなのか?」
「だとしても、何の連絡もないのだもの。ラファエラが勘違いしていたのよ」
「そうだな」
「ラファエラ。やはり、お前の勘違いだ」
「……」
両親も、兄も、どの国に行ったのかがはっきりして、ラファエラにそう言ったのにイラッとしたのは、ラファエラだけだった。
(この人たち、気づいてないのね)
ラファエラは、はっきり言うことにした。
「ティルデ国の公用語が、この世界で一番難しいのをご存じないのですか?」
「あ、」
家族は、ラファエラの言葉がまずいことに気づいた顔をした。そして、顔を見合わせていた。
それこそ、頭の良いピエルルイジですら苦戦する言語だ。それなのにすっかり忘れていたのだから、笑えない。
「いや、だが、あれから、かなり経っていても何の連絡もないんだ。どうにかやっているはずだ」
「そうよ。ジョルヴァンナには、婚約者もいるのですもの。ローランドがよくしているはずよ」
「……その、ローランド様にどこから来たのかを聞いたのですが」
「それは……」
「なら、ステファニアに聞いてみよう。彼女なら、ローランドという子息のことを知っているはずだ」
「既に聞いた方が、そんな子息知らないと即答されたそうです」
「なら、ラファエラが、聞き間違えたんだろ」
「そうよ」
ステファニアがそう言うなら、やはりティルデ国からの留学生だったのだと両親もピエルルイジも言い、ラファエラが確認してくれと言ってもしてくれはしなかった。
それどころか。ステファニアまでも……。
「ラファエラ。お姉さんのことを心配しすぎよ」
「……」
「大体、厄介な人だったのでしょう? 心配するふりなんてすることないわ」
「……ふり?」
「そうよ。気にかけているふりなんて、しなくていいのよ」
「……」
ステファニアのその言葉にラファエラは、気持ちが一気に冷めていくのを感じた。
(この人、私がそう見せていると思っていたのね。……私は、お姉様のこと厄介だと思っても、心配するふりをするほど薄情な姉妹ではなかったわ)
こんなのが、義理の姉になるのかと思うとゾワッとしてしまった。それは、ジョルヴァンナの時には感じたことのないものだった。
その話を次の日に友達にラファエラはした。
「……失礼な方ね」
「本当だわ。いくら何でもあんまりだわ」
「ジョルヴァンナ様のこと、問い合わせてみては?」
「でも、両親も兄も、考えすぎだと言うのよ」
「なら、ティルデ国に従姉がいるので手紙で聞いてみます」
「私は、婚約者がいるから、ジョルヴァンナ様が留学していると思って手紙を書いて聞いてみても、留学しに行っているステファニア様以外、あちらには留学生がいないと返事がありました」
「……やはり、ティルデ国にいるのね」
「なら、従姉にローランド様のことも聞いてみますね」
他にも、ティルデ国に伝手があるからと聞いてくれる者は多かった。
だが、その国の学園にファルダ国からの留学生はいないと誰もが聞いてラファエラは、顔色を悪くした。
しかも、ローランドなんて子息は、ティルデ国にもいなかったのだ。
それを聞いて、ラファエラは両親や兄にその話をしたが、それでも騒ぎすぎだと言っていた。留学が終わる頃になっても戻って来ないのに両親が流石におかしいとと思ったようで、問い合わせてくれたがやはりジョルヴァンナはティルデ国の学園に留学していなかった。
ローランドという子息もいなくなり、ラファエラたちが通う学園でジョルヴァンナがいなくなったとラファエラの両親が問い合わせたところ、先生も驚いていた。
「は? ジョルヴァンナ嬢は、休学しているのでは?」
「「え? 休学??」」
留学しているはずが、書類が受理されていなかった。それどころか、休学届が出されていると聞いて、両親が大慌てになったのは、それからだった。
ピエルルイジも、ジョルヴァンナがいなくなったとわかって探し始めたが、数ヶ月も経っているのもあり、足取りを掴むのは、無理だった。
(お姉様。どこに行ってしまったの)
ラファエラは、姉が心配でたまらなくなっていた。
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