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しおりを挟むステファニアとピエルルイジの婚約が破棄になったのは、すぐだった。
彼女の両親は、ステファニアが色々とやったことに対するコンティーニ伯爵家からの苦情と抗議に平謝りしてばかりいた。
そんなわけないと言って来なかったところを見るとステファニアは、昔からそういうところがあったようだ。
だが、あちらもジョルヴァンナを探すのに手を貸してくれたが、一向に見つかることはなかった。ステファニアが何をしたかを全部真面目に答えていないのではないかと思うほど、ステファニアの言う計画の通りに探しても見つからなかったのだ。
この期に及んで嘘をついているのではないかと彼女の両親は言っていて、そんな娘を嫁がせようとしていたことにラファエラたちの両親は更にあり得ないと憤慨していた。
そんなやり取りがなされているのをぼんやり見ていたラファエラは……。
(良くない噂が本当だったみたいね。こんなことで知ることになるとは思わなかったわ)
ラファエラは、噂なんて当てにならないと思って、ため息をつきたくなっていた。一番謝罪してほしいのは、悪いと欠片も思わないまま勘当されていて、あの調子じゃ、気づかないまま人生を終えそうだと思えてならなかった。
するとピエルルイジが、ぽつりとこんなことを言った。
「……あちらに留学している間、遠巻きに見られている気がしていたんだ」
「遠巻き、ですか?」
兄が何とも言えない顔をして言い始めたことにラファエラは眉を顰めていた。
ここでは、遠巻きにされるのは結構あったが、どこまでなのかとラファエラは思っていたら……。
「あぁ、ジョルヴァンナの兄というだけで、令嬢たちに遠巻きにされていたのと似ていた」
ピエルルイジは遠い目をしていた。格好いい見た目をしていて、頭もいいのに本人のことでなく、ジョルヴァンナのことで遠巻きにされてきたのだ。
あれを見ていて、ラファエラの方が泣きそうになったことは一度や二度ではない。ラファエラの友達も勿体ないとよく言っていたが、婚約したいと言う令嬢は現れなかった。
「……あちらでは、あの人、お姉様みたいだったということですか」
「いや、それより質が悪かったはずだ。断然悪かったのは、あちらだ」
「……」
ピエルルイジは、あんなのとジョルヴァンナを一緒にするなとばかりにしていた。
それを聞いてラファエラは、いたたまれない気持ちになった。
「ごめんなさい」
「なぜ、お前が謝るんだ? むしろ、あんなのに騙されていた自分が恥ずかしい。ラファエラは、ずっとジョルヴァンナのことを心配していたのに。どうかしていた」
両親も、ラファエラがジョルヴァンナを気にかけていたのに無下にし続けたせいだと思っていて、必死に探してくれたが、見つかることはなかった。
ステファニアは、何をしたかを全く理解しないまま、勘当されたようだが、我が家にまともな謝罪が彼女からなされることはなかった。
母はジョルヴァンナが行方不明になってから泣き通しだったし、父は憔悴しきっていた。
ピエルルイジとラファエラも、元気がないままだった。
ジョルヴァンナが行方不明だとわかってから、学園でも少数がざまぁみろと話していたらしい。ラファエラは、それを耳にしたことはないが、そんなことをしている面々は婚約している者は、破棄したいと言われたり、婚約を考えているところから、素気なく断られたりしたようだ。
それも、全部ジョルヴァンナのせいだと言っている連中は、益々孤立することになったようだが、それもラファエラは知らなかった。
(お姉様)
ラファエラは、何だかんだ言っても姉のことが好きだったことに気づくことになり、どこか見知らぬところで元気に姉らしく生きていると思うようになるまで、時間がかかった。
それこそ、留学しに行く時に今生の別れのように姉がしていたことをラファエラは気が動転しすぎてすっかり忘れていた。
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