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しおりを挟む「こうして見ているとジョルヴァンナ様が膠になった方々が多いですね」
「……そうね」
ジョルヴァンナによって、散々な目というか。鍛えられた子息たちは、婚約した令嬢を大事にしていて、ジョルヴァンナと関わりなかった面々と比べても、全然違っていた。
ラファエラは、それを友達がしみじみと言うのを聞いて、幸せそうにする面々を見渡していた。
(お姉様に会いたいな)
そんなことをラファエラは思っていた。姉の名前を耳にするとそんなことを思うようになっていた。
「ラファエラ嬢」
「……王太子殿下」
そんなところに今週何度目かになるかわからない王太子が、ラファエラに話しかけて来た。
突然現れた王太子にラファエラも含めて、カーテシーをした。ぼんやりしていても、その辺は完璧だった。
ジョルヴァンナのことがあってから、しばらくしてラファエラは何度か、王太子に遭遇した。それこそラファエラは偶然だと思っていたが、王太子はそうなるように出没していたようだが、最初の頃は……。
(神出鬼没って、殿下みたいな人を言うのね)
そんなようなことをラファエラは思っていた。天然なつもりはないが、色々と疲れていてずっとそう思っていた。
そのうち、婚約したいとラファエラは王太子に言われた。
「婚約……?」
「そうだ」
いまいちピンと来なかったラファエラに王太子は、丁寧に伝えてやっと自分と婚約したいと言っているとわかっても、そこからずっと保留にしていた。
いや、ずっとというか。最初の頃は断っていたが、そこから王太子に保留扱いを受けていた。
「あの、すみません。今は余裕がないので」
「そうか。なら、保留だな」
「……」
何なら、会うたび断っていたりするが、それを王太子は聞こえないふりしていた。
「あの、婚約のことでしたら」
「……」
全部を言い終わる前に王太子が視界から消えていた。
(婚約しないって言ってるのに。どうしたら、わかってくれるんだか)
ラファエラは、諦めてもらおうと必死になっていたのだが、周りはラファエラに猛烈アピールしている王太子の応援をしている者が多かった。
ラファエラは未だに姉のことで気もそぞらなままだった。
それこそ、姉のことでいっぱいいっぱいだとしても、真剣に婚約者になってほしいと王太子に言われているのにその断り方が、あんまりなことにラファエラを咎めようともしなかった。
それこそ、そんなことをしている間に飽きられたり、冷められたりすることをラファエラが望んでいるのも王太子は気づいていた。
気づいていても、ラファエラの思っている通りに王太子は動くことはなかった。
そんなことを続けていたある日、ピエルルイジがラファエラにこう言った。
「ラファエラ。ジョルヴァンナを口実にして、王太子殿下の気持ちを蔑ろにするな」
「……そんなつもりは」
ない。とは言えなかった。そのため、ラファエラは黙った。
「ラファエラ。ずっと、ジョルヴァンナの側にいたんだ。戻って来た時にそんなんだから、婚約できないんだと馬鹿にされるぞ」
「戻って来たら……、しつこそう」
「しつこいだろうな。私たちは、それぞれ、しつこいからな」
「確かに」
姉のことを思い返して、ラファエラは泣き笑いした。そんな妹を抱き寄せて、兄も泣いていた。
(あれ?)
「どうした?」
「ううん。何でもない」
兄に抱きしめられて、ふとこんなことがあったなとラファエラは思ったが、それがいつのことなのか思い出せなかった。
でも、兄と泣いてスッキリした顔をしたラファエラが学園に行くと……。
「ラファエラ!?」
「あ、王太子殿下」
「どうしたんだ!?」
「へ?」
スッキリしたが泣き腫らした顔をしていたせいで、王太子に誰に泣かされたと追求されて大変だった。
それから、しばらくしてラファエラは王太子とピエルルイジというおおらかな令嬢と婚約をした。
両親は、息子と娘が婚約して喜んでくれていた。
それは、ジョルヴァンナがいた頃には想像できないものだった。他の家族では、当たり前でも、それがコンティーニ伯爵家では普通ではなかったのだ。
(これも、お姉様の一挙手一投足で、こんなに変わるものなのね。どっかの誰かさんとは、大違いだわ)
ラファエラは、そんなことを思わずにはいられなかった。
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