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しおりを挟むそれから、しばらくして、ラファエラのところに手紙が届いた。
「え?」
「ラファエラ? どうした?」
「これ、お姉様からです!」
「「「は?」」」
両親とピエルルイジは、間抜けな顔をしたが、ラファエラの持つ手紙を囲うように集まった。以前なら、そんな馬鹿なことあるかと言っていただろう両親も、まずは自分の目で確認するようになっていた。
「本当だわ。これ、ジョルヴァンナの筆跡よ!」
「確かにそうだな」
「ラファエラ、読んでくれ」
兄に言われて、それを読むことにした。宛名がラファエラだったからだ。
(どうして、私宛てなんだろ?)
それはさておき手紙の内容はラファエラどころか。家族も、使用人たちも、驚くようなものだった。
「駆け落ちしてから、ご心配をおかけしていることと思います。……え? 駆け落ち??」
それは寝耳に水なことだった。
どうやら、ローランドもとい、名前すら偽っていた彼に全部を教えてもらってから、ジョルヴァンナは彼と駆け落ちしていたようだ。
兄の婚約していたステファニアによって、行方不明にさせられるのを知って、本当に恋に落ちた2人はそれに半分乗っかることにしたらしい。
彼は、家族のためにお金が必要で騙そうとしていたらしく、それがステファニアに上手くいかなかったと知られたら、お金を返さなくてはならなくなるため、できなかったようだ。
それなら、上手くいったことにして、姿を消すことにしたとあった。
(お姉様が、駆け落ちしていたなんて……)
だが、ラファエラが王太子とピエルルイジがステファニアではない令嬢と婚約したのを知って、自分の無事を知らせつつ、おめでとうと言いたかったようだ。
「駆け落ちか」
「そう。そんなことをした子息と添い遂げる道を選んだのね」
両親はしみじみとジョルヴァンナが無事で幸せにしているのを文体から見て取って嬉しそうにしていた。
それは、ラファエラとピエルルイジも同じだった。
「……」
「駆け落ちは、考えてなかったな」
「そうですね。……あの子息が、本当にお姉様のことを想っていたのがわかって安堵してます」
ステファニアみたいな子息だったのかと思っていたが、そうではなかったことがわかったのと無事だったことや色んなびっくりが詰まっていて、ラファエラは茫然自失になっていた。
そして、留学しに行くと言って別れた日のことをようやく思い出したのだ。
(あれは、こういうことだったんだわ)
すっかり忘れていた。ジョルヴァンナは、ラファエラならそれでわかってくれると思っていたのかもしれないが、まさかすっかりわすれているとは思っていなかったのだろう。
だが、あの日見ていたはずの両親も綺麗さっぱりわすれているようなので、そのことを誰かに話すことはなかった。
駆け落ちの話をラファエラは、王太子にした。友達にもしたかったが、ジョルヴァンナが選んだ子息の両親が金づるになると思って探しているらしく、見つかったら大変だとあったので、大勢に知られると調べられて見つかるかもしれないからとふせることにした。
「そうか。ジョルヴァンナ嬢は、元気にしていたか」
「はい、物凄く元気で、幸せにしているようです」
「それは、よかったな」
王太子は、ラファエラが嬉しそうにしているだけで笑顔になるような人なのだ。この日、何かあったのか不機嫌そうにしていたが、ラファエラが話したいことがあると言うので付き合ってくれているうちに笑顔になっていた。
(こういう方なのよね)
嬉しそうにしているのにラファエラは……。
「ありがとうございます」
「ん? 何の礼だ?」
「お姉様が、連絡して来たのが、私が殿下と婚約したと聞いたからなんです」
「ふむ。なら、しつこく求婚してよかったということだな」
「それと殿下。婚約したのを広めてくれましたよね?」
「ん? ラファエラにベタ惚れして、やっと手にしたと惚気ただけだが?」
「……」
王太子は、ケロッとそんなことを言った。どこまで本気なのかと考えかけたがやめた。
とりあえず、どこまで本気なのかはわからないが、王太子のやることなすことでラファエラは幸せになっていく一方となり、そのたび姉から手紙が来て喜ぶことになった。
こうして、ラファエラは王太子に頭が上がらないままとなったが、そんなこと微塵も感じさせない王太子によって幸せいっぱいの人生を送ることができたのだった。
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