不思議なものを買い取る店で、私が一番の不思議な存在だったようです。あやかしのご飯担当となったのにその不思議を見逃してばかりいます

珠宮さくら

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「えーっと、野々花さん。あやかしの親族の心当たりは?」


尊流は、時間もないからとりあえず、こう聞くことから始めた。


「ありません。でも、父方の親族には会ったことないです。父は、母の実家に婿入りしたので」


そうは言ったが、そもそも野々花はあやかしうんねんが、どんなものかを知らなかった。

おかしなことだが、学園の普通科にもあやかしは、それなりにいる。なんせ、人間に完全に姿を変えられないのが、獣の耳やら尻尾が出ているのだ。

だが、そういう仮装をしているみたいに解釈していた。

それこそ、両親が生きていた時から、普通に街の中にいた。

でも、それらは見えないように隠されていた。まだ人間全員が知らないことで、驚かせないために見えないようにされていたのだが、野々花はあやかしの血が混じっているため、普通に見えていたようだ。

そのことを両親は知らないし、祖父母も知らない。野々花が、その話を誰にもしたことがないからだ。


「……なら、詮索しない方がいいですね。まぁ、あやかしの血がまじっていながら、極めて貴重な人間があなたです。それこそ、あなたは才能の塊なんですよ。こうして、不思議に好かれるのも、好かれたものに更にもっと幸せになってほしいと思われるのも、才能にほかなりません」


尊流の言葉に野々花は首を傾げていた。理解できるような、難しすぎるような。

野々花は、知恵熱が出そうになっていた。野々花は、そんなに頭は悪くない。でも、この話は野々花には難しすぎたようだ。


「心配するな。特殊科の編入うんねんの面倒な手続きなら、こいつがしてくれる。それにじぃちゃんたちのことが心配なら、家から通えるようにもできる」
「え? 通い??」
「特殊科は、全寮制だ」
「知りませんでした」


黒雨の言葉に全寮制なのかとそちらに驚いている野々花。

それこそ、いつもの野々花なら、そこまでご迷惑は掛けられないと言っているところだが、そちらに考えが及ばなかった。


「黒雨」
「さっきの話、聞いてりゃ、してやるだろ? 祖父母孝行したがってんだぞ?」
「……」


尊流は、険しい顔をしていた。そこで、ハッとした顔をした野々花はした。


「いえ、あの、そこまで甘えるわけには……」
「それに野々花が通えば、不思議に出くわす可能性が高まりそうだと思わないか?」
「っ、!?」


黒雨の言葉に尊流は、またも野々花の手を掴まえた。彼は、不思議が好きなようだ。


「ぜひ、やらせてください。そして、不思議なことを私に教えてください」
「えっと」


熱量が半端なくて野々花は、戸惑ってしまった。


「話すだけでもいいんだぜ」
「お話しだけですか?」


黒雨のフォローに野々花は驚いた。


「こいつの好物が、それなんだ。あやかし、みんなが変わったもん好むわけじゃないが、こいつはそういうのしか食えないんだ」
「……なら、これも食べるんですか?」


とても綺麗な宝石なのに。売るのは確定していたが、食べられるのだとわかると考え直したくなってしまう。


「いえ、見たり触ったりするだけでも満たされます。これは、記念に買い取らせてください。目の前で、あんな風に変化したのを他に売るなんてしたくありません。加工したら、見事なものになるでしょうし」


それで、店が成り立つのかと野々花は思って尊流の話を聞いていた。


「ここは、腹を満たすためのもんだ。野々花がいりゃ、わざわざ開くこともしなくても良さそうだな」


食事処だったとは、思わなかった。良いところのボンボンの道楽とか思ってしまったのを野々花は恥じずにはいられない。心の中で、謝っておいた。

そして、別のことを口にした。


「そんな、私、そんなに不思議なことないですよ」


野々花が、そう言うのを2人は信じてない顔をしていた。なぜだろう。本当にそんなものはないのだが。


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