姉の歪んだ愛情に縛らていた妹は生傷絶えない日々を送っていましたが、それを断ち切ってくれる人に巡り会えて見える景色が様変わりしました

珠宮さくら

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「な、何で、ジャイニまで、修道院に行くんだ!?」
「そうよ。あなたが行くことないわ!」


両親は、ジャイニも修道院に行くと言うのにぎょっとして、必死になって止めた。意気揚々と部屋に戻ろうとするのも、止めた。

シータは、姉の言葉に遠い目をしてしまっていた。もはや、姉はどこにでも着いて来そうだ。それを目の当たりにして、ゾッとしてもいた。


「シータ!!」
「っ、」


父に名前を呼ばれて、その声の大きさに驚いて身体が震えた。姉の態度にぞわぞわしていた。


「お前、ジャイニに何を言ったんだ!!」


父は、怒鳴りながら、シータにおかしなことを聞いて来た。ここにいたのだ。何を言ったのかは聞いていたはずだ。

何なら、シータは両親に同じように自分がまずいことを言ったのかを聞きたかったが、この感じでは言い間違えたわけではなさそうだ。

なのに母までも、シータにこんなことを言った。


「何で、大人しく修道院に行けないのよ! どこまで、迷惑をかけたら気が済むのよ!!」
「……」


シータは両親に怒鳴り散らされ、やっと1人になれると糠喜びをした反動で、もうわけがわからなくなって、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。

迷惑を被っているのは、シータの方だ。ジャイニのやることなすことのせいで、シータが散々な目にあっている。

それを誰もわかってくれない。何なら一生、姉が付きまとってきそうな状況に涙が溢れ出して止まらなくなった。

姉が気持ち悪い。両親も、わけがわからない。もう、こんな家族しかいないのだ。嫌で仕方がない。


「泣くことないわ」
「お姉様……?」
「シータは、ちっとも悪くないわ」
「……」


スッとシータにジャイニはハンカチを渡した。

トンチンカンなことを言う姉に誰のせいで、悲しんでいるのかと言ってやりたくなったが、シータはそれをグッと黙って耐えた。ハンカチも受け取りたくなくて手を出さなかったら、押し付けられた。


「シータは、迷惑なんてかけてないわ。なのに何で、この子にそんなことを言うんですか?」


さも、いい姉というか。この状況を誰よりもわかっているかのようにジャイニは、両親のことを冷めた目で見ながら、そんなことを言った。

この姉は何もわかっていない。呆れた顔をして、シータがジャイニを見ていることにも気づいていない。


「何を言っているのよ」
「そうだぞ。こいつのせいで、お前が迷惑しているんだ。隠すことはない。はっきり言ってやらないとわからないんだ」


両親が、そう言うと使用人たちも、その通りのはずだとばかりに頷いていた。

それを聞いて、シータは迷惑をしているのは、私の方だと叫びたくなるのを堪えていたのだが、それに気づいてくれる人はいなかった。


「は? 私は、全く迷惑していません」


きっぱりと言う姉にシータは、そうでしょうねと思ったが、シータは黙っていた。ここで、シータが何か言えば、フルボッコにされるのは間違いない。


「そんなわけないだろ。王太子の婚約の話を断ってるじゃないか!」
「だから? 私が、婚約したくないだけです」


そう、ジャイニは本気で嫌そうにして見えた。シータには、そうとしか見えないが、玉の輿を断る理由は、シータ関連以外ありえないかのようにしているのは、両親と使用人たちだ。


「シータの世話が忙しいからと断っているんだろ?」
「違います。シータとの時間がなくなるのが嫌なので断ったんです。それに妹を馬鹿にするような方と婚約したいわけがありまそん」


そこまでいくとジャイニが、重度のシスコンだということが、両親にもようやくわかり始めたようだ。

シータは、今更かと思うだけだった。シスコンのようでいて、ジャイニはそうではない。ただ、シータの側に居たいだけだ。

先ほどのことで、シータは別のことを考え始めていた。修道院でもだめなら、他を試すしかなさそうだと考え始めていた。

だが、ジャイニは言いたいことをこの際、はっきり言うことにしたようだ。それを普段からしていたら、変な誤解はされなかったはずだが、この姉は意外に面倒くさがりだったのかも知れないことにシータは、ここで気づいた。

その上、いいように周りが誤解するのだ。そのとばっちりをシータだけが受けていることに気づいたのも、この時だった。


「それと同じく、シータのことを責め立てるあなたたちも同じです。私の大事な妹を怒鳴り散らすあなたたちなんて、いりません」
「「っ、!?」」


両親は、そんなことをジャイニに言われて顔色を真っ青にしていた。

ジャイニにとって、シータが世界の中心だったようだ。それが、両親も周りも知らないことだった。

シータさえいればいいのだ。ジャイニにとって、他はいてもいなくてもいい。そういう存在のようだ。

もっとはっきり言えば、シータのことを悪く言う者など、いなくていい。シータにどこかに行けと言うなら、ジャイニがもれなく着いて行く。それだけのことでしかないかのようにしていた。

だが、シータはそのジャイニが側にいるのが嫌で仕方がなかった。それをジャイニの方が気づいていない。

そう、ジャイニは妹が大好きなようだが、シータは姉が大嫌いなことを知らないのだ。

そもそも、側に何かといるだけなのだ。やりたいことも、シータはそのせいで我慢しなくてはならない。

頭のいいシータは、姉と一緒にいたくなくて、自分にあわない年齢通りの授業を受けていた。

姉がシータの側にくっついて回らなければ、姉と同じ授業を受けても支障はなかったが、一緒にいたら気が変になりそうなのもシータだった。

逆に一緒にいないとジャイニの方が気が変になりそうなことを言うのだ。

シータが色々言われないようにしてくれることを頑張ってくれるでもなく、側に居たいからそうしているだけなのだ。そんなのはた迷惑でしかない。ジャイニの行動にシータは深いため息をつきたくなっていた。

そもそも、王太子の婚約の話をそんなことで断る方がおかしいことにすらジャイニは気づいていない。シータと一緒にいたいって、おかしな理由が通用するはずがないが、そんな無礼がまかり通るのも、ジャイニに王太子がぞっこんだからだろう。

どんなにアプローチしても、シータとの時間を優先するジャイニ。そのせいで、令嬢たちも一緒に出かけたがっているのすら、袖にするのは何時ものことになっていた。

そんなことをしているから、不平不満がシータに降り注いでいることにすら、ジャイニは欠片も気づいていない。

何なら、妹思いの姉の中身が、全く自己中で身勝手なことしかしていないことに本人も周りのほとんどが気づいていないのだ。

シータにとって、最低最悪な姉でしかないことをわかっていないのに両親にそんなことを言えるのだから、何とも恐ろしい姉がいたものだ。

そんな姉にシータは、ずっと振り回され続けることになるなんて、もう考えたくなかった。ほんのちょっとでも、希望を見出した後のせいもあって、我慢の限界をとっくに超えていたシータは、これからどうなるのかをあまり考えたくなくてため息をつきたくて仕方がなかった。

こんな人に振り回され続けるのを耐え続けるのもおかしな気がしていた。


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