義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら

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「え? 2人とも、もう居ないんですか?」
「ん? 知らなかったのか?」
「えぇ、知りませんでした」
「……」


メテリア伯爵家に戻ったサヴァスティンカは、父の話に驚いていた。父は知らせていると思っていたようだ。きょろきょろとした。執事のドイネルは……。


「旦那様。ご自分がするとおっしゃってましたよね?」
「え? そ、そうだったか?」
「私も聞きました」
「……」


執事のみならず、メイド長のソロミアも、間違いなく聞いたと言った。だが、父はそれが思い出せないようだ。


「あー、サヴァスティンカ」
「はい」
「すまん。忘れていた」
「……でしたら、詳しくお聞かせくださいますか?」
「も、もちろんだとも」
「……」


父は、サヴァスティンカが静かに怒っていることを察知した。アウレリューより長く家族でいる分、こういう時のサヴァスティンカが何より怖いと思っているようだが、大事なことを忘れられていたのだ。

未だに義母と義妹がメテリア伯爵家にいるのだと思って、憂鬱な気分になっていたというのに。それすら、することもなかったのだ。まぁ、勝手にサヴァスティンカが一喜一憂していたのだから、そこはどうでもいい。ただ、他所様にずっとあの調子で迷惑をかけているのではないかと思っていたのだ。

それが、何がどうなったのかを気にならないわけがない。


「……留年?」
「あぁ、散々言っていたんだが、子息に気に入られようとして勉強していなかったようだ」
「……」


いや、あの義母がギリギリでもいいから卒業さえできればいいとセザリナに言っていたのだ。その通りにしようとしたにすぎないが、ギリギリを下回ってしまえば意味はなくなる。

父は、そのことを知らなかったようだ。サヴァスティンカは、留年することになったセザリナに遅かれ早かれそうなると思っていたが、ついになったかと思ってしまった。


「あの、追試は?」
「それも、婚約したから、どうにかなると思っていたようだ」
「婚約したことが、どう関係すると?」
「融通が効くと思っていたようだ。私も、よくわからないが」
「……」


父の言葉にサヴァスティンカは、あの義妹ならそういう方向にいくのかも知れないと思ったが、アウレリューはその話を聞いて全くわからない顔をしていた。


「えっと、それで?」
「留年すると知った婚約者が、そこまで馬鹿だとは思わなかったと言い出したんだ」
「……どこまでだと?」
「いや、それが、この家の跡継ぎになるくらいだから、それじゃまずいだろと言ったようだ」
「は? セザリナが、跡継ぎだと義妹が言ったのですか?」
「いや、セザリナが言うより先に、向こうが跡継ぎだと思っていたようだ。そもそも、娘は1人しかいないと思っていたようだ」
「1人?? なら、義母のことは?」
「後妻うんねんも知らなかったようだ」
「……」


そこから、追試しても留年することになり、双方にくい違いが現れることになり、セザリナが跡継ぎでなければ、養子縁組もなされていない再婚相手の連れ子だと知ったラカトゥシュ侯爵家の次男は、すぐさま婚約破棄しようとしたのだが……。


「破棄したとしても、お前にこの家の居場所はないぞ」
「え? な、なんでですか?!」
「散々聞いたはずだ。書類にもなっている。この婚約をするためにどうなっても覚悟の上だったのだろ?」
「っ、だ、騙されたのです!」
「それが通用すると思うか? そもそも、メテリア伯爵家の連れ子の話は有名ではないか。跡継ぎの令嬢は、特待生で才女だ。それを連れ子のように平民と一緒に勉強してもついていけないような令嬢なわけがなかろう」
「平民と一緒?!」
「……そこも知らなかったのか」


父親は、次男のオーレルの反応に呆れ返るしかなかった。それでも、知らぬ存ぜぬを言い訳にして、婚約破棄したいと言うので、それをした。破棄してくれたのだからとラカトゥシュ侯爵家に残ろうとするのを卒業と共に追い出したようだ。

セザリナは留年することになり、その時点でメテリア伯爵家から追い出されることになった。


「ま、待ってください! なぜ、私まで離縁されねばならないのですか?!」
「お前と結婚していたのは、妻の頼みだったからだ。お前のようなのは、どうなってもいいが、娘が路頭に迷っては可哀想だからと面倒みてほしいと言われたから、結婚していたんだ」
「はぁ!? あの女、死んでもなお恥をかかせるのね!」
「恥だと? お前の娘では可哀想だと思ってのことだ。それとお前の実父のためだ。それをお前は、恥だと? 散々お前のせいで恥をかいたのは、私とサヴァスティンカだ」


セザリナは、全く話についてこれず、母親が言っていた通りにしていただけだ。だが、留年することになり、更には婚約破棄されることになっても、跡継ぎは自分だと思い込んだままだった。


「な、何で? 私が、この家の跡継ぎなのでしょう? どうして、お義父様が、私とお母様を追い出すの?」
「跡継ぎ? 前々から、跡継ぎはサヴァスティンカだと言っていたはずだが? それにお前は、連れ子であって、養子縁組もしていない。この家を継げるわけがないだろ」
「え? 養子縁組??」


学園の授業も平民よりもできていないのだ。養子縁組が、どんなものかも知らないようだ。

それに父は何とも言えない目を向けていたことだろう。

アレクサンドリーナは、縋っても駄目だとわかり、実家を頼ったが、あちらからも門前払いをされて、親子でひっそりと庶民として暮らしているようだ。

だが、娘の馬鹿っぷりに手をやいているようだ。勉強なんて最低限でいいから玉の輿に乗れと言っていたのを今になって悔いているようだが、今更娘に勉強しろと言ったところで、通じないようだ。


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