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しおりを挟む使用人や母親が悲鳴をあげて、父親が何事かと駆けつけるとぐったりと倒れているルシアが倒れていて、そんな姿を見てみんなは最悪なことが頭をよぎったようだ。血が流れ始めていたことも大きかった。
「すぐに医者を呼べ!」
「ルシア!」
「寄せ! 今は動かすな」
「でも、頭から血が出ているわ」
「そこを圧迫止血するんだ」
父親が、母親にそんな話をしていた。執事が、医者を呼びに行かせている間、姉の婚約者のバルトロメはというと……。
「……あー、その、間が悪いようなので、私は、これで失礼することにします」
「「は?」」
バルトロメの言葉に両親だけでなくて、使用人たちも信じられない者を見る目を向けた。
その目は、こいつ、何を言ってるんだ?同じ人間なのか?という目を向けていた。
だが、そんなバルトロメのように空気が全く読めないことを言う者が、もう一人いた。
「バルトロメ様。そんな、来たばかりではありませんか」
バレリアは妹が階段から落ちたというのに何もなかったかのようにしていた。落ちて来るところも、ばっちり近くで見ていたはずだが、顔色1つ変えずにいた。それこそ、欠片の心配もしていなかった。ただバルトロメが帰ると聞いて残念がり、帰せまいとして必死になっていた。
だが、バルトロメはここに自慢話をするために来たようなもので、それを聞いてくれないとわかった今、ここに長居する理由が彼にはない。
それよりも、面倒くさいことになる前にさっさと他所に行く方が楽しいだろうと思ってすらいた。
「こんな状況だ。私がいても邪魔だろ? 私は医者でもないしな」
確かに医者ではないだろうが、今のこの状況下でさっさと帰りたがるバルトロメに両親も、使用人たちも眉を顰めずにはいられなかった。
だが、そんな彼を理解したのは婚約者となったバレリアだけだった、
「それなら、出かけましょうよ。私も、医者でもないですから。いても何かできるわけでもないですし」
そんなことを平気で言う二人に両親が激怒したのは、すぐだった。そんな呑気というか。場違いなことを言うのを聞いて、彼ら以外は腹を立てていた。
「元はと言えば、あなたがルシアを部屋まで付き添おうとしたメイドに大した用事でもないのに呼び止めたのがいけないのよ!」
「そんなことないわ。仮病だと思ったのよ。それに大した用事だなんて酷いわ。バルトロメ様にいただいたお土産の紅茶を淹れさせようとしただけじゃない。彼女は、使用人の中でも上手いんだから、頼んで何が悪いのよ。そんな言い方するなんて、お母様こそ、バルトロメ様に失礼だわ。どんなに良いお土産を貰っても、台無しにされたら、幻滅するに決まってるじゃない」
母親の言葉にバレリアは、そんなことを平然と言ったのだ。
まさにその言葉に幻滅しているのは、バレリアとバルトロメ以外だ。
まともなようなことを言っているが、その内容がおかしいことに彼らだけが気づいていなかった。
それを聞いて父親もバレリアを責め立てたが、それを擁護したのは、バルトロメだった。
「仮病だと思ったのなら、仕方がないですよ。それに私の土産を優先するのは当たり前じゃないですか。婚約者なんですから」
「っ、」
そんなことを言う二人に両親は、ここに居るだけで邪魔になると思い、出て行けと言ったのも、すぐだった。
二人は言葉通りに出て行くことにしたようだ。そんな二人になんて構っていられないとばかりにルシアを見た。
「ルシア。しっかりするのよ。母が、ついていますよ」
「私もいるぞ。ルシア、頑張れ!」
ぐったりするルシアの手を母は握り続け、父も必死に声をかけ続けた。
他の使用人たちも、必死になってルシア様と呼んでいたが、その声でルシアが目を覚ますことはなかった。
バレリアたちは、何事もなかったように本当に普通に侯爵家を出た。それを見ていた者はありえないとばかりにするばかりだった。
いくら何でも実の妹が階段から落ちるのを目の当たりにしておいて、平然とでかけられる神経を持つバレリアを理解できる者は一人もいなかった。
それにバルトロメもだ。でかけたがるバレリアを止めるでもなく、一緒になって普通に出かけたのだから、ありえないことだらけでしかなかった。
片方だけでも厄介すぎるのに。そんな二人が婚約したのだ。もはや、同じ考え方をする人物が婚約者となったことで、更に厄介さに磨きがかかることになるとは誰も思うまい。
こんな相乗効果を期待したわけではやかったが、明らかに悪い方にまっしぐらなことは間違いないだろう。
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