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しおりを挟む「それで、浮気うんねんとやらも、テレーズ嬢の妹が言い出したのか?」
「そ、そうです!」
「そうか」
王太子の言葉にシクストは、明らかにホッとした顔をしていた。
その代わりのようにテレーズの顔色が一気に悪くなった。
(なんてことをしてくれたのよ)
テレーズは、すぐさま謝罪しようとしたが、王太子は話を戻した方が早かった。
「だとしても、先程の私が、彼女を慰めていただけでなくて、彼女でなくともいいと言っていたのは、お前の言葉ではないのか? 私を不実者のように言っていたのは、しっかり聞こえたぞ。いくら、彼女の妹が勘違いしていたとは言え、お前まで勘違いしていたとしても、あれは聞き捨てならない」
「いえ、その、そんなつもりでは……」
「なら、どういうつもりで言ったんだ?」
「っ、」
王太子は、見た目からしてもモテないことはないのだが、女性とそんな風に気を引くだけ引いて捨てるようなことをしたことはない……はずだ。噂にならないはずがない。
むしろ、女っ気がなさすぎるくらいで、怪しんでいる者もちらほらいる。それでも、そろそろ婚約者を選ぶのではないかと思っていて女性の多くが、そわそわしていた。その中にテレーズはいない。
「それとテレーズ嬢が、浮気をするような令嬢のように言ったのも聞いていて不愉快だ。何より具合の悪かった彼女を世話していただけで、どうしてそんなことを言われるのかがわからないな。そもそも、私にも、彼女にも婚約者はいないんだ。問題はないだろ」
「……あの、どういう意味ですか?」
「浮気でなくて、普通に付き合っていると思えばいいだけだろ」
「「「「「「っ!?」」」」」」
(何を言い出すのよ!?)
聞いていた令嬢たちが、一斉に射殺さんばかりにテレーズを睨んだ。
「っ、」
それにテレーズは身を竦めずにはいられなかった。女の嫉妬や妬み、嫉みを一身に受けることになって、身の危険すら感じた。
「君の妹は困ったものだな。姉を私に取られると思って、こんな風に元婚約者に言うとはな」
「っ!?」
テレーズは、そこでハッ!とした。王太子は、エリーズがテレーズと王太子が浮気しているなんて、恐れ多いことを口にしたのだ。
それを姉に対しての嫉妬として、おさめようとしてくれているのだとテレーズは思った。そうすれば、我が家には咎めがいかない。
(両親にも、お兄様にも迷惑かけられないもの。これが最善よね)
「申し訳ありません。王太子殿下」
「いや、いいんだ。君の妹のことは可愛いものだ。だが、この男のことは、どうにも許せそうもない」
「っ、」
シクストは、顔を悪くさせて震えていた。王太子に言われて、やっとテレーズに謝罪して、王太子にも謝罪したが、可哀想なくらい顔色は悪かったが、もうテレーズと婚約したいと騒ぐことはないだろ。
(問題は、この後よね)
エリーズは、ともかく、王太子がテレーズを庇うために口にした付き合っているをどうしたものかとテレーズは思っても、王太子ははじめからテレーズのことを逃す気なんてなかったことを知りもしなかった。
そして、テレーズがもし逃げたいと本気で思ったら、味方してくれる人が側にいることをテレーズは知りもしなかった。
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